第5話

文字数 295文字

あの日まで私は、人にバカにされないように生きてきた。

いい大学を出て、いい会社に就職し、出世し、結婚した。

世間がいう“幸せ”というやつをそのままやってきた。

まわりの人たちは、そんな私をうらやんだ。

私は他人と比べて、よい人生を歩んでいる。

だから、私は幸せだった。



そんなある日、見知らぬ子どもが私にこう聞いたのだ。

「おじちゃんがほんとうに大好きなことって、なあに?」

突然不安にかられた。



本当に自分が好きなこととは、なんだろうか。人がうらやむ今の生活が、本当にしたいことだったのだろうか。

急に目が覚めた。

私は誰もがあこがれる私の車にのり、エンジンをかけた。

そして、そのまま崖にとびこんだ。




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