第2話

文字数 490文字

 初めて音が聴こえたときの感動は忘れられない。さっぱりわからない言葉。心地よいリズムの音楽。
 光る夏雲を眺めながら、何も考えずにずっと耳を傾けていた。
 私が作ったサボテンラジオはよくできていたらしく、近所の子どもたちはもとより、その親や、暇を持て余した老人たちが集まってきた。
 その中に、植物好きで知られたおじいさんがいた。あるときおじいさんは、いつもラジオを聴かせてもらっているお礼にと、自分の庭からサボテンをひとつ持ってきた。私の母は恐縮して、いったんは断ったが、おじいさんはぜひもらってくれと言って、半ば押しつけるようにサボテンを置いていった。
 それから少しして、おじいさんは亡くなった。
 人生で初めて、知っている人を亡くした私は、深い悲しみにくれた。
 おじいさんにもらったサボテンは、私の丸いサボテンとは対照的な細長い姿で、ふたつを並べるとまるで漫才コンビのようだった。
 しばらく「彼ら」を眺めたのち、ふと思いついて、おじいさんのサボテンを私のサボテンラジオに連結してみた。すると、いつもの放送に混じって、あきらかに違う放送が聴こえるようになったのである。
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