吉村くんの作戦

文字数 2,067文字

(顔に出てないかな……嬉しいけれど、恥ずかしいわ。たたでさえ……恥ずかしいのに)
言い返さず、黙ったままVIPカードを受け取ってレジに通す。

そして、カゴに積まれた大量の商品に目をやる。
今日……買い物が多くない?
ヘヘッ、今までで一番沢山でしょ。まとめ買い作戦だよ……紗美菜さん、しぶといからな。今日こそはっ……てね!
(こんなに沢山レジを通さなければならないなんて、私……耐えきれるかしら)
(でも、駄目……弱気になっては。キリコちゃんの為にも、今日もしのがないと)
少し、お客が途切れる時間帯。

きっとキリコちゃん、自分のレジからこっちを見つめてむくれてるに違いない。
(吉村くん……本当に、あっちのレジでお会計してあげればいいのに……)
と、思っていたらキリコちゃんのほうにもお客がやってきた。

吉村くんと同様、買い物カゴをいっぱいにした……そしてやはり常連客の佐和田さんだ。
キリコちゃん、今日も可愛いな~! お会計たのむわ!
い、いらっしゃいませ……!
中年の佐和田さんはまだ定年退職という歳には見えないけれど、いつも私服で、しかもこういう半端な時間にお買い物に来る。自由業か何かなのだろう。
キリコちゃん、カード、カード! ほい、これでよろしく~♪
はっ、はい……かしこまりました……。
VIPカードを受け取ったキリコちゃんは、少しだけ躊躇いを見せたけれども、レジを打ち始めた。
即席袋めん2点……ふりかけ・お茶漬け1点……
商品をバーコードリーダーに通しながら読み上げるキリコちゃんの声。

できるだけ平静を装っている。でも、少しだけ震えている。
缶詰4点……おせんべい2点……水産珍味2点……カップ日本酒3点……せ、洗髪剤1点……
……♪
キリコちゃんは目を伏せて、できるだけ表情を読み取られないようにしているけれど、そんな仕草すら楽しむかのようにして、佐和田さんはレジの前でじっと見守っている。
ね。紗美菜さん早く……他のお客が来ちゃうよ。
俺はいいけど……。
あ……は、はい。ごめんなさい……。
キリコちゃんへの遠慮が理由でためらった私。

それは、キリコちゃんのためらいとは別の理由だ。
(でも、耐えなくちゃいけないのは同じ……)
それでは、失礼します。食パン2点……レギュラーコーヒー1点……
ヴヴヴ……

レジを通し始めると、下着に取りつけられたローターが作動を始めた。
ガム3点……うぅっ……プ、プレミアムアイス1点……
このスーパーの男性客比率が……そしてリピート率が高いのは、VIPカードが使われた時にだけ送られる信号で起動するこの仕組みの……私たち女性従業員の肉体を責めることができるサービスのおかげだった。
(ブラの中……暴れ出してる。右も左も……乳首……こ、こすれる……!)
そしてショーツの中のローターは、私の肉体の中で一番いやらしくて敏感な部分、クリトリスに密着して……
(着替えの時の店長の身だしなみチェック……今日は念入りだったから……凄く……密着して……!)
ピッ……ピッ……ピッ……

バーコードを通すその瞬間、ローターは一段と強く、跳ねるように震え、否が応にも私の性感を刺激する。
(きっと、もう……トロトロになってる。熱いお汁が溢れてる……)
この仕事を始めてからすっかり濡れやすい体質になってしまった。
くうっ……ん!
胸のローターが跳ねる度に、ブルブルッ、ブルブルッと乳房全体にまで震動は伝わって、白昼、他のお客さんたちもいる中でこんなことをしているということを強烈に意識させられる。

すると、いっそう淫らな気分となって、それが私をますます濡らすのだ。
(でも、耐えなきゃ……。私がここで気持ち良くなり過ぎたら……吉村くんのことが好きなキリコちゃんが悲しんでしまう)
キリコちゃんの気持ちを考えて我慢しようとする。

しかし、はしたない悦びの声が漏れ始めるのに時間はかからなかった。
れ、冷凍総菜……んっ、クッ……に、2点……口中……せ、清涼……剤1点……だっ、男性用化粧品……2点……ああ、うっ……く、くふぅんっ……フック類……よ、4点……ア、アアンッ!
買い物の合計金額が多くなるほどバイブレーションが強くなるようになっているローターは、つまり買えば買っただけ、私たち女性従業員を悶えさせることができる。

だから、このお店の売り上げは男性客の合計売り上げが女性客のものを遥かに凌駕する。人数比率は圧倒的に女性の方が多いにもかかわらず、だ。
はあんっ……レジャー食事用品3点……アアッ……イイッ……調理用マーガリン1点……パッ……パルメザンチーズッ……いっ……1点っ! あ、ああっ……だ、駄目っ……!
5千円を超えた時点からの震動は、はっきり言って私をいつイカせてしまってもおかしくないくらい強烈で、甘い誘惑に満ちていた。
(駄目……表情、隠せ……なっ……い……)
レジの手を止めてカウンターにしがみつき、私の脚の付け根を襲うこの激烈な細動に身を委ねてしまいたい衝動に必死で抗う。

でも、抗おうとすればするほど、快感はよけいにくっきりと感じ取れてしまう。
ふふふっ、頑張ってね……紗美菜さん♪
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

紗美菜(さみな)さん

スーパーのレジ打ちのパートタイマー。

花園キリコ(はなぞのきりこ)

専門学校生のアルバイト。

齋藤(さいとう)くん

店長に言われ、女性従業員が多い中、レジ係にされた男の子。童顔だけど大学生。

吉村(よしむら)くん

近所の大学に通うスーパーの常連客。イケメン。

お姉さん

スーパーの常連。長い黒髪の美しい女性客。

佐和田(さわだ)さん

いつも半端な時間に買い物に来るお客さん。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色