一文小説集「林檎/ラジオ/メモ/海苔/パンフレット」

文字数 283文字

 夜中、女が一人、体重計に載せた籠の中に、林檎を一つずつ入れて、死んだ子の体重を思い出そうとしている。

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 その農夫が腰に下げているラジオからいつも、落語や漫才が流れているのは、笑った芋を踏み潰すためだ。

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 電車で目の前の席に座っている釣り人らしき男の足元のクーラーボックスから髪の毛のようなものがはみ出ていて、その男の右手の甲に、油性マジックで「シャンプー」とメモされている。

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 暗い顔をした寿司屋の若い職人が、早朝、電柱に海苔を巻いて歩いている。

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 病院の待合室に置かれている、不死の薬に関するパンフレットが、何か鋭利な物でズタズタに裂かれている。
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