第21話 職さがし

文字数 829文字

「タウンワーク」の裏表紙に「就職説明会開催」、「ひとがら採用コーナーあり」。
 人柄採用? 自分は人柄に自信がある、というような人が行くのだろうか。私だったら、そんな人間、あまり採用したくない…
「ぎっくり腰にさようなら」「人間関係で悩んでいる人へ」という見出しの、介護施設の求人もあった。
 日給1万何千円かで、しかし勤務時間の書かれていない施設の求人もある…

 知り合いがやっているバイトで、「治験」というのがある。まだ未販売の薬の、効果や安全を確認する目的で行われる、いわば人体実験のような仕事。毎日、家で薬を飲むだけで、給料が払われる。資格としては、何らかの病んだ身体でなければならないだろう。
 やってみたいと思うけど、なかなかこのバイト募集はお目に掛からない。それに、ちょっと勇気も要る…

 そもそも、私のやりたいことは何なのだろうか。
 皆(皆?)当然そうに、さもしかつめらしく、「働かないで、どうやって生きていくのだい?」と言う。私はそのような紳士に「どうしてそんなに生きたいんですか」「生きなきゃいけないんですか?」と反問したい。
 しかしお金がないと困る。
 すると、やはり働かねばならない。

「働かなければ生きていけない」というのは、それまでそうやって生きてきた人たちの、それを絶対としたい願望から漏れ出す、甘い殺し文句のようなものだ。
 ~しなければ、と条件づけられなければ、成り立たない生。そんな生など、あり得ない。義務や権利やら、そんなもの無くたって、生は、ある。

 そういえば、今日は家人の誕生日である。「何もしなくていいからね」と念を押されているが…きっと何かする。いや、しないかもしれない。いや、何かせざるを得ないだろう。
 私は私の中の「~せざるを得ない」によって動いてきた(動かされてきた)。生きてきた(生かされてきた)。
 この、なさそうでありそうな、私の自然のごときものによって、これからも(これからがあるとして)生きていくことには変わらない。
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