フーリエ変換は「フィルター」だ

文字数 903文字

 今回は大学の数学や物理で学習する「フーリエ変換」というものを解説してみたいと思います。

 イメージはずばり「フィルター」です。

 どういうことか。

 たとえば音楽を引き合いに出すと、あるひとつの楽曲にフーリエ変換をかけることで、ギターやベース、あるいはドラムスやヴォーカルなど、単一の成分に分解して取り出し、分析をすることが可能となるのです。

 まさに「フィルタリング」ですね。

 オーケストラであれば、ここはヴァイオリンでここはヴィオラなどというわけです。

 音楽以外にも、電波や粒子など「波」の性質を持っているものであれば、「(かたまり)」をフィルターにかけることで、それぞれの要素を抽出することができます。

 このようになるのは実はというか、発案したフランスの数学者フーリエがそもそも、「すべての関数は単純な関数の合成として再現できるのではないか?」と着想したからなのですね。

 フーリエはたいへんなアイデア・パーソンであり、想像力の豊かな人でした。

 そのため「証明できていない数学なんて使うな」という、当時の頭の固い学界とはもめごとが多かったようです。

 ちなみにヒエログリフの解読に初めて成功し、「近代言語学の父」と呼ばれるシャンポリオンは、彼の弟子のひとりです。

 彼らは数学好きだったナポレオンとも仲が良かったそうです。

 おりしも20世紀末になると、デンマークの物理学者であるニールス・ボーアが「量子論」を打ち立て、ついでオーストリアのシュレーディンガーやハイゼンベルクが「量子力学」を形作る過程で、「物質も波のように振る舞う」ことがわかりました。

 そこからフーリエ変換は、近代から現代にいたる物理学の中でも、重要な数学のひとつとなったのです。

 デジタル信号に対応させた「離散フーリエ変換」や、コンピューター上の計算に特化させた「高速フーリエ変換」など、時代に応じてアップグレードされています。

 素粒子の挙動を調べるためにも使われるのですから、すごいものです。

 ナポレオンの時代の人の研究が現在への文明を支えているというのは、なんだか感動的ですね。

 今回も読んでくださり、ありがとうございます。

 それでは失礼いたします。
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