第56話陽平と芳樹②

文字数 1,008文字

陽平は、懸案のアイドルステージ爆破についても言及した。
「オドシだけなら、アイドルの興行会社から組に金が入るだけ」
「難しいことではない」

芳樹は、陽平の言葉に「寒さ」を感じながら、聞き返す。
「爆破は、東都でも、ためらうのか」

陽平は、声を低くした。
「難しいのは、無差別テロが面倒な奴らを刺激することだ」
「一度爆破が成功すると、日本だけではない」
「具体的に言えば、中東からロシアにかけての専門集団が、どんどん入って来る」
「そうなれば、日本の平和ボケした警察では対応できない」
「日本中の極道が協力しても、抑えきれない」

世界情勢に疎い芳樹でも、陽平の説明には頷いた。
「だから総裁も、ためらうんですね」

風間平蔵は、厳しい顔に戻った。
「極道であっても、日本は護りたい」

陽平の表情も厳しい。
「東都の役員室で、官邸とも、話はする」
「ただ、官邸も官僚も、平和ボケ」
「選挙しか考えていない」
「それとインバウンドといいながら、危ない連中はどんどん入って来る」
「風間と有馬で、つぶしてはいるが、止められん」

陽平は芳樹の目を見た。
「不法滞在者っているだろ?」
芳樹は頷いた。
「東南アジアからと中東からと」

陽平
「あいつらと、最近入って来た危ない連中と結託が進んでいる」
「強制国外退去も、人権やら何やらを叫ぶ野党のせいで、及び腰」
「官邸は、国会とマスコミ追及が面倒なので、ほったらかし」
「日本人の知らないところで、どんどん結託が進んでいる」
「文句を言えば、日本人でも暴行される」
「警察も怖がって捜査もしない」
「埼玉で、そんな事態が進んでいる」

芳樹は、ため息をついた。
「アイドルを苛めるどころではないのか」

陽平は、表情を元に戻した。
「結論として、脅すだけなら、どんどんやっていい」
「ただ、爆破は、面倒な連鎖反応を呼ぶリスクがある」
「これが、東都と組の見解だ」

風間平蔵も続いた。
「都知事選でも、危なかった」
「左翼からも金が来たから、警備した」

芳樹は驚いた。
「極道が左翼を警備?」

陽平
「左翼だって、爆破されても困るだろう」
「政権も協力した」
「総選挙も近いから、面倒は起こしたくない」

芳樹は、レベルの高い話に押された。
(ついていけない嫉妬も生じた)
(個人の恨みの復讐程度で喜んでいた、それが情けない)
「アイドルコンサートの爆破は・・・再検討だ」
「深川に戻って、みんなと相談する」

陽平は、芳樹のグラスに冷酒を注いだ。

芳樹は、屈辱感を覚えながら、一気に飲み干した。
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