第2話

文字数 1,098文字

決死の思いで姉キツネは、町に下りて来ました。
うまい事、人間の女に化ける事もできました。
陽が落ちた町は家々に明かりが灯り、怖い人間の町が不思議と穏やかに感じました。

女に化けた姉キツネは、
ひと気のない雪道をキョロキョロと警戒しながら薬屋を探していました。
妹に薬を飲ませなきゃ、絶対に持って行かなきゃと その強い思いだけで不安や恐怖と戦い 
震える足を前に前に出していたのです。

あっあれだわ!
見つけた!確かに薬屋だわ!薬屋だわ、、、
あーどうしよう、どうしよう、私に出来るかしら
人間を騙すなんて、、、どうしよう、、、
怖いわ、怖い、、、
姉キツネは薬屋の玄関前に立ち止まり 
凍ってしまったように動けなくなりました。

すると薬屋の店の中から、おじさんがこちらに向かってくるではありませんか。
姉キツネは大声を上げてその場から逃げ出したくなりました。
でも苦しそうな妹の顔が頭をよぎり、どうにか
踏みとどまる事が出来ました。

おじさんは店の入り口のカーテンを閉めようとしていたのですが、店の前に女の人が立っている事に気がつきました。
ガラスの扉を開け
「もう、店を閉めますが家にご用でしたかな?」
「あっあっあっあのー薬を、、
薬が欲しいんです。薬が欲しいんです」
「あーはいはい、どんな薬ですか?何でもありますよ」
「熱が出て、喉が痛そうで、咳がでていて、、」
「あーそれは風邪でしょうね
風邪が大流行りですから気をつけないと
お子さんですか?」
女の人は小さく頷きました。
それからおじさんは 薬がたくさん並んでいる棚から、1つの箱を取り出し机の上に置きました。
「はい、この風邪薬で大丈夫だと思いますよ」
女の人はチラチラと入って来たドアを見ながら、ポケットから金を出し 薬を受け取りました。
薬屋のおじさんは、落ち着きのない女の人を
見て 子供の容態が余程悪いのかもしれないなと思っていました。

女の人がくるりと背を向けたので
お大事に。と言いかけたその時
おじさんの目が飛び出るかと思う程の
ビックリ目玉になりました。
なぜなら女の人が振り向いた瞬間に
ズボンのお尻からフワフワのシッポがでていたのです。
おじさんは腰を抜かしそうになりました。
えーーーえーーーえ➖➖➖➖➖➖
(なんだ!なんだ!なんなんだ!、、、、、!
キツネだ!キツネが化けてやがる!
って事は!さっきの金は偽物だって事か!)

おじさんは少し冷静を取り戻しました。
このおじさんは、趣味で狩猟もしていたのです。
このまま、キツネを帰すのは惜しいもんだ。
おっかあが、「キツネの襟巻き」を欲しがっていたな。おじさんは良い考えを思いつきました。
細面の女の人が店のドアに手をかける瞬間に
優しげに声をかけました。
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