第14話 気まぐれな闘技場

文字数 1,371文字

 魚の干物を齧りながら、ひたすら待っていた。ライノーツの本土は大陸全体でみると然程大きくはないが、それでも周辺の海にある小さな島を幾つも有し、国を複数吸収してきた、大国であり、内包する国の多いレングランドでは国防も簡単ではない。

 それなりに大きい故、国の端から端に行くのには、休みなく歩いて、早足で一月はかかる。とてもではないが、呆けている時ではない。

 それでも待つ必要があった。何故なら止まっていないと集中を欠き、定位置を欠き、非効率だったからである。

より具体的に言うと、闘技場には行った。そして印の場所に行った僕が見た闘技場は、そこだと思っていた酒場の地下の先は、伽藍洞の廃墟と化していた。すぐに酒場で盛っていた人間に聞いた所、場所を移したが移転先は知らないとのことで、そのうちの一人を罠に嵌めた。

どうにも過去に僕がここだと思っていた闘技場は、ここ十年の平和な環境で排除される憂き目にあっていたらしく、

『知っている人間しか知らない。そいつにそこが必要であるなら無理に探らなくても向こうから情報が入ってくるようにと決めたんだよ主催者が。俺は一応知っているが、あんたはそっち側の目をしてねえ。教えるのは無理だ』

ときたもんで、僕は早速そいつに、そいつが崇めている神の幻惑をみせて喋らせた。

 結果わかったのは、闘技場の出入口は移動式のものになったらしい。

 この国だけで1000万は優に超える人口のたった10人弱。そいつらが毎回、目ぼしい場所を決めて、その場限りの闘技場を仕立てるらしい。

 そうして集めた軍資金で更に別の場所に設営する。人間離れしているが、然程驚かなかった。

そこで使った魔法は広域幻惑魔法である。ほぼほぼ幻惑魔法しか使えない僕が考えた策は、不特定多数の人間に幻惑をかけ、隠れた催しがあれば、その場で騒動を起こす、というものだった。なかなか簡単にはいかなかった作戦だが、三日目にしてようやく、情報が入ってきた。

ただしそこからは、馬車で移動しても十日はかかる。そこで開門しようとしていた。

まず地図に幻をかけた。

『常世に在る万物の一つである君にもう制限はない。その実相を顕現し、刹那の世界を作れ。記した位置と位置を繋げてしまえ』

 そうして、待つことどれくらいか。

 日が三回明けてようやく地図が光りはじめた。無理難題をいうと、いくら魔法で得意な部類でも不安が邪魔をして、成功までに時間がかかる。

動かなかったのは、地図に僕という位置——目印を植えつけるため。目印がいちいち動いていたら単純にやりづらいからだ。

 こうして、僕の目の前に地図が作りし幻影の門ができた。

 僕が作って見せている相手(地図)の幻だが、地図は、不特定多数の人間の概念において、世界を示す魔法のアイテムと、思い込みがある限り魔法は成立し実体が出来上がる。この世のどこかに一人でもそんな人がいればいい。地図という物ではなく、地図という概念にかけた幻はこの世の概念にまで幻を発生させ——とにもかくにも、なんとかなったわけだ。

『御託はいいから早く潜れ』

 そう、彼女に言われた気がして、僕は準備も早々に門をくぐる。光に包まれた先、もう一枚扉を開けると――そこは闘技場のまさに闘いの真っ只中であった。

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登場人物紹介

後々記載するにゃ

実は前に出した分を削除してしまったので再投稿にゃ

因みに吾輩は作中で喋る猫として登場するにゃ

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