台湾カステラ

文字数 702文字

「ばかだな、メイくん」と、作者(ちち)は言った。
 ともに名前が「ケイ」のため、彼だけが私のことをメイと呼ぶ。「紛らわしいから」というのが主な理由だが、実際のところ彼は私の名前をメイ・ケイフィールドと間違って覚えているらしいから「ばかなのはどっちだ」と、言ってやりたくもなる……名付け親のくせに。

「何がばかなんだ」

 ともあれ私は言い返した。
 ちなみに悠吾(ゆうご)は「これ以上は飛行機が間に合わない!」と、数時間前にそそくさと逃げてしまっていた。作者(ちち)に会いたくない気持ちは誰だって同じなのだが、「次来たときは覚えているがいい、私の恨みは深いからな!」と、叫んだ私の捨て台詞を彼は聞いていたのかどうか。

 作者(ちち)は台湾カステラの最後の一切れを摘まみながら言った。「プレーンじゃなくてチーズだよ。台湾カステラはチーズなんだよ。甘味と酸味のバランスが絶妙にいいんだ、あれ」

「……もりもり食べておいて言うのがそれなの?  いや、次は善処するけど」

「どうせこれだって君が買ったわけではないんだろうが」

「…………」そうだけど。

「その顔だと、徹矢(てつや)か」

 ご名答。
「駅ナカの催事コーナーで売っていたらしい」
 基本的に菓子類は通販で買い求めるのだが、稀に徹矢が気を利かす。もちろん、真奈(まな)への土産のついでだということはわかっている。

「あいつが電車に乗っている光景は想像がつかんのだがなあ」と、作者(ちち)は笑った。

 確かに。

「それで? そろそろ本題入らない?」
「おお、そうだったそうだった」と、作者(ちち)は手を叩いた。「ぼくはねえ、かねがねノベルデイズの仕様はけしからんと思っていてだねえ」

「…………んん?」

 なんだこれ? 聞いてた話と違うのか? どういうことだ?
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登場人物紹介

キツネ

 「神様の森」から逃げてきたひとりぼっちのキツネ。人の言葉を話し、化けることができる。

 ユウゴくんの話を聞いて、再び「神様の森」に戻ることを決意するが・・・。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

ユウゴ

 「神様の森」に近い里山に暮らす小学生。

 おばあさんとふたり暮らし。

 いつもひとりぼっちでいるのだけど、どうやらそれには理由がある様子。


(登場作品)

不思議の森の願い池

おかしな神社の不思議な巫女たち

アオモズ

 「神様の森」で暮らす、青色のモズ。

 七色の美声を持ち、歌うこと、からかうことが好き。

 人間の「言葉」を話すことができる。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

アカリス

 「神様の森」で暮らす、赤毛のリス。

 悪戯が好き。でもたまに、その悪戯が過ぎるあまり・・・。

 人間の「言葉」を話すことができる。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

シロヘビ

 「神様の森」で暮らす、巨大な白蛇。

 怠け者だが、森で一番の知恵者。

 人間の「言葉」を話すことができる。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

キグマ

 「神様の森」で暮らす、黄色い毛並みの熊。

 体の大きさとは反対の小心者。水が怖い。

 人間の「言葉」を話すことができる。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

「言葉」の目覚め

クロダヌキ

 「神様の森」で暮らす、真っ黒なクロダヌキ。

 口は悪いが、悪いやつじゃない。森の仲間のリーダー的存在。

 人間の「言葉」を話すことができる。


(登場作品)

不思議の森の願い池

眠りの冬の雪時間

「言葉」の目覚め

おばあさん

 ユウゴくんのおばあさん。

 どうやら、「神様の森」のことを色々と知っているらしい。


(登場作品)

不思議の森の願い池

キジカ

 「神様の森」で暮らす、黄金の毛並みを持つシカ。クロダヌキの前に森のリーダー格を務めていた。


(登場作品)

「言葉」の目覚め

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