第7話

文字数 511文字

 そうした「主張するサボテンラジオ放送局」は、郵便局に私書箱を設置して、リスナーからのハガキを受け付けた。曲のリクエストとともに自分の意見を書いてハガキを送るリスナーたちは、ハガキ職人と呼ばれた。DJもハガキ職人も地下活動とみなされたので、表向きは一般人として生活しているものが、裏ではハガキ職人として鋭い持論を展開していたりした。
 私は、そういった騒ぎとは距離を置きたくて、自分のサボテンラジオ園には国内放送用のサボテンはいっさい置かなかった。私のサボテンたちは相変わらず、あの夏の日と同じように未知の言葉をつぶやき、不思議な音楽を流した。
 そんな中、決定的な事件が起きた。ラディカルな発言で知られていたDJが自宅の場所を突き止められ、暴徒に襲われたのだ。容疑者がサボテンラジオリスナーであったことが報道されると、世論は一気にサボテンラジオ撲滅論に傾いた。得体の知れないものに対して、世間はいつも冷たい。
 折しも、政府が(サボテンではない)ラジオ放送局の設置を認可制で自由化し、民間放送が始まっていた。
 サボテンラジオの放送局は次々になくなり、私書箱は解約され、サボテンは打ち捨てられ、ひっそりと枯れていった。
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