第51話 戦いの後の受難

文字数 7,662文字

 リリエはゆっくりと立ち上がる。まだふらつきはするが、全線で戦っていたわけではない。ほぼ無傷だ。
 何よりステルベンが――自分の父が、大切なことを伝えようとしているのに力なく座ったままではいけないと感じたからだった。
「何でしょうか、お父様」
「お前は人間とともにありたいのか? あの……お前を僻地に閉じ込めた男と」
 父の言葉に、見た目だけは少女にしか見えない半妖精は、ゆっくりとかぶりをふった。
「……ファルクは私を閉じ込めたりしていないわ」
 孤独に暮らしてきたのは確かだ。しかし彼女は誰に強制されてもいない。監視はつけられていなかった。逃げようと思えばいつでも逃げられた。それでもリリエはファルクのために、地下に捕らわれ続けたリューゲのために、逃げなかった。
 それに、僻地で暮らしていた日々でも、そう悪い扱いは受けていない。リリエは基本的に一人では何の力もないのだ。初めは更けない彼女に薄気味悪そうにしていた使用人や護衛も、次第になれて空気のように日々を過ごすようになっていた。
 平和だった。不幸は何も起きなかった。その足一つで逃げられる、鳥籠ですらない場所だった、
 彼女は選ぶことができたのだ。人を捨ててスヴァルトの父と共に行くことも、いつでも許されていた。選択肢として頭の端にありながらも、ついに実行することはなかった。
 そこに手紙だけでひっそりと親交を続けていた、ファルクへの想いがあったことは否定しない。
「お前はあの手紙を読んだか?」
「え? あの……母上の手紙ですか?」
「そうだ。あれにはお前のことも書いてあった。お前に、どちらの側で生きるか選ばせろと。私が聞くまでもなく、お前は人間を選んだ。違うか?」
「確かに……私は人間を選びました、けれど……」
 それで、リリエが人の中で生きられるわけではない。寿命が違うのだ。ファルクともいつか死に別れることになる。ステルベンが母と死に別れたように。命の長さが違うのだ。
「あれはお前の身を案じ、人間としても早すぎる旅立ちだったことを詫び、そして永遠でも冥府で待つと、そう手紙に書きつけていた」
「そう……母様が」
 リリエがまだ自分が長すぎる寿命を自覚しない幼少の頃に、母は死んだ。誰のせいでもなく、病気で。その頃から、彼女はリリエが人とは時間がズレていくことを予期していたのかもしてない。
「――だから、私はお前を呪う」
「……え?」
 予期せぬ言葉に、リリエは目を瞠った。
 ステルベンは微笑んでいる。あの、無愛想で娘にも笑顔のひとつすら見せたことのない父親が、何故かこんな酷い言葉を吐きながら、優しく笑っている。
「お前があの男を想うのでも、別の男を選ぶのでも構わない。お前を、お前に連なる全ての子孫を、俺は生涯をかけて呪いつづけよう」



 ――お前は必ず孤独になるだろう。
 アローは暗い世界に独りでいた。周りには誰もいない。慣れ親しんだ煉獄の炎も、ここにはない。
(ここはどこだろう?)
 ぼんやりと考える。自分が何をしていたのかよく思い出せない。
 竜を封印するために戦って、ヒルダが走っていく背中を見送って、それから。
 どうして自分がこんな暗闇の中に置き去りにされているのか、思い出せない。全てが終わって、あの暗い洞穴のそこで皆眠ってしまったのだろうか。
(僕は本当に、最善を選べただろうか)
 あんな風に皆を危険な目に合わせなくても済む方法があったのではないだろうか。
 だから、今自分はこの闇の底に独りでいるのではないだろうか。
「大丈夫」
 声が聞こえる。
「任せて、大丈夫だよ」
 手を引かれる。暖かな手。太陽のような金色の髪。その微笑み。
 彼女は――。



「……ヒルダ?」
 目を開く。ヒルダが心配そうな顔で覗きこんでいる。
「あ、アロー。気づいたの? よかったぁ、また三日半眠りっぱなしだったらどうしようかって思っちゃった」
「…………竜は?」
「倒した!」
「………は? ………本当に?」
「何とびっくり、本当です。あんまり報告書に書きたくない倒し方だったけど」
「……………………どんな?」
「体中の穴と言う穴に剣とか矢とか突き刺す感じ? ギルさんが何をやったのかは言わないでおくね?」
「察した。そうか……古代竜にも、あるのか」
「あるらしいわ」
 リントヴルムを倒した時の彼の戦法を思い出し、アローは遠い目になった。まさか竜の方も尻の穴から攻撃されるとは思わなかっただろう。
「まだ熱があるみたいだから、アローはそのまま休んでて。最低でも三日くらいは安静にしていてって治癒術師さんが。夕方にまた治療に来てくれるから」
 夕方ということは、恐らく眠り込んでいた時間は半日強と言ったところだろう。枯渇するまで魔力を使い尽くしたことを考えればなかなかの回復ぶりだ。治癒術師が診てくれたということは、辺境伯ファルクが教会から治癒術師と医師を呼んでくれたのだろう。おかげでどうにか生きている。
 よく見るとヒルダはあちこちに包帯を巻いたままだ。傷を治癒してもらわなかったのだろうか。
「あ、これ? 私とギルさんは後にしてもらったの。明らかにアローが一番まずい状態だったし。今は近くの街に治癒術師の応援頼んでるって」
「別に僕は死なない程度に後回しでよかったんだぞ」
「死なない程度に回復させてやっとソレなの。大丈夫、酷い傷は私たちもちゃんと先に治してもらってるから。あ、起きれる? 起きれるなら治癒術師さんの置いてった魔法薬があってね」
 自分もまだ傷だらけなのに、ヒルダはくるくるとよく動き回る。寝台近くに据え付けられた棚に薬瓶を取りに行く彼女を眺めつつ、アローは重い身体をどうにか起こした。
「はい、これ」
「………………これ、飲まないとダメかな」
「ダメに決まってるでしょ。珍しいね。アローがあからさまに嫌がるの」
「これ多分、昔、風邪をこじらせた時に師匠が作ったのと同じのだ」
 透明な瓶に入っているのは、新緑の色をした、見た目だけは爽やかな液体なのだが。
「どんな味するの、それ」
「この世のあらゆる苦い草を、消毒液で三日三晩煮詰めたような味がする」
「そ、そう…………」
 ヒルダは飲まずに済んだのだろう。明らかにほっとした顔になっている。
 アローもできれば飲みたくなかったが、この薬がよく効くことはわかっていたので鼻をつまんで一気飲みをする。壮絶なえぐみが口の中で暴れているような気持ち
を味わったが、どうにか飲み下した。
 この薬の唯一の美点は、後味があまりしないことだ。それでもアローとミステルは、師匠がこの薬をちらつかせるたびに怯えた。好き嫌いなく食べよく眠り、健康優良児であることを徹底した。
「…………まさか、治るまでこの薬を飲むはめになるのか」
「お、お疲れ様」
 ヒルダの眼差しが同情めいたものになっている。決して「じゃあ君も飲め」とは言わない。こんな想いをするのは自分だけでいい。悲劇は繰り返さない。
 壮絶な味はともかく、この薬は即効性だ。四肢に重石をつけられていたかのようだったからだが、少しだけ軽くなった。
「そうだ、僕の荷物は?」
「アローの荷物? ここにあるよ」
 寝台脇のかごに入れられていた荷袋の中から、ミステルの遺灰を取り出す。
「ひとまず、ミステルは呼んでおかないと心配をするからな」
「魔力、大丈夫なの?」
「ミステルの維持をするくらいなら、ほとんど魔力は使わない。消耗するほどでもないから大丈夫だろう」
 同じく、寝台脇に立てかけられていた杖を手に取って、アローは呪文を唱えた。
『死を記憶せよ』
 いつだったか三日半も眠りこけてしまったあの時のように、心配した妹が飛び出してきて、大騒ぎをして、それでいつもの日常に戻る。
 そのはずだった。
「……あれ?」
 確かに、アローは呪文を唱えたはずだ。これはミステルの遺灰に間違いないはずだ。それなのに。
『死を記憶せよ』
 もう一度、呪文を唱える。
 しかし、何も起こらない。愛する妹の姿は現れない。
 冷や汗が背中を伝った。まだ身体の調子が悪いせいだ。そう思いたい。だけど、それだけではない予感がした。
 手ごたえがないのだ。魔力が身体の中に戻ってきているのは感じるのに、呪文を唱えてもそれがピクリとも動かない。杖にも、言葉にも、魔力がこもらない。
 一度、目を閉じる。
 そしてまた開く。あの煉獄の紅い世界を見るために。
 だけど、何度目を閉じ開いても、アローの瞳が映すのは寝室と困惑した表情のヒルダの姿だけだ。
 アローの青い瞳は、ずっと青いまま、紅に染まらない。
「どうして……どうして、ミステル……ミステルは!」
 問いかけても、答えは一つしかない。
 ――自分は今、死霊術を使えなくなっている。
「えっ? ちょっとまって、アロー、どういうこと?」
「死霊術が…………使えなくなった」
 魔力が消えたわけではない。擦り切れるほど使い尽くしてまだ一日もたっていないし、体調も万全ではないから微々たる回復ではあるが、ミステルを呼ぶくらいなら問題はないはずだった。
 しかも、媒介となる灰は今手元にあって、遠隔に魔力を飛ばす必要すらない。
「待って、落ち着いて、アロー。今はゆっくり休んだ方がいいってことじゃないかな。ほら、熱も下がりきってないんだし、絶対安静だって治癒術師さんも……」
「違う!」
 声を荒げてから、アローはハッとして口をつぐんだ。ここでヒルダに八つ当たりをしても仕方がない。
「……ごめん、ヒルダ。でも、本当に違うんだ。……僕が前に眠り込んだ時のこと、覚えてる?」
「あ、うん。カタリナさんの事件の後のことだよね」
「あの時、三日半も悠長に眠っていられたのは、僕が無意識にでも死霊を操る癖があったからだ。あの時だって、僕の魔力は枯渇していた」
 つまり、魔力の枯渇があっても死霊術に関しては、アローはほぼ魔力を使わずに発動できるのだ。赤子の頃から無意識に死霊を使っていたのを、魔力によって制御している。
 だからミステルを呼び出せなかったのが魔力の枯渇のせいだったとしても、それでは煉獄の炎が見えなくなったことの証明にはならない。
「つまり、死霊術が使えないのは魔力を使い尽くしたとか、体調不良とかのせいじゃないってこと?」
「むしろ魔力が途絶えたことでこの体質を制御できなくなって、治癒術師を混沌とさせていた可能性の方が高かったな……」
 だが、実際そうはならなかった。死霊術を使っていなくても、アローは何となく死霊の気配くらいは察することができる。今はそれも全くない。
 いくら竜が死んだとはいえ、この城はスヴァルトの故郷の入り口にほど近い場所だ。煉獄の近くにいながら、死霊術が全く使えないなんて、今までのアローだったらありえない。
 原因が考えられるとしたら、スヴァルトの魂召喚か、冥府に長くとどまり過ぎたか。どちらにしても、対処法などわかるはずもない。アローだってどんな危険が待っているかきちんと理解していなかった。
(スヴァルトなら何かわかる……か?)
 そっと契約の対価である左目を抑える。それが合図であったかのように、リューゲが中空に姿を現した。
「呼んだかしら? 私は契約の時に求められた役割を果たしたのだし、あまり軽率に呼びつけないで欲しいものなのだけど」
 そうはいいつつも、律儀に来てくれているのだから、彼女もなかなか人が好い。竜の封印を手伝ってくれたことへの礼のつもりなのかもしれないが。
「……魔力が使えなくても、君は呼べるんだな」
「貴方の小うるさい妹と一緒にしないでくれる? 妖精族は人間とはちがって繋ぐ場所さえあれば器がなくても存在できるの。かつてはあの竜。今は貴方の左目ね」
 肉体が滅びても本質的には死んでいないリューゲは、死霊とは全く別格の存在だ。彼女自身が魔力をもっているから、アローが魔力を使うまでもないのだろう。
「恥を忍んで聞くが、死霊術が使えなくなった。原因に心当たりはないか? このままではミステルが呼びだせない」
「いいんじゃない? そのまま生きれば、貴方は死霊の隣人ではなくなり、真人間になれるんじゃないかしら?」
「リューゲさん、そんな言い方……」
 諌めようとするヒルダに、彼女は白けた顔でそっけなくかぶりを振った。
「人間ごときが黒妖精に意見しないでほしいものね」
 アローが彼女とかわした契約は、常闇竜を封印、または滅ぼすために必要な、スヴァルトの魂の説得と封印の実行。そしてそれはもう完遂されている。彼女はいつアローから左目を抜き取って姿を消してしまっても一向に構わないのだ。
 彼女が「アローが死んでから左目を取る」という条件を加えてくれていたから、今でもアローは契約者のままだ。しかし、これから先彼女に助力を求めるとなると、新しい契約が必要になる。
 逆に言えば、スヴァルトである彼女に協力を取り付けられたら、現状が打開できるかもしれない。
(だって、ミステルがいなかったら僕はなんのために……)
 ミステルはアローにとって生きる意味だ。若くして命を落とした彼女を、死しても共にありたいと、魂の消える時までそばにいたいと願った彼女を、蘇らせたかった。
 不完全でもいい。人間として生き返らせることは不可能だ。それでも、もう一度たった一人の家族である彼女を、死という断絶の向こう側から取り戻したかった。
 そのためだけに、自分の世界の全てであった森を捨てて来たのに。
「リューゲ、もう片方の目でも、腕でも足でも何でも持って行っていい。何とかできないのか?」
 ただ必死で、アローは黒妖精に懇願の眼差しを向ける。ヒルダが何か言いたげに手をあげたが、答えはリューゲの方が早かった。
「そんな契約に、私が乗ると思ったのかしら?」
 それは、彼女にとっては当然の結論。左目だけを対価にしてスヴァルトと契約したのが、奇跡。そう評したのはほかならぬ自分自身だ。そして契約は果たされた。竜は滅んでリューゲもリリエも、もう封印としての役割はない。
 リューゲがアローのために動いてくれる理由など、一つもないのだ。
「…………ミステル」
 ポツリ、と。
 手の甲にしずくが落ちた。一瞬遅れて、自分が泣いているのだと気づいた。
 ――お前は必ず孤独になるだろう。
 まさかそれが、こんな形でだとは思わなかった。死は断絶ではあっても別離ではなく、ミステルはずっとそばにいてくれるものだと、信じ込んでいた。
(師匠があれほど忠告していたのに、僕は……)
 自分の無知が、無力が悔しい。あんなに大切にしていた妹一人も、結局守ってやることができない。
 めそめそと泣いている場合じゃないのはわかっている。それなのに一度せきを切って溢れだした涙は、どうしても止めることができない。
 ヒルダはアローに慰めの手を伸ばそうとして、しかしその手を中空で止める。形だけの慰めでは、何の慰めにもならないと気づいたからだろう。
 かわりに、リューゲに向かって頭を下げる。
「あの、リューゲさん、人間が妖精族に口出しするなんておこがましいって思われるかもしれないですけど、本当に何とかならないんですか? ミステルは私にとっても友人だし……アローにとってのミステルは、リューゲさんにとってのリリエさんみたいなものだと思うから」
「頭を下げられてもねぇ……」
 リューゲは呆れ半分に、残りの半分には困惑を募らせながら、そっとアローの頭に手を乗せた。もちろん、彼女には実体がないから感覚として伝わってはこない。
 しかし、リューゲの方は違った。驚いたように目を見開く。
「何これ…………」
 彼女の声に、泣いていたアローも顔を上げる。リューゲは信じられないものを見る顔でアローを見つめていた。
「えっ、な、何ですかリューゲさん? 何かまずい感じだったり」
「何というか……絡まっているわ、魔術回路が」
「からまって、る?」
 魔術に詳しくないヒルダには全く意味不明だったようで、彼女は首を傾げて悩んでいる。知識がないなりに想像しようと頑張ってみているらしい。
(そうか、魔力の問題じゃなくて、魔術回路か……)
 人間も、妖精族も、聖霊も、恐らく女神と呼ばれる存在さえも。魔力を持つ全ての者は、魔術回路を持っている。これはいわば魔力の導線だ。
 妖精族や聖霊は魂に、人間は魂だけでは維持できないので肉体全体を巡っている。
「僕の死霊術は、魔力と回路を共有していた、ということか?」
「そのようね。死霊術と黒魔術の同時施行、その上長時間冥府に魂を置いていたから、その間にねじれた魔力が回路を歪ませている。今の貴方は、行ってしまえば水路をせき止められている状態ねぇ」
「じゃあ、せき止められたところを治せば元に戻ると?」
「……溜まっていた水が一気に流れたら、洪水で溺れるわよ? 貴方の場合、魔力だけではなく死霊も一緒に暴発するものねぇ」
「それでもいい、ミステルが救えるなら――」
「アロー、ちょっとだけ痛いけど我慢してね」
 バチン、と。
 小気味良い音と共に、一瞬視界が白く消し飛んだ。
 ヒルダに平手打ちをされたからだと気づくまでに、しばらく時間がかかる。
「アロー、ね。冷静になって。ミステルはアローの使い魔。アローが死んだらミステルも使い魔だから一緒に消えちゃうの。わかってる? 死霊術のこと全然わかってない私でも、それくらい把握してるんだからアローがわかってないわけないよね? ミステルを使い魔にしたのはアローなんだから」
 じんじんと痛む頬に手を添える。
 アローはぼんやりと、それに手を添えた。熱い。熱のせいなのか、頬を打たれやせいなのかはわからないけれど。
 涙にぬれた頬の熱さで、ぐちゃぐちゃになっていた頭の中が少しだけ落ち着いてきたように思えた。
「……ごめん、ヒルダ」
「わかればよろしい」
 ヒルダはアローの肩を押して、ベッドに寝かしつける。
「後のことは私とリューゲさんで何とかするので、アローはまず寝る。そしてちゃんと身体を治す。いい?」
「……うん」
「勝手に貴方の仲間にしないでほしいのだけど」
 リューゲはそうぼやいていたが、アローの意識はすぐに泥のような眠りの中に落ちていく。体力も魔力もさほど回復していないのに、泣いてわめけばこうなるのも当然だ。
 ものの数秒で寝落ちてしまったアローの頬を、空中に浮かんだリューゲが据わった目でつつく。もちろん起きない。
「はっきりと言うけど、私にはこの子を助ける義理はないわよ、騎士の小娘ちゃん。ついでにいうと、魔術回路を修復する術なんて黒妖精族には伝わってないし」
「そこを何とか!」
「まぁ、手伝いくらいはしてあげてもいい気分にはなってきたわぁ」
「本当ですか!?
 先ほどまであれだけ塩対応だっただけに、ヒルダは驚いて顔を上げる。
「だって、この子、放っておいたら死にそうじゃない。あっさり死なれたら、せっかくの数百年ぶりの外を満喫できないのよ。何のために破格の契約にしてあげたと思ってるの?」
 返ってきた答えは案外俗っぽいもので、これにはヒルダも苦笑をするしかなかった。
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