第04話(2)

文字数 750文字

 それは昼時だった。
 ミーアは急いで買い物から帰ってきた。ある噂を聞いたのだ。
「ねえ、ラルフ、レオン。嫌なお知らせがあるわ」
 自分の息子であるラルフと、その息子と遊ぶためにやって来たレオンは慌てて帰ってきたミーアに驚く。
「実は、ジュリアがツツジの里で拷問を受けているって話よ」
「は、ジュリアがか? なんで、ジュリアが……あいつ、危ない話に乗っかりでもしたか?」
 ジュリアに少し好意を抱いていたレオンは、ショックを隠しきれない様子だった。
「実は、母さん。俺も、言わなきゃならない事があるんだ」
「ラルフ、どうしたの? そんなに改まって……」
 ミーアは、そう言い息子を見据えた。すると、ラルフは重い口を開いた。
「シュヴァルツ王国騎士団から招集礼状が来た。俺は戦場に行かなきゃならない」
「はああああ? お前、ケーキ屋になるつもりじゃなかったのかよ!」
「どうやらケーキ屋にはなれないみたいだ。ツツジの里を襲撃するとの、元帥閣下の命だ」
「ラルフ……、そんな、やっとずっと一緒に暮らせると思ったのに……」
 まさか、こんなに早く、シュヴァルツ王国復興の狼煙が上がるとは。
 しかも、ツツジの里は元シュヴァルツ王国の領地だったではないか。今は、何やらノールオリゾン側に付いているが。
「セシル騎士団長には良くして貰った身だ。裏切ることは出来ない」
「ラルフ、分かったわ。それが貴方の選ぶ道なら私は応援するわ」
 ミーアはそう言いながらも、自分の偽りの言葉に吐き気がしてしまいそうだった。
 本音を言えば、大事な一人息子を戦場に行かせたくない。養子のノエルはノールオリゾン国に捕まったままだし、不安を抱えたまま一人になるのはもう嫌だ。
 民衆の言葉は無力にしかないのか。ミーアは無念を抱いた。
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登場人物紹介

エレン・ディル(16)

シュヴァルツ王国第二皇女の少女。

性格はほのぼの穏やかだが、王女としてのプライドはある。

フェイを心の底から信頼している。

亡国となったシュヴァルツ王国を再建する為に、奮闘する。

フェイ・ローレンス(17)

エレン姫に仕える護衛騎士。

クールで一匹狼だが、面倒見が良い。

エレンの事が好き。

エレンの夢の為に、フェイもまた奔走する。

セレナ・エーデル

ニコラが作った機械人形。

通称・仮初めの姫。

たどたどしく喋るのが印象的。

アレックとニコラを親のように感じている。

アレック・リトナー(20)

おちゃらけている謎の剣士。

セレナとニコラを連れて、旅をしている。

昔はセレナ姫の護衛騎士だった。

セレナ姫と瓜二つのセレナに特別な感情を抱いている。

ニコラ・オルセン(19)

腕の立つ技師。

部乱暴なしゃべり方で心は熱い。

アレックとはなんやかんやで仲が良い。

機械人形・セレナの親的存在。

香月七瀬(16)

ツツジの集落に住んでいた香月家の少女。

今は家出して、ダニエルの元にいる。

明るく元気な性格。

ダニエルの事を少々気になっている様子。

ダニエル・フォン・マクスウェル(25)

若き青紫男爵家領主。

シュヴァルツ王国を再建する為に奔走する。

物腰柔らかで爽やかな性格。

七瀬の事をなんやかんやで信頼している。

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