少年たちの予感レビュー
文字数 2,000文字
これはNITRODAY「少年たちの予感」のレビューです
文化祭実行委員だったボクとあの子の二人だけの“義理デート”。文化祭の準備から終わるまでの間、ずっと失敗続きで怒られっぱなしのボクを慰めてくれる慰労会。ねぎらい以上デート未満の二人で行った映画館からの帰りの日暮れ時。せっかくの二人で一緒にいられる時間だったのに、交す会話はなぜか弾まなかった。気がつけばお互いの帰宅路への分かれ道。
「今日は映画に誘ってくれてありがとう。とてもうれしかったよ。文化祭ではボクは段取りも要領も悪くて白樫さんには迷惑ばかりかけちゃったね… ごめん。また明日からもよろしく…」
歪な笑顔のボクは慰労のお礼と謝罪をあの子に告げた。そして駅の方へ行くために背中を向けた時、ボクの腕があの子に後ろからつかまれた。ボクが驚いて足を止めて振り返ると、あの子は下を向いたまま震えているようだった。
「ちょっと待って、言っておきたいことがあるんだけど…」
あの子は声まで震えているようだったけど、言い方はとてもはっきりしていた。
「なに言っているの! 一つも山崎君には悪いところなんて無かったじゃない! 全部周りの人たちがいい加減だったんでしょ! それを全部一人で頑張っちゃうなんて… 人が良すぎるんだよ!」
あの子は心に溜めこんでくすぶっていたものを一気に吐き出したように見えた。
「そんなことないよ… ボクの力不足でみんなに迷惑かけないように」
「そう言って全部一人でやろうとするから… 放っておけないんじゃない!」
「わ、わかったよ白樫さん… どうもありがとう」
駅前を行きかう人ごみの中で強く握る手をいつまでも離してもらえないボクは恥ずかしくなってあの子に懇願した。
「だからもう手を離してくれないかな…」
「だから… 私が離さないんじゃない、山崎君が離してくれないんでしょ…」
ボクの耳にはあの子のつぶやき声が聞こえた気がした。
なんていう妄想物語が頭に浮かんでくるこのミニアルバム「少年たちの予感」。予感とは何か“事件”が起こりそうだと前もって感じること。日頃から先行きに漠然とした不安を感じたり、気分がよくて何か良いことが起こりそうな気持ちになることあるよね。
そして特に人を好きになったり恋をしているときなんかには、甘い予感や辛い予感とか色々な予感が次々と湧き上がってくるよね?
このミニアルバムには人を好きになったりしている少年たち、不安な気持ちの日々を送っている少年たちの、“事件”が起こりそうな予感が歌われていると思う。なお、レビューの順番がミニアルバムと異なる点はご了承ください。
まずは、恋を知るまでの先行きの見えない毎日と何かに吸い込まれそうな不安を、静けさの中に時折りアグレッシブさが混ざる曲で表現している「ブラックホール」。タイトなドラムと正確なビートのベースによるグルーブ感、広がりを見せるギターズ、ラップのようにリンスにこだわるボーカル。葡萄のような色彩の豊かさとエグ味を味合わせてくれる。
次に、人とのかかわりを知りつつも必ずしも先が簡単にはいかなさそうな胸騒ぎを元気良く開放感のある曲で表した「ヘッドセットキッズ」。派手めのドラムとベースがうねり、ギターズはシャキシャキにハジけ、ワザとはずしたボーカルもコーラスの時は息をピッタリと合わせる。檸檬のように酸っぱさと苦みが合わさって苦爽やかだ。
そして、やっと恋が叶って噴水のようにあふれ出てくる喜びや嬉しさを止められない気持ちを描き出す「ダイヤモンドキッス」。まるでパレードのようなドラムにデートを楽しむかのようなノリノリベース、恋する感情をそのまま音にしたギターズの印象的なリフとアルペジオ、ダブルボーカルが恋人たちの幸せな気持ちを紡ぎ出す。林檎のような甘さとシャキシャキした感触が心の中で混ざり合う。
怒りや不安に満ちた気持ちをそのまま剥き出しのかたちで表現した、“予感”最後の物語「アンカー」。パワフルなドラムと厚みのあるベース、それとギターズのコードバッキングプレイと自由に音のすき間を縫って動き回るプレイが見事なコンビネーションを見せ、投げやりのようでありながらよくコントロールされているボーカルが花を添える。以上からすると、一見感情のほとばしりに過ぎないように見えるこの曲も実は緻密な計算によることを感じさせる。
このほか、今までの発表曲のライブ演奏をも含む「少年たちの予感」。ファンやマニアはもちろん、これまで聞いたことのない皆さんにも聞いて欲しい。そして、少年たちの予感は少女たちの予感… 女性の方にもぜひ聞いてみて欲しい。たくさんの人に今のNITRODAYを今感じてもらいたい。まずはネットで公開されている動画をご覧になって下さい。
文化祭実行委員だったボクとあの子の二人だけの“義理デート”。文化祭の準備から終わるまでの間、ずっと失敗続きで怒られっぱなしのボクを慰めてくれる慰労会。ねぎらい以上デート未満の二人で行った映画館からの帰りの日暮れ時。せっかくの二人で一緒にいられる時間だったのに、交す会話はなぜか弾まなかった。気がつけばお互いの帰宅路への分かれ道。
「今日は映画に誘ってくれてありがとう。とてもうれしかったよ。文化祭ではボクは段取りも要領も悪くて白樫さんには迷惑ばかりかけちゃったね… ごめん。また明日からもよろしく…」
歪な笑顔のボクは慰労のお礼と謝罪をあの子に告げた。そして駅の方へ行くために背中を向けた時、ボクの腕があの子に後ろからつかまれた。ボクが驚いて足を止めて振り返ると、あの子は下を向いたまま震えているようだった。
「ちょっと待って、言っておきたいことがあるんだけど…」
あの子は声まで震えているようだったけど、言い方はとてもはっきりしていた。
「なに言っているの! 一つも山崎君には悪いところなんて無かったじゃない! 全部周りの人たちがいい加減だったんでしょ! それを全部一人で頑張っちゃうなんて… 人が良すぎるんだよ!」
あの子は心に溜めこんでくすぶっていたものを一気に吐き出したように見えた。
「そんなことないよ… ボクの力不足でみんなに迷惑かけないように」
「そう言って全部一人でやろうとするから… 放っておけないんじゃない!」
「わ、わかったよ白樫さん… どうもありがとう」
駅前を行きかう人ごみの中で強く握る手をいつまでも離してもらえないボクは恥ずかしくなってあの子に懇願した。
「だからもう手を離してくれないかな…」
「だから… 私が離さないんじゃない、山崎君が離してくれないんでしょ…」
ボクの耳にはあの子のつぶやき声が聞こえた気がした。
なんていう妄想物語が頭に浮かんでくるこのミニアルバム「少年たちの予感」。予感とは何か“事件”が起こりそうだと前もって感じること。日頃から先行きに漠然とした不安を感じたり、気分がよくて何か良いことが起こりそうな気持ちになることあるよね。
そして特に人を好きになったり恋をしているときなんかには、甘い予感や辛い予感とか色々な予感が次々と湧き上がってくるよね?
このミニアルバムには人を好きになったりしている少年たち、不安な気持ちの日々を送っている少年たちの、“事件”が起こりそうな予感が歌われていると思う。なお、レビューの順番がミニアルバムと異なる点はご了承ください。
まずは、恋を知るまでの先行きの見えない毎日と何かに吸い込まれそうな不安を、静けさの中に時折りアグレッシブさが混ざる曲で表現している「ブラックホール」。タイトなドラムと正確なビートのベースによるグルーブ感、広がりを見せるギターズ、ラップのようにリンスにこだわるボーカル。葡萄のような色彩の豊かさとエグ味を味合わせてくれる。
次に、人とのかかわりを知りつつも必ずしも先が簡単にはいかなさそうな胸騒ぎを元気良く開放感のある曲で表した「ヘッドセットキッズ」。派手めのドラムとベースがうねり、ギターズはシャキシャキにハジけ、ワザとはずしたボーカルもコーラスの時は息をピッタリと合わせる。檸檬のように酸っぱさと苦みが合わさって苦爽やかだ。
そして、やっと恋が叶って噴水のようにあふれ出てくる喜びや嬉しさを止められない気持ちを描き出す「ダイヤモンドキッス」。まるでパレードのようなドラムにデートを楽しむかのようなノリノリベース、恋する感情をそのまま音にしたギターズの印象的なリフとアルペジオ、ダブルボーカルが恋人たちの幸せな気持ちを紡ぎ出す。林檎のような甘さとシャキシャキした感触が心の中で混ざり合う。
怒りや不安に満ちた気持ちをそのまま剥き出しのかたちで表現した、“予感”最後の物語「アンカー」。パワフルなドラムと厚みのあるベース、それとギターズのコードバッキングプレイと自由に音のすき間を縫って動き回るプレイが見事なコンビネーションを見せ、投げやりのようでありながらよくコントロールされているボーカルが花を添える。以上からすると、一見感情のほとばしりに過ぎないように見えるこの曲も実は緻密な計算によることを感じさせる。
このほか、今までの発表曲のライブ演奏をも含む「少年たちの予感」。ファンやマニアはもちろん、これまで聞いたことのない皆さんにも聞いて欲しい。そして、少年たちの予感は少女たちの予感… 女性の方にもぜひ聞いてみて欲しい。たくさんの人に今のNITRODAYを今感じてもらいたい。まずはネットで公開されている動画をご覧になって下さい。