まばたきするたびに

文字数 405文字

 まばたきするたびに世界は変わる
 詩が行間をまたいで飛躍するように
 フィルムが空白を孕みながら二十四コマを疾走するように

 まばたきするたびに世界は変わる
 さし(はさ)まれた闇のあいだに
 地を這う被造物は粉々に崩れ
 水底の魚群は腐れ落ち
 空高く鳥たちは凍りつく
 仕掛けを使い果たした絡繰り舞台
 ちぎれた糸を
 一刹那で御手(みて)が結い直す
 まばたきのあいだに絶命した世界は
 つかの間の闇をくぐり抜けて生まれ変わる

 まばたきするたびに世界は変わる
 さし挿まれた闇のあいだに
 懊悩する被造物の記憶は薄れ
 こころはふためと見られなくなり
 魂の奥処は荒れ果てる
 花火をあげ尽くした吊り庭園
 しぼんだ草木を
 一刹那で御手が芽吹かせる
 まばたきのあいだに枯死した世界は
 つかの間の闇をくぐり抜けて生まれ変わる

 まばたきするたびに世界は変わる
 転瞬のあいだの
 その奇蹟
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