【第17話】 合宿します! (前編)
文字数 3,472文字
楓:
こちら、私のお友達の、
米澤智花(よねざわ ちか)ちゃんです!
蓮李:
おおー! キミが、マネージャーをやってくれるっていう、智花ちゃんだね!
バンビから話は聞いてるよ。
楓:
智花ちゃんは高校時代陸上部で、
駅伝の経験もあるんだよね!
智花:
地元の小さな駅伝で、
距離も2kmぐらいだったので、
全然大したことないんです。
智花:
い、いえ!
私、もともと専門は800と1500で。
みなと駅伝の5km以上もあるコースなんて、とてもじゃないけど無理です! 汗
智花:
それに私、自分が走るんじゃなくて、この7人で頑張ってる今の皆さんを応援したいんです!
智花:
どこまで力になれるか分かりませんが、
精一杯頑張ります! よろしくお願いします。
立花監督:
というわけで、マネージャーも入ってくれたところで。あさってからは、いよいよ合宿だ。
立花監督:
練習メニューを印刷したものを渡すから、確認しておくように。
ヘレナ:
ボス! チョット質問デース!
合宿中、トラックの練習はないのデスカ?
柚希:
あ、ホントだ。
これって全部ロードのメニューよね?
立花監督:
あーうん、そうそう、そのことなんだけど。
あのあたり一帯の競技場が、この時期はもうどこも予約が埋まってるみたいで……。
そのー、トラックが借りられなかった。
蓮李:
どうしよう……。私は9月に入ってすぐ日本インカレがあるのに……。
柚希:
そうですよー! 私達はまだ良くても、試合が控えてる蓮李センパイは……。
立花監督:
いやー、そこは本当にスマン!
……あぁでも! 月末の岐阜合宿のほうはトラック取れたから。そこでなんとか調整しよう。
立花監督:
よーし! 荷物は全部乗っけたな?
柚希と心枝と楓は、こっちの車で。
蓮李と朝姫とヘレナと智花は、咲月さんの車に乗せてもらって、俺の後ろからついてきてくれ。
大学が夏休みに入り、
私たちアイリス女学院大学駅伝部は、今日から約2週間、茉莉先輩のお父さんが所有する別荘を借りて、合宿をすることになりました。
茉莉の父:
いいかい? 茉莉。
せっかく来てくれるお客様に
掃除をさせてはいけないよ!
と言われているそうで、茉莉センパイは先に着いて掃除をしてくれているそうです。
立花監督:
……ん?
なんかさっきから妙に静かだけど、
楓、寝ちゃったのか?
心枝:
あ、ほんとだ。うふふ。
バンビちゃん、竹馬抱えながら幸せそうに寝てるよ? 可愛い〜。
柚希:
みんなでお泊まりするのが楽しみすぎて、昨日寝つけなかったらしいですよ?
(カシャッ。寝顔、後でグループメッセでみんなに送ってあげよ! カシャッ。)
警備員:
どうもすみません。
ご不便をおかけしますー。
立花監督:
(しゃーない。回り道して行くしかないかー。)
追いかけてくる人影に気づき、立花は車を止めた。
トレーニングウェアを着たスラッとした体格の女性で、身長は170近くはあるだろうか、かなり高いように見えた。
???:
あああ! よかったーーー!
やっと人が通った!
この辺の方だったりしますか?
立花監督:
まぁ、一応地元といえば地元だけど。
……どうしたんですか?
???:
いやぁー、あの、私。
このあたりの”蓼科なんちゃら研修センター”みたいな名前の宿舎に戻りたいんですけど、道が分からなくなってしまって。
立花監督:
ふーむ。蓼科(たてしな)って言ったら、
僕らが泊まる所のすぐ近くだけど、
さすがにその建物までは知らないな。
ヘレナ:
キャプテン! しっかりしてクダサーイ!
ゴールはまだ先デース!
咲月:
ごめーん! 蓮李、車弱かったのね。
私、運転荒いってよく言われるから……。監督のほうに乗せてもらえばよかったね。
朝姫:
(それにしても、やけに話し込んでるな……何話してるんだろう?)
……ん?
柚希:
ありゃ!
なんかいっぱい候補が出てきましたよ?
???:
うーーん、どれだろうー? 困ったなぁー。
……ん?
???:
あのーーー。お願いなんですが。
その、蓼科ってあたりまで乗せていってもらえませんか?
立花監督:
え、それは構わないけど、場所が分からないんじゃないの?
???:
近くまで来れば、たぶん景色を覚えてると思うので……。
立花監督:
ああ、そういうことなら。こんな山道でこのまま迷子ってのも心配だし。……みんなもいいよな?
迷子の白鳥さんを救出☺️
私たちと目的地が近いっぽい(?)から
途中まで送っていくみたい!
執事:
お嬢様、そろそろいったん、ご休憩にいたしましょうか。こちら、冷たい麦茶でございます。
黒田:
私、黒田っていいます。
みなさんは、ホント、命の恩人です!
は〜、車内すずしい〜。
柚希:
えぇっ、偶然!
私たちもそうです! 駅伝部です!
柚希:
そうですよ。さっきそう、自己紹介してくれたじゃないですか!
立花監督:
違う違う、そうじゃない!
黒田さんって、去年みなと駅伝の1区走ってた、デルフィ大の黒田さんだよね?
立花監督:
いやいやご謙遜を〜!
去年1区でローズ大エースの姫路に次ぐ区間2位だったんだよ!
(あ、あと俺、お兄さんじゃなくて、一応監督ね。)
柚希:
私たちもこの間、予選を勝ち上がって、
今年のみなと駅伝に出るんです!
黒田:
おお、そうなんだ!
じゃあそこでもまた会えるね。
黒田:
(なんなのかしら、この可愛い子は……!)
(さっきからミラー越しに気になって、チラチラ見ちゃってたんだけど、はぁ〜、直に見るとより一層可愛いわ〜。)
(天使なの? それとも妖精なの?! ねぇ、私にしか見えない妖精なの?!)
(そして可愛さに気を取られて今まで気づいてなかったけど、あなたの抱えてるそれは何!? 竹!? どうして竹!? あーもう、何から何まで可愛い!!)
柚希:
はい、もちろん!
ウチの期待の1年生なんです!
楓:
ん、んん。……あっ、すみません、私寝ちゃってましたか?
立花監督:
こんな揺れる山道なのに
気持ち良さそーうによく寝てたよ笑
もうすぐで着くそうだから、
そろそろ起きといてな。
黒田:
(ああ、もうなんなの! 可愛すぎ! もう犯罪よ! あなたの可愛さは!! )
黒田:
(はぁ〜〜〜もうあなたは、どこまで私の理性を狂わせるの!? 弄ぶの!? 無理ッ! 尊い! んんんーーー尊すぎる!)
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