第27話:山下君との最高の思い出づくり1

文字数 1,575文字

 しかし、そんな楽しい日々は、長く続かなかった。10月下旬のある晩、山下の部屋に、加藤と北山と佐島が、夕飯後に呼ばれてた。最初に山下さんが、いろいろ世話になりありがとうといった。佐島が、何言ってるのよ、まだまだ一緒に、みんなで楽しんでいきましょうと言うと、山下が、僕もそう思う。

 しかし、そんなに長く、いられないような気がするんだと、小さな声でいった。加藤が、そんな弱気でどうするんだよと励ましたが、山下が、何か、そんな気がするだと、つぶやいた。続けて、ところで、ここに3冊の預金通帳がある。いままで臨時収入があるたびに東北の大震災で両親を亡くした子供達のためにY社を通じて、募金していたんだ。

 僕は、女房に、先立たれ、子供や仲の良い兄弟、親戚もいない。そこで、もしもの時に、私の思ったとおりに使って欲しいんだと言った。定期的に一定額ずつ、Y社を通じて、東北の大震災で両親を亡くした子供達のために募金して欲しい。残ったお金を基金として、できたら君たちの善意のお金を足して募金の和を大きく長く続けて欲しいと言った。

 佐島が、石島さんから、いただいたお金もあるし、了解と言った。加藤が、わかったよ、ネット募金は、私が、責任をもって継続して行く、また、我々も募金する。そして、募金の和を広げる活動も手伝うと言った。山下が、加藤の手を握って、その時は頼んだぞと言った。加藤は、山下の手を強く握り返し、これは男と男の約束だと言い力いっぱい握り返した。

 加藤、佐島、北山の3人とも協力を約束した。11月になり木枯らしが吹いて寒くなって来た。加藤達、4人組は、毎晩の様に1時間ほど麻雀して遊んだ。12月に入り、ちまたでは、インフルエンザの流行が、ニュースになるようになってきた。そんなある晩、麻雀をしていた山下が、急に咳き込んだ、びっくりして、加藤が、背中をさすった。

 部屋に帰り、佐島と北山が、枕元に、水さしとタオル、ぬれタオルをおいた。山下が、悪いなーといいながら目を閉じて寝た。みんな部屋に戻ったが、佐島が嫌な予感がして寝付けなかった。北山と加藤も同じだった。翌朝、眠れぬ夜を過ごした3人は、山下の部屋をたずねた。

 彼は、既に、起きていたが、咳がひどく苦しそうだったので、ケアー担当の佐藤和美さんにいって咳止めの薬をもらい飲ませた。しかし、いっこうに改善しない、そこで9時まで待って加藤が、北山、佐藤和美さんと車で、近くの大学病院の救急へ連れて行った。内科の先生が診察して肺に嫌な感じの影が映っていて癌の転移かも知れなと言った。

 癌の検査をしてみるので、入院の手続きを取って下さいと言われ、佐藤和美さんが書類を書いた。10時半まで検査が行われ、病室に運ばれた。北山と加藤が、山下の病室へ行った。そこで山下が僕はもう長くないかも知れないが、先日話した、東日本大震災で親を亡くした子供達への募金の件は、頼んだぞと加藤に言った。

 わかった約束は、必ず守ると、言った。次に山下は、北山、に老人シェアハウスに入ってきて、幼なじみに再会できて本当に良かったねと告げた。おまえら、仲良くやれよと言った。いいなー、昔の様に、恋人になって、長生きしろよと3人が手をつないだ。北山の目から、大粒の涙がこぼれ、わかった、仲良くやっていきますと言った。

 山下が、おい、加藤、こういう時に、しっかり抱き付くんだよと、背中を叩いた。あわてて、加藤は北村のからだをしっかり抱きしめた。本当に仲良くやれよと、言いながら山下の目から涙がこぼれ落ちた。

 数分して映画のワンシーンみたいだと山下が言い、みんな本当にありがとうと小さな声でつぶやいた。その後、北村と加藤は山下の病室を出た。ケアー係の佐藤和美さんが、書類と精算を終えましたので帰りましょうと言い、加藤が運転して、シェアハウスに帰った。
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