第二十話 話し合い

文字数 8,104文字

 ラウラとカウラが、ルグリタに礼を述べに行く事になった。

 馬車で待つのもおかしいので、部屋で待たせてもらった。
 なかなか帰ってこない二人を待っていると、陛下が”リバーシ”セットを持ってきた。俺が、父に渡していたのを探し出したらしい。一戦したいようだ。”あの”ユリウスの血縁者だけあって負けず嫌いなんだろう、僅差で負けようと思っていたら、陛下から”本気での勝負”と、先に言われてしまった。

 陛下に圧倒的な大差で三連勝した。その後で、フォイルゲン辺境伯との対戦になって、こちらも大差を付けて勝ってしまった。
 火の着いた大人たちは、大人げなく、2対1での対戦を申し込んできた。二人で考えるのではなく、”リバーシ”を2セット使って同時に対戦するという奇策に出てきた。
 しかしその奇策も、難なく退けた。
 だてに、”思考ルーチンのプログラム作成”を、請け負ったわけじゃない。覚えたての人間に負けない位の実力は持っている。

「陛下。儂には、アルノルト君に勝てるイメージが湧きません」
「偶然だな。余も。ホルストと同じ意見じゃ流石は開発者だという所か」

「そうですね。単純な事ですが、いろんな手法が有りますからね。幾つかの定石を抑えれば勝てるようになっていきますよ」

 ラウラとカウラが、父に連れられて戻ってきた。
「アル様」「アル兄ィ」
「おかえり。父上ありがとうございます。明日にでも学校に申請してまいります」
「学校にはすでに届け出をしてある」
「あ。解りました。何から何までありがとうございます」
「なに、いい。それよりも、アル。そこの二人(馬鹿達)はどうした?」

 負け続けた二人が少しへこんでいる光景を父は面白そうに眺めていた。

 どうやら、陛下と辺境伯は、父とまだ話が残っているらしく、屋敷に残る事になった。
 俺たちは載ってきた馬車で寮に帰る事にした。

「アル様」
「どうした?」
「その、私達の事ですが・・・」
「うん」
「開放などして頂かなくても、私達は十分幸せです」「そうにゃ。アル兄ィも伯爵様もすごくすごく優しいにゃ」
「そうか、でも、俺の我儘だけど”けじめ”みたいな物なのだよ」
「けじめ?」
「そうだな。俺がやりたい事で、・・・・二人が嫌いだからとかじゃなくて、二人の事が好きだから、開放して、それでも二人が”俺の従者をしてくれる”と、言ってくれるような男になりたい・・・と、思っているのだよ」

「アル様」「アル兄ィ」
「まだもう少し先だけどな」
「いえ、それまでに、私とカウラも、アル様に捨てられないような従者になります。改めて、よろしくお願いいたします」「うん。よろしくにゃ」

 そう言って、ラウラが頭を下げた。それを見ていた、カウラも慌てて頭を下げた。
 二人の頭を交互に撫でながら

「うん。でも、慌てなくていいよな。俺達は、まだ中等部に上がったばかりだからな」
「はい」「はいにゃ!」

 残念な事に、本当に残念な事に、馬車は寮に着いてしまった。途中から本気で、”着かなければいい”と、考えていた。
 考えてみて欲しい。今日、父の屋敷であった陛下もかなり面倒な性格だ。そこに輪をかけて面倒な性格なのが、ユリウスなのだ。
 絶対に、面倒な事になるに違いない。まだ怒り狂って、当たり散らしてくれたほうが、対処が出来る。

「はぁ着いちゃったな」
「アル様。ユリウス様の事ですか?」
「説明はしないとならないけど、なんとかごまかせないかと思ったのだけどな」

「・・・・」「無理にゃ」

「カウラ。そうだけど・・・なぁ」
「でも、もしかしたらなんとかなるかもにゃ」
「ん?どうして?何か掴んだのか?」
「知らない臭いがあるにゃ。それに、入り口で何か争っているにゃ」
「カウラ。それは本当か?誰かが喧嘩しているのか?」
「一人は、エヴァにゃ。あと何人か知らない臭いにゃ」

「ラウラ。カウラ。馬車を置いて、急ぐぞ!」
「はい」「はいにゃ」

 御者に馬車を所定の位置に戻してもらって、俺達は玄関に入った。

「帰ってください!」

 玄関を開けていきなりそんな事を言われて少し凹んでしまった。

「あっおかえりなさいませ」
「エヴァ様。ただいま。どうしたの?」

 ラウラが、手をあげて俺を制してから、ラウラが問いかけた。
 エヴァが、俺の名前を告げなかった事で”何か”を、感じたのだろう。カウラも俺の前に出て臨戦態勢を整えている。

「ラウラさん」

 一人、エヴァに突っかかっていた人物が、ラウラとエヴァの間に割って入った。
 従者だろうか、後ろに控えていた二人が腰に下げている剣に手をかける。

「貴様。何の権利が合って、ボニート・ルベルティとエヴァンジェリーナの話に割り込む」
「それは、ルベルティ様が、私達の寮の中で迷惑な行為に及んでいるからです」

 エヴァの言葉に語気を強める。

「なっおまえ。俺が誰なのかわからないのか?」

 ラウラが相手をするようなので、俺は一歩下がってカウラの後ろに控える事にした。

「えぇ存じておりませんが?貴方は、私の事をご存知ですか?」

 可愛く、首をかしげるラウラを見て、従者の一人が腰を折って俺に一礼した。俺が主人だって気がついたのだろう。

「ボニート様。ここは、一旦帰りましょう。エヴァンジェリーナ様の留学は、すでに決められている事です。それに、こんな時間に・・・」

 俺を見てから
「ご迷惑をおかけしては、エヴァンジェリーナ様のお立場も悪くなってしまいます」
「・・・そうか、エヴァンジェリーナ。明日、また来る」「来なくていいです。私は、ここで過ごすと決めています。それに、父様の許可も貰った!」
「ダメだ!」

 奥からクリスが出てきた
「エヴァ様。後日場所を設けて、お話(言い分)くらいは聞いてあげましょう。そちらの、貴方達もいいわよね。いきなり怒鳴り込んで来た事は、その時にしっかり説明していただきますからね。壊した物と合わせて、後日誠意ある釈明を頂ける物と考えています」

 クリスが威圧を込めた目で、ボニートと名乗った人物を見つめた。
 ラウラとカウラも睨んでいる。エヴァも泣きそうな目でボニートを見ている。

「解った。ブノア。エタン。帰るぞ」
「はっ」「はい。はい」

 ボニートは、”フンっ”とだけ鼻を鳴らして横を通り過ぎていった
 従者二人のうち、ブノアと呼ばれた方は、クリスとエヴァに向けて一礼して、通りすがりに俺達にも会釈して通り過ぎた。
 エタンと呼ばれた従者は、エヴァに軽薄に手を振って、クリスには仰々しく礼をしてから、俺の肩に手を置いて、「あんさんが一番やばそうだな。わいだけじゃ勝てへんかもな」
「エタン。帰るぞ」「はい。はい。人使いが荒いご主人様だな。ほなな。あんさんの事は覚えておく」

 3人が出ていってから、一息つきたいと思っていた。それが叶わぬ夢である事も理解している。
「さて、アルノルト様」
「え?あっはい。ユリウス殿下はお部屋でしょうか?フォイルゲン様」
「えぇ貴方のお帰りを、首を長くしてお待ちです。私達では手がつけられない状態でございます。お覚悟をお願いいたします。ライムバッハ辺境伯の後継ぎ様」
「わかった。クリス。ユリウスに10分後に尋ねると伝言頼む。荷物を置いてから向かう。それに、ラウラとカウラの事で、ロミルダに礼を言っておきたい」
「あらどうしたの?」

「クリスティーネ様。私達は、アルノルト様の従者である前に、奴隷です。その私達を、ルグリタ様が養子に迎い入れてくれることになりました」
「あらそうなの?」
「はい。私達は、本日より、”マナベ”ではなく、”ゼークト”となります。よろしくお願いいたします」
「そうなのね。貴方たちも、ライムバッハ家に迎い入れられたわけね」
「はい」「そうにゃ!」

 話をそらそうとした。
 不発に終わると解っているが、試してみないと結果は解らない。

「アルノルト様。解ったわ。ユリウス様には、荷物を置いたら”すぐ”に行くと伝えておくわ」
「・・・わかった。”すぐ”に向かう」
「そうしてくれると助かるわ」

 クリスがにこやかに微笑みながら、上に上がっていく。
 エヴァからも話を聞きたいが、それはユリウスとの話が終わってからだろう。
 部屋に荷物を置いて、ユリウスの部屋に向かう。見えるわけではないが、ユリウスの部屋から不機嫌オーラが漏れ出しているようにも思える。こういう展開あったよな。

▽▽▽▽▽(その頃。寮から逃げるように帰った、ボニート達は)

「ぼっちゃん。ありゃぁ駄目です」
「エタン。殿下と呼べ。しかし、エタンの言う通りです」
「そんな事はない。あんな所に、エヴァンジェリーナを置いておくわけにはいかない。即刻、帰国させる」
「無理ですって、陛下の許可は出ているのですよ」
「それでも・・・だ!それに、あんな所では、警護も出来ていないではないか!」
「いやいや。ぼっちゃん。気が付かなかったのですか?」
「”何”を、だ?」
「殿下。エタンの言葉遣いはともかく、言っている事正しいです。あの屋敷全体に防御結界が施されていました」
「なっそんな事、わが帝国でも出来る物は少ないぞ」
「えぇアーティファクトだとは思われますが、チンピラ程度には侵入は不可能でしょう。忍び込むにしても、最上位の”影”を使わないと無理だと思います」
「・・・でも、中にいる奴らでは、エヴァンジェリーナを守れない。やはり、俺が守る!」
「それも無理がありまっせ。ぼっちゃん」
「なぜだ!俺ならば、奴らよりもエヴァンジェリーナを守れるはずだ。剣も魔法も俺のほうが上だ!」
「ぼっちゃん。それが間違いですよ。あの、クリスと呼ばれていた子の魔法力はぼっちゃんよりも上ですよ。見ただけですから、属性まではわかりませんでしたが、うちの基準では、70程度はありましたよ」
「なっ。そんなはずはない。俺は天才だと言ってきたのは貴様だろう。エタン!」
「えぇそうですよ。ぼっちゃんの年齢で、50は天才の部類ですが、上には上が居るってことですよ。そして、後から現れた3名は不味いですね。俺でも勝てるかどうか・・・」
「な!」「エタン。それは本当ですか?」
「嘘じゃないですよ。あの獣人の子は、属性はなさそうだけど、魔法力は80と90の間位で、もう一人の子は、90に近いですし属性も複数ありそうでしたよ。そして、あの後ろに居た男。ありゃぁまずいです」
「あぁ珍しく、貴方が”触った”子ですね」
「えぇ好奇心に負けました」
「それでどうだったのですか?」
「わからなかった」
「え?」
「”見えなかった”が答えですよ。正直、逃げ出したかったですよ。属性は、5つ。地・火・木・風・剣。ですね。でも、違和感があります。もしかしたら、もっと・・・・何か隠していますね・・・。魔法力は、測れなかった」
「エタン。どういう事だ!それは、宮廷魔道士レベルではないか!」
「えぇそうですね。ぼっちゃんが10人居ても勝てないかもしれないですよ」
「エタン。殿下と比べる事は置いておいて、”測れなかった”とはどういう事ですか?」
「わいもびっくりしたのですが、”触って”調べると、魔法力は必ず表示されてきたのですが、表示がされなかったのですよ」
「エタン。それは、魔法力が”ない”という事ではないのか?」
「それなら、怖いですよ。魔法力がなくて、属性持ちですよ。ありえないですね」
「・・・。そうか・・・」

「あっ!思い出した!」
「どうした。エタン」
「あいつ。あの男。ライムバッハの後継ぎですよ」
「あいつが?」
「間違いありませんって、前に、聖女様が式典に出た後で、女中達と話しているのを聞いた時に、”褒めていた男”が、今日、あいつが主席になっているのが”見えました”からね」
「あいつが・・・あの男が、エヴァンジェリーナがこの国に残った理由なのか?」

△△△△△

 俺は、ユリウスの不機嫌オーラを正面から受けている。
 あぁよくこういう展開あったな。システム開発でも、よくある展開だ。
 客が、上層部に根回ししないで組み込みを決定したして、それを現場の、プログラマが実装してしまった。実装が終了してから、上層部が怒鳴り込んでくる。面子を潰されたが一番の理由なのだけどな。

 今回の逃げ道は一つしか無い。”時間がなかった”それで押し切ろう。

「アル。それで、いきなり、辺境伯の後継ぎに戻った理由を聞かせてくれるか?」

 沈黙に耐えきれなくなったのだろう、ユリウスが先に口を開いた。
 謝罪すべきは、俺の方にあるが、ユリウスが求めているのは謝罪ではない。

「解った。先に、確認しておきたい事はあるが、いいか?」
「あぁなんだ」
「ユリウスは、今日、陛下が来られる事を知っていたのか?」
「いや。知らなかった。アル。俺もおまえに聞きたい事があるがいいか?」
「えぇ何でしょう」

 ユリウスは、まだ少しだけ躊躇しているのだろう、言いよどんでいる。

「アル。おまえが、”ライムバッハ”名乗ったは、俺やクリスのためなのか?」

 どう答えるかで今後の展開が変わってきそうだな。

「ユリウス殿下。それに、外で聞き耳を立てている人たちにも言っておきますが、俺が”ライムバッハ”家の名前を名乗るきっかけは、確かに、殿下やフォイルゲン殿の話を聞いたからですが、それだけでは無いのです」

 ユリウスが少しだけ考えてから
「アルノルト。話の続きは、下で話すか?どうも盗み聞きされているのは落ち着かない」
「そうですね」

 座っている、ユリウスに手を差し出すと、それを握ってから立ち上がってくれた。
 不機嫌オーラは消えていた。やっぱり、この人は自分の責任だと思って機嫌を悪くしていただけなのだ、まだ完全に機嫌がよくなったわけではないが、話を聞く気持ちにはなってくれたようだ。
 応接室で話をする事になった。俺の前にユリウスが座ってクリスが当然の様に横に座った。他の面子も応接室の適当な場所に、腰を落ち着かせる。

「それでアル。どういう事だ」
「はい。まず、きっかけは確かに、ユリウスとクリスの話でした。それは認めます。その前に、俺が”マナベ”を名乗っていた訳を聞いてもらえますか?」
「あぁ解った」
「ありがとうございます。俺がマナベを名乗っていたのは、”目立ちたくなかった”事です。これは、無駄でしたが・・・・。”俺の力だけで、幼年学校を過ごす”と、いう目的は達成する事が出来ました」

「・・・」「・・・」「アル。おまえは、そんな事を考えていたのか?」

「はい。家名を外したと言っても、”ライムバッハ”家の名前は少なからず影響すると考えていました。”()()()()”でも”()()()()”でも、ユリウスの様に飛び抜けていれば、その問題も少ないとは思いましたが・・・」
「あっそういう事だな。アル。確かに、な」
「ユリウス様。少しお考え違いをしているようですわよ。アルノルト様は、先生や学校側の事ではなく、生徒の事を言っているのですわよ」

さすがはクリスという所か
「クリスが言うように、俺が気にしたのは、”ライムバッハ”という名前は、先生達は別にして、一部の貴族からは評判は良くない」
「・・・」「そうですわね。ライムバッハの後継ぎだって事で、何か言われる事も有るだろうし、言われるだけではなく、実力行使に出る方々が居るかも知れない」
「なっそんな事は・・」「ユリウス様。この件では、わたくしはアルノルト様のお味方です。王家のやりようは間違っておりますわ」
「クリス。今は、その話は置いておこう。ユリウスもいいよな」
「はい。申し訳ありません」「あぁそうだな」

「おれも、幼年学校に入ろうと思った時に、どうしようかと思ったが、自分の力を試したいという気持ちもあって、マナベを名乗った」
「・・・」「・・・。」「え?でも、主席じゃなかったよな?」

 空気を読まない。ギルの言葉だ
「だから、目立つのも嫌だったからな」
「あっなるほどな」
「目立ってしまうと、俺の事に興味を持つ奴が、俺の事を調べようとするだろう?」

「あぁぁそういう事か、たしかにな。俺の家もすぐに調べさせていたからな」
「ギル・・。まぁいいかぁ」

「話が横道に逸れたが、俺は、自分の力で入学して奨学金を得て、幼年学校に通いたかった」
「それはわかった。それで、なんで今日だったのだ!」

「あぁ。前々から考えていたのだけどな。いいタイミングがなかった。入試後に皆に相談すればよかったのだけれど、いろいろ有ってできなかった。そのことについては、俺が皆に甘えてしまった。すまなかった」

 皆の視線が集まっているのが解る。
 一息入れて
「それで、今朝の話があったので、俺が、ユリウスやクリスに甘えていた事を思い知って、名前を戻す事にした。これが全てだ」
「おまえは、俺やクリスに甘えている。そんな事無いだろう?」
「アルノルト様。それはお互い様だと思います。でも、そう考えていただいてうれしいですわ」

「それに、もう一つ理由がある。」
「なんだ」
「俺は、ユリウスの事を友達だと、親友だと思っている」
「あぁ」

 なんか照れくさそうにしている。そっけなかったが、耳が赤くなっている。照れているのだろう。
「うん。そんな親友に甘えて居ていいわけがない。俺は、ユリウスに守ってもらう為に、友達になろうと思ったわけじゃない。ユリウスと一緒に居る為に、友達になった。これは、クリスもエヴァもギルも、ギードやハンスも同じだ」
「アル。おまえ」
「アルノルト様。そんな・・・」「・・・」
「アル。俺もだ!」

「うん。ギルありがとう。それで、ユリウスの隣に居て文句を言われない様にするには、”ライムバッハ”の名前を利用するのが一番近道だろう?ここで躊躇する必要は考えなかった」
「アル!解った」

 そう言って、ユリウスは立ち上がって部屋から出ていった。
「クスクス」
「クリス」
「あぁ大丈夫ですわよ。恥ずかしくなったのでしょう。後で、わたくしから話をしておきますわ」
「頼む。それで、恥ずかしくなったってどういう事?」
「アルノルト様達は居なかったので、知らなくても当然ですわね。寮に帰ってきてから、ユリウス様はそりゃぁもうひどかったですわよ。ね。みなさん」

 皆が一斉に肯定する。
「酷かった?」
「えぇ落ち込んでしまってね」

 もう、クリスはこらえきれなくなって、笑いだしてしまった。
 暫く笑ってから、笑い涙を拭いてから
「”俺は、アルノルトの親友のつもりで居たが、それは俺がそう思っているだけだったのか?なぜあいつは一人で勝手に決めて、俺に相談しなかった”と、わたくしに言ってきたほどですからね」
「・・・そりゃぁ悪かった」
「そうですわよ。許嫁のわたくしよりも、アルノルト様の事を気にかけるのですから、嫉妬してしまいますわ」
「クリス。おまえ、それをユリウスに言ったのか?」
「えぇ勿論!」
「なっ不機嫌の理由は、俺じゃなくて、クリスだったのではないか?」
「そうですわね。よく考えれば、そう言われても致し方ないですわね」
「はぁ?クリス。おまえ!」
「なんですの?わたくしも怒っていたのですよ。せっかく、私とユリウス様が耐えた事を、翌日にひっくり返して、わたくし達の忍耐を返して欲しいものですわ」
「・・・それに関しては、済まなかった」
「もういいですわ。面白い物も見られたことで”ちゃら”にしてあげますわ」
「それは、それは、大変ありがたいお言葉です。クリスティーネ・フォン・フォイルゲン様」
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