第2話

文字数 727文字

「これ、姉ちゃんの仕業?」
 九月上旬から見かけるようになった「怪紹者新事業立ち上げ」と題された記事。それをプリントアウトした紙を見せると、予想通りの反応が返ってきた。
「いや、違うね。……お、誤字発見」
 記事では「怪招者」の「招」が「紹」になっていた。「怪人を紹介する」という意味で捉えるなら、間違ってはいない。一応、派遣会社みたいなことやってるし。
「ちなみにこれ、やれって言われたらできる?」
「できるよ。私でいうと、『終わりなき楽園』系統だね。現実でやるには、……あ。『再構築』でいいか。えらいなぁ、ちゃんと調べてる」
 敵をほめてどうすんだ。
 『終わりなき楽園』とは、幻術を利用した認識改変術式の一つだ。対象の夢に干渉し、理想の世界に閉じ込める。使い方によっては悪用もできる為、扱うには専門の資格が必要となる。
 ちなみに『終わりなき楽園』というのは正式名称ではなく、姉がそう呼んでいるだけ。個人で使う時の技名みたいな感じだと思ってくれていい。
「これさ、まだ開始してないなら、こっちで本当にやっちゃうか?」
「えっ?」
「だってさ、見に覚えのないクレームがこっちにくるのは嫌じゃん。それだったら、ねぇ?」
 何が「ねぇ?」だよ。言いたいことはだいたい分かるが、嫌な予感しかしない。
「語るは真実、騙るは虚偽。見せるは真実、魅せるは虚構。さて、お客様のお望みは? この世にあって、当店にないものはございません。必ずや、ご満足していただけると自負しております」
 演技がかった、仕事前の長台詞。これを言ったということは……。駄目だ。完全にスイッチ入った。楽しそうで逆に怖い。
 嘘ついた奴、今からでもいいから逃げて。……まぁ、無理だろうけど。
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登場人物紹介

店員さん

性別、女性。

年齢、声から判断すると二十代。

身長、座っているので不明。

誕生日、そんな情報いります?

キャラから一言

「私の個人情報? そんなもの知ってどうするんです?」

副店長

性別、男性。

年齢、二十代後半。

身長、170㎝前半。

誕生日、双子なので、二人ぶん祝ってくれるなら教えます。

キャラから一言「そもそも怪しすぎて、お客さん来ないと思うんだけどな。……ねぇ、店長聞いてる?」

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