詩小説「カギカッコ」3分の台詞。全ての大人へ。

エピソード文字数 1,355文字

カギカッコ

「今度こそ枯らさないようにしないと。観葉植物」

「うん、そうね」

「ちゃんと水あげなよ。まぁ、あげすぎも良くないけどさ」

「うん。大丈夫」

「ただいま」

「ただいま?」

「ただいまでもねぇか。もう、住んでないんだし」

「うん……。」

「しっかし、久しぶりにこの部屋入ると、なんか、人ん家の匂いがするな。あれだな、鼻が慣れちゃってたから、気づかなかったんだ」

「あぁ、そう」

「玄関の折り畳み自転車。空気入れないとな。タイヤがぺちゃんこ」

「うん、そうだね」

「空気入れとくわ、俺」

「いや、大丈夫」

「良いから、良いから、すぐ終わるし」

「大丈夫だから」

「ちょっとやってくる」

「しなくて良い!」

「なぁ、ほんとに別れるのか?」

「うん」

「そんな急に」

「急じゃないよ。ずっと前から考えてた」

「なんでなんだよ」

「もう理由は散々話してきた」

「俺を納得させる義務があるよ」

「どうすれば納得するの?」

「どうすればって、俺の何が悪いんだよ」

「悪いなんて言ってない」

「じゃあ、なんでなんだよ?」

「だから、散々話をしてきたでしょ? これが最後だって言うから」

「最後? ほんとに最後なのか?」

「最後って言ったじゃん?」

「やり直せるよ」

「やり直したいなんて思えない」

「直せるところは直す。もう、寂しくさせない」

「寂しくないから」

「へっ?」

「寂しくないから、別れたいんでしょ?」

「なんなんだよ。冷たいな」

「もう、同じ話ばっかり、何回もしてきた。終わりにしよう」

「あぁ、もう、良いよ。終わりにしよう。別れて」

「うん」

「うんって、そんな簡単に」

「別れてってさぁ。私、ずっと前から別れようって言ってるじゃん」

「あぁ、ほんと時間の無駄だな。帰る」

「うん」

「終わりだな」

「うん」

「後悔するなよ」

「しないから」

「見返すから」

「そう、分かった」

「馬鹿にしやがって」

「してないから。どうでもいいし」

「絶対に、見返すから」

「興味ない」

「うっ」

「私、用事があるから」

「もう、俺、どうでもよくなってきた」

「そう」

「冷静になった」

「良かったね」

「最後くらい笑顔で」

「うん。そうしな」

「いままでありがとう」

「こちらこそ。じゃあ」

「幸せになれよ」

「うん」

「じゃあな」

「うん」

「はぁ、よしっ」

「ふぅー。さーてと」



「もしもし、やっと別れられた。ほんとしつこくて。面倒だったわ。でも、これで私も自由の身。あぁ、でも、あなたとのこと、まだ内緒ね。えっ? だってさ、アイツと別れる前から会ってたことバレるじゃん。うん、うん、アイツふられてるくせに、自分に酔いしれてんの。ほんと、ドラマの見過ぎ。ねぇ、自転車空気入れてよ。ぺちゃんこでさぁ。うん、うん、そうなの。観葉植物捨てたくて。違うよ。アイツのセンスに決まってんじゃん、こんな趣味の悪いの。ねぇ、ねぇ、これから、会おうよ、良いでしょ? うん、うん、また後で。はーい」

「あっ」

「忘れ物取りに来た」

「……。」

「やっぱり、幸せになるな」
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登場人物紹介

主人公はあなたです。それぞれの恋愛模様を『詩小説』で。

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