第1話

文字数 629文字

古い祭壇はただの石になり、緑の苔が生い茂っている。

マレナは、冬の寒さと腐敗に覆われたアパートの一室を吹きすさぶ風の中を帰ってきた。彼女は、この常にきらめく腐敗した街を愛していた。腐ったミミズとスライムの包み紙に包まれた色鮮やかなキャンディ。横浜は日出ずる国の中で彼女が一番好きな街だった。モダンなアパートは、彼女が数千年前に住んでいたログハウスとはまったく違っていた。ヴィンテージのフリーマーケットで買った家具、彫刻が施されたワードローブ、ベッド、ソファ、着物を着た黄金色の日本女性の精巧な絵画。マレーナの部屋は冬の寒さとコーヒーの匂いがする。彼女は疲れたようにため息をつき、真っ赤なドレスを揺らしながら、冷たい風をもっと取り込もうと窓際に歩いた。今日は長すぎる一日だった。彼女の基準からしても。

彼は2時間後に帰宅した。コシチェイは廊下の電気をつけておらず、いつも片付けるのを忘れるヒールにつまずいた。舌打ちをしながら苛立ち、夜と紫陽花の甘い香りに包まれた暗い渦の中、彼女の部屋に飛び込んできた。コシチェイのしかめ面は、人間への倒錯した愛で満たされていた。彼は、埃と煤と、マフィアの男たち全員が臭う血の金属臭の輪の中で過ごす毎日を満喫していた。彼は疲れてベッドに腰を下ろし、マロン色の脇腹を手で覆った。マレナは夜の凍えるような匂いを吸い込み、振り向こうともしない。誰かに同情されるのが嫌いなのだ。

- 遅かったわね」彼女は無感情に言う。

彼女は詳しくは言わない。
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