2 ❀ うさぎの日常をえがく魔法

エピソード文字数 1,415文字

咲良が七歳の冬のことだ。


お正月に『お年玉』をもらい、咲良は浮かれていた。

あたらしいお人形が買える!!


うさぎのふたごのあかちゃんと、白くまさんが、ずぅ~っとほしかったんだ~

良かったな、咲良。


にーちゃんも欲しいゲームあるから、いっしょに玩具屋へ行こう

当時、中学三年生の兄、帯刀(たてわき) (さく)が付き添ってくれた。

あのね、うさぎさんはね、お耳の色がちがうんだよ!


ミルクうさぎさん、チョコレートうさぎさん、ショコラうさぎさん。


秘密の「ももいろうさぎさん」もいるんだって

そうか、ももいろさんか~、いつか手に入るといいな

自分の欲しいお人形がどんなにステキなものか兄に話しながら、咲良の歩調は弾んでいた。


兄の作はというと、年の離れた妹がかわいくて仕方なかった。

さ、着いたぞ。初商にしては人が少ないな~。

お兄ちゃん、早く行こう
そうだな。うさぎさんが待ってるんだもんな

作は、咲良のお目当てのドールハウスコーナーまで付き添ってくれた。


しばらく咲良とともに、お人形や家をながめていた。

初商、特別セール!! ゲームステーション4を、当店特別価格で販売します。


本日限り! 台数には限りがございます! お早めにお求めくださーい。

店内アナウンスが聞こえると、作はぴくりと反応した。


作の目当ての商品だ。「台数限り」の特価販売、逃すわけにはいかない。

咲良、にいちゃんは少し急用ができてな?


ここで少し待っていてくれるか?

咲良がお人形に夢中なので、欲しいゲームの売られているコーナーに連れて行くのが忍びなかった。
うん、分かった
すぐに戻るからな。知らない人に声をかけられても、付いていっちゃダメだぞ

咲良はお人形やお家の箱の並ぶ棚を見ていたが、となりのビーズやアクセサリーをつくる玩具の集められたコーナーが気になった。


そちらを少しのぞいて、またドールハウスコーナーに戻ってくると・・・。

・・・・・・。

無人だったドールハウスコーナーに、一人の少年がいた。


少年は プレイスペース に散らばったお人形や家具を見つめていた。

(ぎんいろの髪に、あおいろの目・・・。きれい・・・。がいこくじんかな?) 

兄のと同じくらいの背丈だ。おそらく年も近いだろう。
そこね、ぐちゃぐちゃになっちゃってるでしょ?
!?

ほかの子が遊んで、お片付けしないの。何回片付けても・・・またそんなになっちゃう。


今日もお片付けしたけど、いろいろ足りないの。


はだかのお人形さんもいるし、かわいそうだよね・・・。お洋服、どこにも見つからないの

・・・・・・?

少年は、咲良の日本語が分からないのか、首をかしげる。


咲良は、身振り手振りで彼に話した。すると・・・。

I see.

少年はひとつうなずくと、プレイスペースに散らばったお人形や家具に手をかざした。


すると触れてもいないのに家具やお人形が、ふわりと浮かび上がったのだ。


洗濯機に押し込まれていたお人形の服も出てきて、はだかのお人形に着せられる。

えっ・・・え・・・ええ!?

うさぎのカップルは一階でアフタヌーンティーを楽しむ。


二階では、うさぎのお母さんが双子の赤ちゃんを子守りするように置かれた。


おうちの外の庭ではうさぎのおじいちゃんとおばあちゃんが花の手入れをする。

うさぎの家族のなにげない日常をえがくのに五秒と要しない魔法だった。
すごい・・・。おにいちゃん、魔法使いなの?
It's a secret

少年は唇に人さし指をそえる。


咲良へ微笑み、玩具屋を去ってしまった。

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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