第６１話 求められる打開策
文字数 2,035文字
俺は両手の爪を擦り合わせながら突進する。
耐久性がちょっと心許ないが、いくらでも生えてくるので構わない。
こいつの刺突でウイルスを打ち込んでやろう。
エレナが俺に合わせてゴーレムに接近しようとしていた。
それを視線で制する。
ここから先は周りに被害が出る攻撃手段を取るつもりだった。
エレナに被害が出ないようにする余裕がないかもしれない。
症状ブーストで強化しているから、よほどのことがない限りは死なせないとは思うけどね。
念には念を入れておいた方がいい。
俺としては少し離れた地点から、必要な時だけ加勢してくれるだけでもありがたかった。
ここぞというタイミングで仕掛けてくれると最高だ。
ゴーレムと俺たちを比較した場合、最大のアドバンテージは人数差である。
常に二人で攻め立ててその優位性を活かすのもいいが、俺がゴーレムの隙を作った際に確実に突いてくれるように待機していてほしい。
その布石として、エレナにだけ隠密系の症状も追加で発症させておいた。
こちらの考えを汲んでくれたらしく、エレナは小さく頷いて適度な距離で止まる。
いい子だ、ちゃんと冷静になれているね。
現状における一番の悪手はパニックになって闇雲に無意味な突貫を敢行することだ。
その点、エレナはしっかりと周りが見えており、自身の力量やできることを理解している。
本当にどうして他の冒険者は彼女を仲間にしなかったのやら。
実に勿体ないと思う。
エレナの動向に注意がいった隙に、ゴーレムが青髪を揺らしながら跳びかかってきた。
かなり素早い。
しかも、左右の前腕から仕込み刃を展開した状態だ。
それで俺を切り裂くつもりか。
迎撃するために俺が身構えたのと同時に、ゴーレムが口を開ける。
その喉奥に集まる魔力。
目を凝らすと小さな魔法陣が見えた。
（斬撃と思ったら魔術か……！？）
俺は慌てて【防刃毛Ⅰ】【黒棘毛Ⅰ】を発症する。
体表にごわごわとした硬い毛が生える感覚。
鎧だけでは防御ができない気がしたのだ。
こちらの準備が整った直後、ゴーレムの口から無数の水の弾丸が放たれる。
「うっ、ぐ……」
散弾のように発射されたそれらが、正面にいた俺を容赦なく打った。
装備した鎧がベコベコと音を立ててひしゃげ、さらには穴が開く。
ただし鎧の内側の黒毛までは貫けなかったようで、鈍痛だけが全身のあちこちに襲いかかる。
これでもまだマシな方だろう。
（ちゃんとお礼をしてやらないと、なッ）
俺はまだ空中にいるゴーレムに爪を突き出した。
左手の爪が隠し刃で弾かれる。
爪は半ばほどで折れ飛んだ。
ほぼ同時に右手の爪で斬りかかるも、同様にもう一方の隠し刃で絡め取られて破壊される。
肘から先が千切れかけているとは思えない動きだ。
パワーも衰えた感じがしない。
破損具合は関係ないのだろうか。
ゴーレムはおもむろに足を振り上げた。
顔面を狙った踏み付けが来る。
俺の攻撃はこれで終わりと判断したらしい。
甘い、甘すぎる。
チートウイルスを舐めてもらっては困るな。
俺は先ほどのゴーレムのように大きく口を開け、症状を選択した。
口内からぶちまけたオレンジ色の液体が、迫るゴーレムの片脚にかかる。
異臭と共に白煙が上がった。
片脚は表面が溶けて、破損した内部機構が剥き出しになる。
ゴーレムは俺を蹴飛ばして後方宙返りで距離を取った。
やつは十メートルほど先に音もなく着地する。
その立ち姿は片脚の損傷で傾いていた。
ノーリアクションなのが惜しい。
どうせなら悔しがったり、痛がる表情が見たかった。
（今のはそれなりに効いたようだね……）
使った症状は【酸液分泌Ⅱ】である。
特製の強酸をお見舞いしてやった。
吐き出した液体で攻撃されたのでちょっとした意趣返しをしたのだ。
ちなみに強酸には【肉体操作Ⅱ】で俺の血液も混ぜてある。
俺は破損したゴーレムの片脚に注目した。
＞症状を発現【魔鋼装甲Ⅰ】
＞症状を発現【術式理解Ⅰ】
＞症状を発現【分析Ⅰ】
＞症状を発現【属性補強Ⅰ】
＞症状を発現【補填機構Ⅰ】
ウイルスが強酸でやられないかと心配だったが、なんとか感染できたようだ。
自分の攻撃だから問題なく混入できたのだろうか。
よく分からないけど、好都合なので良しとする。
ただし感染させたウイルスは、やはりゴーレムの体内で消滅してしまった。
免疫的な機能は健全らしい。
もう少し弱らせた方がいいのかな。
このまま攻撃を続けたら完全に破壊してしまいそうなのが怖い。
ようやく見つけた新しい肉体候補が潰れるのはマズい。
なんとなく負けない気がしてきたので、そろそろボディー確保を優先していこうかな。
どうにかして感染状態を維持しないとね。
耐久性がちょっと心許ないが、いくらでも生えてくるので構わない。
こいつの刺突でウイルスを打ち込んでやろう。
エレナが俺に合わせてゴーレムに接近しようとしていた。
それを視線で制する。
ここから先は周りに被害が出る攻撃手段を取るつもりだった。
エレナに被害が出ないようにする余裕がないかもしれない。
症状ブーストで強化しているから、よほどのことがない限りは死なせないとは思うけどね。
念には念を入れておいた方がいい。
俺としては少し離れた地点から、必要な時だけ加勢してくれるだけでもありがたかった。
ここぞというタイミングで仕掛けてくれると最高だ。
ゴーレムと俺たちを比較した場合、最大のアドバンテージは人数差である。
常に二人で攻め立ててその優位性を活かすのもいいが、俺がゴーレムの隙を作った際に確実に突いてくれるように待機していてほしい。
その布石として、エレナにだけ隠密系の症状も追加で発症させておいた。
こちらの考えを汲んでくれたらしく、エレナは小さく頷いて適度な距離で止まる。
いい子だ、ちゃんと冷静になれているね。
現状における一番の悪手はパニックになって闇雲に無意味な突貫を敢行することだ。
その点、エレナはしっかりと周りが見えており、自身の力量やできることを理解している。
本当にどうして他の冒険者は彼女を仲間にしなかったのやら。
実に勿体ないと思う。
エレナの動向に注意がいった隙に、ゴーレムが青髪を揺らしながら跳びかかってきた。
かなり素早い。
しかも、左右の前腕から仕込み刃を展開した状態だ。
それで俺を切り裂くつもりか。
迎撃するために俺が身構えたのと同時に、ゴーレムが口を開ける。
その喉奥に集まる魔力。
目を凝らすと小さな魔法陣が見えた。
（斬撃と思ったら魔術か……！？）
俺は慌てて【防刃毛Ⅰ】【黒棘毛Ⅰ】を発症する。
体表にごわごわとした硬い毛が生える感覚。
鎧だけでは防御ができない気がしたのだ。
こちらの準備が整った直後、ゴーレムの口から無数の水の弾丸が放たれる。
「うっ、ぐ……」
散弾のように発射されたそれらが、正面にいた俺を容赦なく打った。
装備した鎧がベコベコと音を立ててひしゃげ、さらには穴が開く。
ただし鎧の内側の黒毛までは貫けなかったようで、鈍痛だけが全身のあちこちに襲いかかる。
これでもまだマシな方だろう。
（ちゃんとお礼をしてやらないと、なッ）
俺はまだ空中にいるゴーレムに爪を突き出した。
左手の爪が隠し刃で弾かれる。
爪は半ばほどで折れ飛んだ。
ほぼ同時に右手の爪で斬りかかるも、同様にもう一方の隠し刃で絡め取られて破壊される。
肘から先が千切れかけているとは思えない動きだ。
パワーも衰えた感じがしない。
破損具合は関係ないのだろうか。
ゴーレムはおもむろに足を振り上げた。
顔面を狙った踏み付けが来る。
俺の攻撃はこれで終わりと判断したらしい。
甘い、甘すぎる。
チートウイルスを舐めてもらっては困るな。
俺は先ほどのゴーレムのように大きく口を開け、症状を選択した。
口内からぶちまけたオレンジ色の液体が、迫るゴーレムの片脚にかかる。
異臭と共に白煙が上がった。
片脚は表面が溶けて、破損した内部機構が剥き出しになる。
ゴーレムは俺を蹴飛ばして後方宙返りで距離を取った。
やつは十メートルほど先に音もなく着地する。
その立ち姿は片脚の損傷で傾いていた。
ノーリアクションなのが惜しい。
どうせなら悔しがったり、痛がる表情が見たかった。
（今のはそれなりに効いたようだね……）
使った症状は【酸液分泌Ⅱ】である。
特製の強酸をお見舞いしてやった。
吐き出した液体で攻撃されたのでちょっとした意趣返しをしたのだ。
ちなみに強酸には【肉体操作Ⅱ】で俺の血液も混ぜてある。
俺は破損したゴーレムの片脚に注目した。
＞症状を発現【魔鋼装甲Ⅰ】
＞症状を発現【術式理解Ⅰ】
＞症状を発現【分析Ⅰ】
＞症状を発現【属性補強Ⅰ】
＞症状を発現【補填機構Ⅰ】
ウイルスが強酸でやられないかと心配だったが、なんとか感染できたようだ。
自分の攻撃だから問題なく混入できたのだろうか。
よく分からないけど、好都合なので良しとする。
ただし感染させたウイルスは、やはりゴーレムの体内で消滅してしまった。
免疫的な機能は健全らしい。
もう少し弱らせた方がいいのかな。
このまま攻撃を続けたら完全に破壊してしまいそうなのが怖い。
ようやく見つけた新しい肉体候補が潰れるのはマズい。
なんとなく負けない気がしてきたので、そろそろボディー確保を優先していこうかな。
どうにかして感染状態を維持しないとね。
