第四話 跡継・終編

文字数 698文字

 高雄は敗北、真織は引き分け。白星が一つもない真織たちだったが、禮導に聞けるだけのことは聞く。

「おい、話が違うぞ! 妲姫の記憶を蘇らせる術があるから俺も真織もお前の修行? に手伝ってやったのに!」
「まさか、やはり勝たないと教えてはくれないんですか?」
「違うな。俺は知らん。記憶を蘇らせる呪術などこの世にあるか? 聞かんな、そんなまじないは。ないものはないのだ」
「じゃあどうして、戦えと?」
「よーく思い出せ。俺は記憶に関することを教えるとは一言も言っておらん。俺がお前たちに教えようと思ったことは、そんな方法はありもしないことだ」
「だったら戦う理由は?」
「修行だ」

 高雄も真織も、騙されたと感じた。くたびれたのに、骨を折っただけで終わった。

「だがな、俺にも心当たりがないわけではない」
「と言うと?」
「催眠術師が神代の傘下に数人在籍している。京都の付近にはいなかったが、この現代、電話一本で次の日に呼び寄せることが可能。神代の俺の依頼だ、断る者はいない」
「つまり…」

 禮導の話の先を真織は読み取った。

「催眠術師と共同で、記憶の蘇生は行えるってことですよね?」
「その通りだ」

 ここに来て、やっと希望が輝いた。高雄はガッツポーズをし、真織は妲姫を抱きかかえた。

「喜んでください、妲姫! あなたの記憶が戻せるんですよ!」
「そうなの? やったぁ!」

 妲姫も逆に真織を抱き返す。

「あの、禮導様。ちょっと…」
「ん? 何だ?」

 神社で働く男性が、眉間にしわを寄せて禮導に耳打ちをした。

「何だと? 本当か?」

 喜ぶ三人。そこに水を差すかのごとく、悪い知らせが入り込んでくる。

「何者かが、この聖霊神社を攻撃している!」
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