第25話 私たちが何をしたのか
文字数 1,078文字
ひいらにはネット上に書き込みをした覚えがない。ふたばのようにネット上の擬似的な生活とは縁がなさそうな人もいる。いや、ふたばも例外じゃないかも。ふたばはスマホの虜だ。じゃあ執行は?
執行のことはよく分からない。不機嫌なままずっとついてきているが、今大人しくしているのは状況を把握するためだろう。本当は何をやらかしているか分かったものじゃない。
でも、私達が何をしたのか? 悪いことをしているわけじゃない。仮に一つや二つ悪い行いをしているとしてもこんなゲームで人を殺そうとするなんて。
「掲示板では何を話したの?」
少しでも私たちの共通点を見つけたかった。もしかしたらそんなものはないのかもしれないけど。
「天皇って殺したら死刑になるんだよねって話とか、どうやったら交通機関のシステムをハッキングできるかとか。まあ冗談みたいなもんだよ。気にしないで」
悪気のあるような顔ではない。寧ろ爽やかにさえ見えるその顔は、優等生にも見えた。目のくまが疲れた面影を見せるだけだ。
「復讐掲示板って、誰かを殺す話とか普通に出るけど、俺みたいに天皇を狙ってるやつはいなかったよ。天皇ってのが邪魔だとか、天皇って殺したら死刑になる。それでも厭わないとか書いたら本気にした奴がいてさ」
それはどっちにも取れる発言だった。本気にされるような話し方をしたのか、本当に本気にしているのを悟られたのか。犯罪者に会ったことはないけど、直感でこの人は危険だと思った。
目つきも悪いわけではない。ただ心の空虚が見えた気がした。初対面で恥ずかしげもなく、胸が痛むわけでもなく、己のやましい部分をさらけ出す。そして私達の反応を見て楽しんでいる。
「くだらねぇ。しかも天皇暗殺とか」
一人でうろついていた執行が絡んできた。ややこしいことになる。朝月は目を細めただけで何も言わなかったが心の中では嘲笑しているのが目に見えた気がした。この二人は危険人物だが全くベクトルが違う。
「君はナイフを持ってるけど。具体的な人殺しの方法を考えたことないでしょ?」
「やめて。それ以上あの人に言わないで」
執行を刺激するのはまずいと思って朝月レンに訴えたのは、執行よりは話が分かると思ったからだ。確信はないが、頭に血が昇って先に手が出ることはないだろう。
「そうだね。君は助けてくれた。言うとおりにするよ。ここがどこでどんな状況なのか分からないしね。誰に着いていけばいい?」
その言葉にもう一人反応した。
「あたしあたし。ほらスマホがあっちだってやじるしが出てる」
朝月はひいらに支えられた肩をふりほどいて、一人で歩くよと言った。
執行のことはよく分からない。不機嫌なままずっとついてきているが、今大人しくしているのは状況を把握するためだろう。本当は何をやらかしているか分かったものじゃない。
でも、私達が何をしたのか? 悪いことをしているわけじゃない。仮に一つや二つ悪い行いをしているとしてもこんなゲームで人を殺そうとするなんて。
「掲示板では何を話したの?」
少しでも私たちの共通点を見つけたかった。もしかしたらそんなものはないのかもしれないけど。
「天皇って殺したら死刑になるんだよねって話とか、どうやったら交通機関のシステムをハッキングできるかとか。まあ冗談みたいなもんだよ。気にしないで」
悪気のあるような顔ではない。寧ろ爽やかにさえ見えるその顔は、優等生にも見えた。目のくまが疲れた面影を見せるだけだ。
「復讐掲示板って、誰かを殺す話とか普通に出るけど、俺みたいに天皇を狙ってるやつはいなかったよ。天皇ってのが邪魔だとか、天皇って殺したら死刑になる。それでも厭わないとか書いたら本気にした奴がいてさ」
それはどっちにも取れる発言だった。本気にされるような話し方をしたのか、本当に本気にしているのを悟られたのか。犯罪者に会ったことはないけど、直感でこの人は危険だと思った。
目つきも悪いわけではない。ただ心の空虚が見えた気がした。初対面で恥ずかしげもなく、胸が痛むわけでもなく、己のやましい部分をさらけ出す。そして私達の反応を見て楽しんでいる。
「くだらねぇ。しかも天皇暗殺とか」
一人でうろついていた執行が絡んできた。ややこしいことになる。朝月は目を細めただけで何も言わなかったが心の中では嘲笑しているのが目に見えた気がした。この二人は危険人物だが全くベクトルが違う。
「君はナイフを持ってるけど。具体的な人殺しの方法を考えたことないでしょ?」
「やめて。それ以上あの人に言わないで」
執行を刺激するのはまずいと思って朝月レンに訴えたのは、執行よりは話が分かると思ったからだ。確信はないが、頭に血が昇って先に手が出ることはないだろう。
「そうだね。君は助けてくれた。言うとおりにするよ。ここがどこでどんな状況なのか分からないしね。誰に着いていけばいい?」
その言葉にもう一人反応した。
「あたしあたし。ほらスマホがあっちだってやじるしが出てる」
朝月はひいらに支えられた肩をふりほどいて、一人で歩くよと言った。