第3話

文字数 490文字

「お前みたいな人に支えられた人は幸せだろうな。」

そう言ってくれた先生がいた。

上履きをはこうとしていた先生に、肩を貸しただけだったのに。
何を大げさに言っているのだろうと思った。

数年後、それは物理的な支えのことではないと知った。

その頃の私は、みんなが嫌がることを積極的にやろうとしていた。

トイレ掃除、新聞記事作り、学級委員、不登校の子のお世話。
私にとっては嫌なことではなかった。

みんながやりたくないなら、やれる人がやるべきだ。

そこに何かの見返りを求めることなどなかった。

むしろ、学校や先生という目上の人にこびているような自分に嫌な気持ちさえ抱いていた。

自分の本心が分からなくなったのもこの時期だった。

「私に支えられたら幸せ?そんなわけない。」

卒業後も、この言葉が引っかかっていた私は、ずっと考えていた。

先生の言葉を、どう消化すればいいのか分からなかった。

そして、自分の都合のいいように消化しようと思った。

私がいることで、誰かが自信を持つ。
私がいることで、誰かが成功する。

肩を貸すだけではなく、心から支えることで可能になることだ。

きっと先生は、私にはそれが出来ると教えてくれたのだろう。
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