◆5 JB礼賛──青春よ永遠なれ!

文字数 1,286文字

 何度も目を通した。読むうちに目の前が歪んで文字が見えなくなってくる。読み終えると、丁寧に折り畳み、封筒に戻した。老眼鏡を外すと、水滴がレンズに広がっていた。
 空を見上げる。手紙を胸に当て、ツッカケを履いて庭の柿ノ木の横に立ち、下界を見渡した。晩秋の冷たい風が頬を掠めて吹いた。暮れなずむ街にぽつりぽつりと灯が入る。もうすぐ夕闇が訪れるだろう。その前に空は赤々と燃え立つ。命の息吹の炎を最後に一瞬だけともすかのように。
 恋も友情も取り戻した朱鷺は、左手を高々と天にかざした。薬指に(きら)めく己が青春の象徴が微笑みかける。しみじみと見つめたあと、ゆっくり手を下ろし、大きく息を吸い込んだ。
「我が青春に悔いなーし!」
 朱鷺のさえずりは、夕焼け空の彼方まで広がった。
「ホーホケキョ」
 ──風流だ!
 ──紅葉(もみじ)(うぐいす)……
 しんみりと聞き入った。
「ハテ? 紅葉……だと」
 紅葉に鶯を瞼の裏に投影してみる。どうしても映像が映らない。 
「ホーホケキョ」
「梅だ! 鶯には梅だ! 紅葉でねえ!」
 晩秋の風情を汚され、気分を害した朱鷺は、怒りを露にして庭から玄関へと飛び立った。戸を引いて中へ入る。
「ホーホケキョ」
「九太郎! あれっ……?」
 九太郎の傍らによし子が寄り添っていた。
「ヨシコサーン、ドーモスミマセン」
「許してやったのかい? よし子」
 よし子は朱鷺を見て頷く。
「オカーメ……ヨシコサーン」
 よし子は一瞬固まった。
 九太郎はよし子から遠ざかる。只ならぬ気配を感じ取ったようだ。
 突然、よし子は鳥籠の上に乗った。九太郎の声を聞き逃しはしなかった。奇声を上げながら羽をばたつかせ、九太郎を追いかけ始めた。
「キュウタロウ、コロシテヤル、コノヤロー」
 朱鷺は見かねてよし子を腕に乗せ、鳥籠から引き離した。九太郎に顔を寄せると、睨んでやる。
「バカなヤツめ、反省しろ!」
「ホーホケキョ」
「コロスゾ」
「まあまあ、よし子、落ち着け。オラが話聞いてやっから」
 朱鷺はよし子を別居部屋まで案内してやった。
 背後で九太郎がまた何か素っ頓狂なことを叫んでいた。
「メデタシ、メデタシ」



†††「九太郎参上!」††† 

判定:ステージ5クリア!(ステージ3もクリアとみなしやしょう!)

めでたく全ステージを攻略した朱鷺。
よくできました。一応、ほめてやりやしょう。
「おめでとさ~ん!」

   ***

 ここで、JBとは何ぞやホーホケキョ……その答えは?

「JKは女子高生。女子高生はホニャララ。しからば、JBとは──“ジジババ(爺婆)”ですたいホーホケキョ! それでもあんたは『萌え~』んしゃるとですか?」

 JK = 女子高生 = ホニャララ = B(ババア)

「若者よ。行き着く先は皆、JB(ジジババ)よ! 決してこの呪縛からは逃れられはせんですけん。光陰矢のごとしですたい。青春を謳歌しんしゃいホーホケキョ! そして超高齢社会を生き抜かんば! そいじゃ、チーンチーンチンコロリンのペッペッペ~!」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み