#3.5 光る風
文字数 1,587文字
丘陵の丘、そこの、綿毛のなくなったタンポポの間を、下を向きながら何かを探して歩くマチコです。その上空ではケイコが上昇気流に乗って、「ウッハー」と叫んでは舞い上がり、「およよぉ」と言っては落ち、落ちてはまたウッハーと、それを繰り返して遊んでいました。
「フン、フン」と鼻歌交じりでタンポポを掻き分け、時折「無いわねぇぇぇ」と呟くマチコです。そのマチコが探しているのは例のビーズ玉、空からばら撒いた小さなビーズ玉なのですが、探しているマチコ自身は見つかるとは思ってはいません。それでも、散歩をしている次いでだからと自分に言い聞かせています。
「いい気なものね。今までどこに行ってたのかしらね、もう」
空を見上げながら愚痴るマチコです。それをケイコに尋ねても、家でふて寝してたと言うだけでした。でも、真面目に探しているわけではないので、そろそろ止めようかなと思った矢先、何やら光るものが。例によってそれに吸い寄せられるように手を伸ばしたマチコです。
手に取ったそれは、光る? さあ、なんでしょう。石? それとも。とにかくそれは光る小さな石のようですが、ガラスの破片か何かでしょう。それを空に向けて翳してみるマチコです。
その光は天を突き、空で遊んでいるケイコのハートを貫きました。もちろん、それに幻惑されたケイコがマチコの元に落ちて来ました、ドヒャン。
「ねえねえ、なにそれ、ねえねえ」と目を輝かせて見入るケイコです。
「これ? これねえ、これよ」と言いながらそれをケイコに渡すマチコです。
「ん? なに?」
「あんたにアゲルわよ。こないだのこともあるし。これで……勘弁しなさいよね」
「うわぁ、綺麗、光ってるよ。で、こないだって、なんだっけ」
「ええぇ? あんたのアレ、落として無くしちゃったでしょう? あれよあれ」
「あれ?」
そう言うとケイコは自分のバッグからビーズ玉を取り出すと、それをマチコに見せるのでした。そして、「ほら、あるよ」と。それに「なんでおよぉぉぉ」のマチコです。
「へへ、おばあちゃんに拾ってもらったの。どう、すごいでしょう」
「すごいって、なんでぇ、そんなことになってんのよぉ。あんたって子はぁ」
「エヘン」
「エヘンじゃないわよ、まったくもぉ。あんたはね、もう少しでね……まあ、いいわ。今度は落とさないように、ちゃんと仕舞っておきなさいよね」
言い終わったマチコは、おばさんから貰った『おはじき』のことを思い出し、一つをケイコに見せるのでした。そうしたらもう、ケイコの目の輝きが半端ではありません、ピカピカビーム炸裂です。
「なに! なになに! なんなのよそれええええええ!」
「欲しい? 欲しいよね。そっかぁ、う〜ん、どうしようかなぁぁぁ」
「いらない。それ、マチコのものでしょう、いい、いらない」
やせ我慢のケイコです。体をプルプル震わせながら、なんでも欲しがる訳じゃない、我慢のできる子、それがケイコです。ええ?
そんなケイコを見かねたマチコは、もう一つ『おはじき』を取り出して見せると、
「大丈夫、あげるわよ。ほら、私の分もあるから」と言うと、サクッと受け取るケイコです。そして、
「私のものを預かっていただけなんだ、意地悪マチコ」と言いながら、早速、太陽に向けて、その不思議な輝きを全身で浴びるのでした。そして当然のように目が眩み、おはじきを落としそうになる、いえ、落としたケイコです。それをサッと受け止めたマチコは、
「ちゃんと無くさないように仕舞っておきなさいよぉ、まったくぅ」とケイコに渡してあげるのでした。
「へへ、ありがとう。ねえ、一緒に行こうよ」
「はあ? まあ、いいかもね」
丘を駆け昇る風が気持ち良いほどに吹き上げると、ケイコとマチコはその風に乗り、高く、高く空に舞い上がって行くのでした。
「フン、フン」と鼻歌交じりでタンポポを掻き分け、時折「無いわねぇぇぇ」と呟くマチコです。そのマチコが探しているのは例のビーズ玉、空からばら撒いた小さなビーズ玉なのですが、探しているマチコ自身は見つかるとは思ってはいません。それでも、散歩をしている次いでだからと自分に言い聞かせています。
「いい気なものね。今までどこに行ってたのかしらね、もう」
空を見上げながら愚痴るマチコです。それをケイコに尋ねても、家でふて寝してたと言うだけでした。でも、真面目に探しているわけではないので、そろそろ止めようかなと思った矢先、何やら光るものが。例によってそれに吸い寄せられるように手を伸ばしたマチコです。
手に取ったそれは、光る? さあ、なんでしょう。石? それとも。とにかくそれは光る小さな石のようですが、ガラスの破片か何かでしょう。それを空に向けて翳してみるマチコです。
その光は天を突き、空で遊んでいるケイコのハートを貫きました。もちろん、それに幻惑されたケイコがマチコの元に落ちて来ました、ドヒャン。
「ねえねえ、なにそれ、ねえねえ」と目を輝かせて見入るケイコです。
「これ? これねえ、これよ」と言いながらそれをケイコに渡すマチコです。
「ん? なに?」
「あんたにアゲルわよ。こないだのこともあるし。これで……勘弁しなさいよね」
「うわぁ、綺麗、光ってるよ。で、こないだって、なんだっけ」
「ええぇ? あんたのアレ、落として無くしちゃったでしょう? あれよあれ」
「あれ?」
そう言うとケイコは自分のバッグからビーズ玉を取り出すと、それをマチコに見せるのでした。そして、「ほら、あるよ」と。それに「なんでおよぉぉぉ」のマチコです。
「へへ、おばあちゃんに拾ってもらったの。どう、すごいでしょう」
「すごいって、なんでぇ、そんなことになってんのよぉ。あんたって子はぁ」
「エヘン」
「エヘンじゃないわよ、まったくもぉ。あんたはね、もう少しでね……まあ、いいわ。今度は落とさないように、ちゃんと仕舞っておきなさいよね」
言い終わったマチコは、おばさんから貰った『おはじき』のことを思い出し、一つをケイコに見せるのでした。そうしたらもう、ケイコの目の輝きが半端ではありません、ピカピカビーム炸裂です。
「なに! なになに! なんなのよそれええええええ!」
「欲しい? 欲しいよね。そっかぁ、う〜ん、どうしようかなぁぁぁ」
「いらない。それ、マチコのものでしょう、いい、いらない」
やせ我慢のケイコです。体をプルプル震わせながら、なんでも欲しがる訳じゃない、我慢のできる子、それがケイコです。ええ?
そんなケイコを見かねたマチコは、もう一つ『おはじき』を取り出して見せると、
「大丈夫、あげるわよ。ほら、私の分もあるから」と言うと、サクッと受け取るケイコです。そして、
「私のものを預かっていただけなんだ、意地悪マチコ」と言いながら、早速、太陽に向けて、その不思議な輝きを全身で浴びるのでした。そして当然のように目が眩み、おはじきを落としそうになる、いえ、落としたケイコです。それをサッと受け止めたマチコは、
「ちゃんと無くさないように仕舞っておきなさいよぉ、まったくぅ」とケイコに渡してあげるのでした。
「へへ、ありがとう。ねえ、一緒に行こうよ」
「はあ? まあ、いいかもね」
丘を駆け昇る風が気持ち良いほどに吹き上げると、ケイコとマチコはその風に乗り、高く、高く空に舞い上がって行くのでした。