冒険者、見に行く

文字数 1,034文字

 翌日、不動産屋の前でルイズと待ち合わせして馬車に乗り込みファズリー国領へと向かった。
 王都から休憩もしつつ半日をかけて到着した。
「どうだ? 写真に偽りは無かっただろう?」
「実際に見てみると違うな……、写真以上だ。」
 正に大自然に囲まれている。
 森の中にいきなり広大な土地が広がっていた。
 家の跡がポツンポツンとあり、奥には大きな屋敷がある。
「あれが、城主の屋敷か。」
「そう、お城もあったんだけど取り壊してあの屋敷を作ったらしい。城壁は残っているだろう?」
 確かに屋敷を囲むように立派な壁がある。
 俺達は屋敷へと近づいていく。
 屋敷の前にはデカい鉄の門がある。
 ルイズは持っていた鍵で門を開けた。
 ギギギという音と共に門が開け俺達は入って行った。
「立派な庭があったんだなぁ。」
「あぁ、主がいなくなってからは荒れ放題になっているけどな。」
 頭の中で(ここは農場が出来るなぁ)と思いつつ、俺は屋敷の中に入って行った。
「ほぅ……、また立派だなぁ。」
 中は明かりがついていなくて薄暗いが広い、まぁ当たり前か。
「部屋は客間やら全部合わせて10部屋、勿論浴室トイレ完備、自分の好きな様にカスタマイズできる。」
「部屋は多すぎだが、将来の事を考えると……、それでも多すぎか。」
「改築するなら業者を紹介するぞ。」
 いや、まじでコレ優良物件なんじゃないか?
 脳内でまだ見ぬ家族と笑顔で生活している姿が想像できる。
 これは『買い』だな。
「どうだ? 気に入ったなら此処に契約書があるからサインすれば今日から此処はお前の物だ。」
「現地まで断る理由は無いだろ? お前だってそう思って連れて来たんじゃないのか?」
「ご名答♪ お前だったら気に入ると思っていたからな。」
「ただ一つだけ気になる事があるんだが……、国民がいなくても国として成立するのか?」
「一人でもいれば国として成立する。最初から独立してる訳だし変な気を起こさなければ大丈夫だと思うぞ。」
 そりゃそうだ。俺は平穏無事に生活するのが目標だからな。
「よし、決めた。この国を買おう。」
「それじゃあ、此処にサインしてくれ。」
 ちゃんと、契約書を読んで怪しい所が無いかチェックしてからサインをする。
「それと代金の星金貨一枚だ。」
「はい、ちゃんと受け取った。細かい手続きはうちでやらせてもらう、困った事があったらいつでも頼んでくれ。」
 こうして、俺は家どころか国を買い取った。 
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