第二話 裕也の来訪

文字数 883文字

「お父さん、最近どう? ちゃんと食べてるの、散歩とかしてる? ミイは元気?」

 娘からの電話。以前はぜんぜん連絡をよこさない娘であったが、妻の葬儀以来一人になった父親がさすがに心配らしく、一週間に一度は電話してくるようになった。
 
「ん、まあ普通だよ」

 あれから半年経つ。私はとりあえず生きてはいる。少なくとも身体的には。

「ん、じゃあ良かった。こんど裕也がね、そっちの大学のオープンキャンパス、わかる? 学校見学会ね、それに行きたいって言ってるのよ。うんそう、まだ高1なんだけど、最近は早くから見ておいた方がいいって言われてるの。うんそう。時代の違いなんじゃないの。だから泊めてやってね。よろしく」

 そんなわけで、孫の裕也が一人で泊まりにくる事になった。それは私としても大歓迎だ。娘は一人っ子で、その息子の裕也もまたきょうだいがいない。だから私にとっては、たった一人のかわいい孫なのだ。小学生のころは毎年夏休みになると家に来ていたが、中学生に上がる頃から塾だの部活だのが忙しいとの事で、めったに来なくなってしまった。
 半年前に葬儀で会った時も久し振りで、背丈がすでに170センチを超えている裕也を目の前にして、その成長ぶりに面食らった。しかし笑った顔には、幼少時のかわいらしい面影が色濃く残っており、私は少し安心した。

「おじいちゃん、来たよ」

「おう、上がれ上がれ。遠いとこよく来たな、疲れただろう」

「平気だよ、俺若いし。あ、ライン来た」

 着くなり、さっそくスマホを何やらいじっている。妻はスマホを自由に使いこなしていたようだったが、私はさっぱり。ただ、外出の多かった妻との連絡用としてスマホは一応持たされており、文章を打つことだけはできた。

「おじいちゃん、毎日何してんの?」

「ん? 別に何も。テレビ観たり、本読んだり」

「えー、それじゃボケるって、もっと人と交流しなきゃ。ネットとかやんないの? SNSとか。大丈夫大丈夫、簡単だって。えーっとじゃあフェイスブックは? あれなら年いってる人も結構やってるみたいだし。おじいちゃんのスマホあったよね、貸して、俺設定するからさ」

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