「ロリコンの鈴の音」

文字数 1,682文字


「……ここだけの話だけどね」
「さ、サナエさん。いきなり耳元で囁かないでください。カウントがゼロになったら気持ちよくなっちゃいますよ」
「……?」
「あ、いえ、何でもないです。話を続けてください」

 催眠音声なんかこの世界にあるわけないよな。

「そうかい? ……実はセキカには、生き別れになった妹がいるらしいんだよ」
「え? 妹……ですか」

 言われてみればたしかに、妹の話をしていたような気がする。第七話の辺りで。

「そう。レユが着てるあの服も、元々はセキカの妹の服だったらしいんだ」
「そんなことがあったんですね」
「あたしたちも人の事情に首を突っ込むつもりはないけどさ、セキカにも思うところがあるんだろう」
「なるほど……」
「二人で何話してるんだっ?」
「あ、い、いえ、なんでもないんですセキカさん」
「そうか? ふーん。あ、レユ、ありがとなっ」

 レユさんがセキカさんから僕の腕の中へ移って来る。
 それにしても、ワンピースが本当に良く似合っているなあ。残念なのは、レユさんがうっかり全裸になっちゃうようなラッキースケベはもう起こらないだろうってことくらいだ。

「よしお前ら、用が済んだらさっさと居住ブロックに乗れ。南都の方角へ向かうぞ」

 ラガタンの方からウワナさんの声がする。

「だそうだ。あたしらはラガタンで先行するから、ナナとレユはあの機体に乗ってついてきな」
「は、はい。分かりました」

 サナエさんの指示は的確だ。頼れるお姉さんって感じ。
 もしぼくがロリコンに目覚めていなかったら、ウッソ君もびっくりな年上キラーに成長していたかもしれない。いや、ないか。
 サナエさんはラガタンのコックピットに、ハナエさんとセキカさんはラガタンの後ろに鎖で繋がれている居住ブロックに乗り込んでいく。
 この居住ユニットと言うのがめちゃくちゃ便利な代物で、食糧庫やベッドはもちろんなんとシャワーまでついているという充実ぶりだ。見た目がただの大きな四角い箱なだけに、中身の快適さにはびっくりした。

『行くぜサナエ、ラガタン戦車モード!』

 ウワナの声が外部スピーカーから発され、突然ラガタンが重苦しい機械音を上げ始めた。
 胴の部分が折りたたまれ、縦に縮む。脚部が変形し、キャタピラが現れる。そして頭部が車体に収納され、右肩にあったキャノン砲がちょうどその真上に来る。
 どうやらこのラガタンというマシンは、人型モードと戦車モードの二種類の形態を持つ変形ロボットらしい。
 これで空も飛べるなら言うことなしだったんだけど、さすがにそこまでの技術はないよな。お手製ロボットの限界と言えば限界なのだろうけど、ちょっと残念だ。

『おいナナ、ぼやぼやしてっと置いてくぞ!』
「あ、は、はい!」
「行きましょう、ナナさん!」

 テンセイに乗り込むと、シートが二つに増えていた。一つはもともとあったやつで、その横に取り付けられたシートは、ハナエさんが増設してくれたレユさん用のだ。
 レユさん用のシートはクッションがふわふわだったり、ベルトが綺麗だったり、やけに豪華だ。
 可愛がられてるなあ、レユさん。
 もしぼくがロリだったらみんな可愛がってくれただろうか。
 ……それはないな。

「おおー! すごいですよナナさん、このシート、すっごくふかふかです!」
「そりゃよかった。ハナエさんに言ったらきっと喜びますよ」
「で、でも私はナナさんのお膝の上が良かったな、なんて……」
「え? なんですか? 聞こえませんでしたもう一回言ってください」
「もう! なんでもありませんっ!」

 そっぽを向いてしまうレユさん。
 ロリの考えることはよく分からないな……。
 手元のパネルを操作して、テンセイを起動させていく。
 どぎゅぎゅぎゅぎゅぃーん(ガン○ム起動音)。

「アイハブコントロール! 介入行動に……の、のわぁーっ!?」

 どがーん!

『な、なんだ!?』

 ウワナさんの慌てる声。
 先行するラガタンの方で爆発が起こったのが見えた。
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