3 花穂の恋心【微R】
文字数 1,638文字
「な、なあ。痛くないの?」
”凄くきついけど”と不安そうな声で問う奏斗。
「大丈夫。ゆっくり挿 れて」
彼の首に腕を絡め、その体温を感じる。ここでやめさせたら、この先チャンスを失うに違いない。
指で慣らしてくれたものの初めてはきつい。
「んん……」
痛みに耐えながらぎゅっと抱き着けば、彼が優しく抱きしめてくれた。
たっぷりと時間をかけ、ようやく奥までたどり着いた彼はホッとした顔をしため息をつく。
「女性って……こんな大変なの」
と彼。
その言い方が”初めて”であることを証明していた。
「初めてだから」
と花穂。
奥がジンジンする。
「え?」
花穂の言葉に驚いた奏斗が固まった。
「わたししたことないの」
ニコッと笑うが、もどかしさにきゅっと奥が閉まる。
「えっと……良かったの?」
それは”俺で”という意味だろう。女性の初めては特別なもの。彼はそう思っているに違いない。
だが彼の言う”特別”は一般の男が想像している”特別”とは違うと感じた。
女性にとって初めての性経験はその後の人生に影響する。
愛のない間柄なら、男性の愛を信じることはできなくなるだろうし、愛の存在を感じなくなるだろう。もしかしたら異性が苦手になるかもしれない。
男性にとっては本来の価値観が影響するので、初めての経験が新たに影響を及ぼすのは相手からの反応によるものの可能性は高いだろう。
下手だと言われて傷つけばEDになるかもしれないが、そもそも男性の性欲は”愛がある関係”かつ”子を成したい”と相手が感じない限り、そんなに重要視されないと思われる。
男性が軽視されるのは、性交が愛と直結しない生き物だから。それは本能であり、愛があるかどうかは言葉ではない。相手を大切にしているかどうかは行動に出るもの。
ただし、愛を知るもの同士がくっつくかどうかは人それぞれ。
それは異性愛も同性愛も変わらないだろう。
「奏斗がいいの。ねえ、動いて」
「うん」
複雑な表情を浮かべていた彼が花穂の要望通り腰を引く。
彼の瞳には後悔の色。
奏斗はこんなこと望んでいなかったのかもしれない。そう感じたが、放してあげることはできなかった。
さらりとした彼の髪に手を伸ばす。自分は奏斗のことが好きだが、彼は自分を愛してくれることはないだろう。そう思うと胸の奥がズキンと痛む。
初めての交わりの日から、罪悪感を持たせたくないと何度も求めているうちに、彼は少しずつ慣れていったのだ。
──わたしは間違っている。
そんなこと自分が一番知っていたはずなのに。
期間限定のおつき合いが終わりを告げ、花穂は何もやる気が起きなくなっていた。好きな人と一緒にいるだけでどれだけ幸せを感じられるのかに気づく。
「ねえ、白石くんは元気?」
義弟と続いていると思っていた花穂は別れて半年以上たったころ、何気なく義弟に尋ねた。
「取ってる講義が違うから、あまり会う機会がないかな」
と彼。
「え? つき合ってるんでしょ?」
「いや……恋愛につかれたからしばらく一人になりたいって言うから高校卒業頃に別れたよ」
それはいつかは戻るという約束なのだろうか。
すこし羨ましくもある。
「そのうちヨリ戻すってこと?」
「どうかな、俺は好きだけど。最近、女の子と一緒にいるところをよく見かけるって噂だしさ」
彼女できたのかもね、と義弟。
どうしてそんなにあっさりしていられるのか理解に苦しむが、義弟がつき合っていた相手は奏斗だけではない。
自室に戻るとメッセージアプリを起動する。消せないままの彼のID。
拒否されているとは思い難いが、連絡先が消されていたり変わっている可能性はあった。
「愛花先輩なら、奏斗の近況知っているかしら」
──会いたい。
でも、彼女ができたならわたしはきっと邪魔よね。
同じ構内にいるものの、大学は人探しも楽ではない。会おうと思って簡単に会える場所ではない。それはこの半年、構内ですれ違うことがなかったという事実が証明していた。
だが再会は意外な形で訪れたのだった。
”凄くきついけど”と不安そうな声で問う奏斗。
「大丈夫。ゆっくり
彼の首に腕を絡め、その体温を感じる。ここでやめさせたら、この先チャンスを失うに違いない。
指で慣らしてくれたものの初めてはきつい。
「んん……」
痛みに耐えながらぎゅっと抱き着けば、彼が優しく抱きしめてくれた。
たっぷりと時間をかけ、ようやく奥までたどり着いた彼はホッとした顔をしため息をつく。
「女性って……こんな大変なの」
と彼。
その言い方が”初めて”であることを証明していた。
「初めてだから」
と花穂。
奥がジンジンする。
「え?」
花穂の言葉に驚いた奏斗が固まった。
「わたししたことないの」
ニコッと笑うが、もどかしさにきゅっと奥が閉まる。
「えっと……良かったの?」
それは”俺で”という意味だろう。女性の初めては特別なもの。彼はそう思っているに違いない。
だが彼の言う”特別”は一般の男が想像している”特別”とは違うと感じた。
女性にとって初めての性経験はその後の人生に影響する。
愛のない間柄なら、男性の愛を信じることはできなくなるだろうし、愛の存在を感じなくなるだろう。もしかしたら異性が苦手になるかもしれない。
男性にとっては本来の価値観が影響するので、初めての経験が新たに影響を及ぼすのは相手からの反応によるものの可能性は高いだろう。
下手だと言われて傷つけばEDになるかもしれないが、そもそも男性の性欲は”愛がある関係”かつ”子を成したい”と相手が感じない限り、そんなに重要視されないと思われる。
男性が軽視されるのは、性交が愛と直結しない生き物だから。それは本能であり、愛があるかどうかは言葉ではない。相手を大切にしているかどうかは行動に出るもの。
ただし、愛を知るもの同士がくっつくかどうかは人それぞれ。
それは異性愛も同性愛も変わらないだろう。
「奏斗がいいの。ねえ、動いて」
「うん」
複雑な表情を浮かべていた彼が花穂の要望通り腰を引く。
彼の瞳には後悔の色。
奏斗はこんなこと望んでいなかったのかもしれない。そう感じたが、放してあげることはできなかった。
さらりとした彼の髪に手を伸ばす。自分は奏斗のことが好きだが、彼は自分を愛してくれることはないだろう。そう思うと胸の奥がズキンと痛む。
初めての交わりの日から、罪悪感を持たせたくないと何度も求めているうちに、彼は少しずつ慣れていったのだ。
──わたしは間違っている。
そんなこと自分が一番知っていたはずなのに。
期間限定のおつき合いが終わりを告げ、花穂は何もやる気が起きなくなっていた。好きな人と一緒にいるだけでどれだけ幸せを感じられるのかに気づく。
「ねえ、白石くんは元気?」
義弟と続いていると思っていた花穂は別れて半年以上たったころ、何気なく義弟に尋ねた。
「取ってる講義が違うから、あまり会う機会がないかな」
と彼。
「え? つき合ってるんでしょ?」
「いや……恋愛につかれたからしばらく一人になりたいって言うから高校卒業頃に別れたよ」
それはいつかは戻るという約束なのだろうか。
すこし羨ましくもある。
「そのうちヨリ戻すってこと?」
「どうかな、俺は好きだけど。最近、女の子と一緒にいるところをよく見かけるって噂だしさ」
彼女できたのかもね、と義弟。
どうしてそんなにあっさりしていられるのか理解に苦しむが、義弟がつき合っていた相手は奏斗だけではない。
自室に戻るとメッセージアプリを起動する。消せないままの彼のID。
拒否されているとは思い難いが、連絡先が消されていたり変わっている可能性はあった。
「愛花先輩なら、奏斗の近況知っているかしら」
──会いたい。
でも、彼女ができたならわたしはきっと邪魔よね。
同じ構内にいるものの、大学は人探しも楽ではない。会おうと思って簡単に会える場所ではない。それはこの半年、構内ですれ違うことがなかったという事実が証明していた。
だが再会は意外な形で訪れたのだった。
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