終章 そのあと

文字数 8,451文字

終章 そのあと

「いやあひどいもんだった。本当にひどいもんだった。一度であそこまで大量に亡くなった事件は目にしたことがない。おまけにこんな田舎町で、世間を揺るがす大事件が起こるなんて、日本もアメリカ並みになってきたねえ。」

蘭はお茶をずるりとすすった。しばらく、テレビをつけるのもやめたくなるほど、テレビはあの事件の話題で持ちきりだった。富士市内には多くの報道陣が殺到した。それに、紫陽花園が、利用者を拘束して寝かせていたことで、犠牲者の増加につながってしまったことがセンセーショナルに報じられて、これからの知的障碍者施設の在り方も問われる番組も多数制作されたほどである。

「一時は僕らも買いものに出るのをやめなきゃいけないくらい、報道陣がうろうろしていて、もう、困ったもんだったよ。買い物が出来ないことはたまったものではない。」

杉三の感想はまずこれであったらしい。まあ、彼にとっては食料の買い出しができないほどの不便なことはないのかもしれない。

「僕はそれより、生き残った利用者さんのほうが心配だ。とりあえず、紫陽花園は、法人として解散することになっているので、利用者さんたちはご家族の下へ帰ってもらうことになったんだけど、中には引きとれないご家族もいて、何人かは製鉄所で預かっている。しかし、彼女たちは非常に不安定で、毎日毎日てんやてんやの大騒ぎ。」

水穂は、頭の痛い話をした。

「そうか、確かに親が高齢で引き取れないってこともあるよな。事情はあるだろうが、障碍者施設はある意味現代版座敷牢と変わらないっていう青柳教授の言葉も嘘はないな。」

「そうだよ蘭。たぶんきっと、彼女たちはそういう事だけは敏感だと思うので、施設内では常に結託しようという意識はあると思うよ。その仲間が一瞬にして襲撃されるなんて、彼女たちにとっては文字通り、まるで地獄のようなありさまだったんじゃないのかな。不安定になっても仕方ないさ。」

「そんなこと言ったって、お前、その体で大丈夫なのか?」

「まあ、正直に言えばけっこうきついよ。でも、それどころじゃないんじゃないの。」

もしかしたら、その言葉に介護とか福祉とかそういう業界で働く人の実情が集約されているのかもしれない。

「それどころじゃないって、悠長なこと言っていられないんじゃないの?」

「まあねえ、そうなのかもしれないが、僕よりも彼女たちのほうが、もっと大変だと思うけどね。僕らばかりが心配されて、彼女たちに関しては何もないのもある意味では人種差別ではないのか。」

水穂にそう言われて、蘭は、言うことがなくなってしまう。良かれと思って発言したことなのに、人種差別と返されてしまったら、確かにがっかりしてしまうだろう。

「そんな意味でいったわけではないのに。」

「いや、そういう発言が自動で飛び出してしまうことがすでに人種差別であると、青柳教授も言っていたよ。まあ確かにああいう中で平気で指示を出せるのは、青柳教授だけなのかもしれないけどね。なんでも、原住民の土地争いで仲裁に入ったりしたほうがもっと怖かったから、平気なんだって。困るのは、肩が凝ったときだけだってさ。逆を言えば、そういう経験でもしておかないと、ああいう態度はとてもできないと思う。」

「確かにそれはそうだ。だけど、日本人のほとんどが、そういう経験はないんだから、パニックにならないほうがすごいよ。」

「まあ、そうだね。もしかしたら、これからそういう襲撃に対して、予行演習でもしておくことを義務付けられるかもしれない。」

「戦時中じゃあるまいし、なんで僕らがそんなこと。」

と、蘭は言ったが、もしかしたらあり得る話かなと思った。そういえば、数年前にも小学校に凶悪犯が侵入し、たくさんの生徒が大量殺害されたという事件があったばかりだ。もしまた似たような事件があれば、障碍者施設に限らず、小学校や福祉施設は、襲撃に対する予行練習を義務付ける法律が成立してしまうかもしれなかった。

「そうなると、いずれは、僕らも外出するときは武装して、なんて言われるかもしれないねえ。」

「蘭も、のんびりしすぎだよ。だって犯人まだ捕まってないんだからさ、もしかしたら他の施設で似たような事件があるかもしれないよ。そうしたらどうするんだよ。もっとかわいそうな人が増えちゃうことになるぜ。」

杉三が、蘭の発言に割り込んで言った。

「華岡は、それはないと言っていたけどね。もう凶器も施設内に置いていったようだし、他の施設にパトロールにも行っているようだが、一度も襲撃されたことはないそうだよ。」

まあ確かにそうである。すでに事件からひと月近く経っているが、他の施設で一度も襲撃事件はない。凶器である家庭用斧は、華岡たち警察が押収しているようだが、それを取り戻そうという動きもないらしいし、富士市内で営業している刃物屋やホームセンターなどにも怪しげな人物が来訪したという情報は一つもなかった。一時期、富士市内全部の刃物屋が営業を禁止されたこともあったが、数日前から営業を再開している店も出てきている。

「しかし、製鉄所で預かっている人たちはどうなるのかなあ。永久に製鉄所にいるわけにもいかないでしょう。水穂さんだって大変そうなのは顔を見ればわかるし、本人たちも、製鉄所の中だと落ち着かないでしょ。何とか安心して過ごせる場所を作ってあげることはできないのかよ。」

「まあ、そうなんだけどね。新しい施設ができるまでは、預かることになると思うよ。杉ちゃんの言う通り、落ち着かないと思うけどね。製鉄所で預かっている人は、高齢である人が多いから、身内と言っても兄弟しかないということが多いし、それすらないという人も多いでしょ。親御さんが、生きていて、元気な人であれば、すぐに連れて帰ってくれるけどさ、兄弟も年を取っていて世話が難しいとかであれば、それもできないんだよ。言ってみれば受け皿がないってことさ。それなら、うちで預かるしかないって、青柳教授は言ってた。」

現実は、水穂の言う通り、そういうものだった。あの施設には、70歳を超えている利用者もいる。そうなれば、親は既に死別しているし、兄弟がいてもそれぞれの家庭があって引き取れないとか、また別の問題が生じてしまうのである。障碍者施設はそれを避けるためにあることもまた事実である。そして、利用者たちは自分では何もできないのであれば、やっぱり誰かが世話をすることがどうしても必要になる。それについて、礼を言われるとか、それを求めるほうが間違いというのは当たり前のことである。これについて、不満を持っている人も少なくないのかもしれない。もしかしたら、この事件はその集大成だったのかもしれない。

「まあ、気にしないでやっていくよ。今あることをやっていくことが、多分仏道ということになるだろう。」

結局、そういう風に解釈をすることが、人間にできる究極の解釈としか言いようがない。どこの世界でもそうだけど、人間の手に負えないということは結構あるもので、宗教というものは、ある意味それについて解決をさせてくれる一つの道具なのである。具体的な解釈は、宗教によって異なるが、根本的に言ったらそういうことである。

「そうだねえ。僕もそう思っている。庵主様が、事実というものはただそこに転がっているだけで、それについて原因がなにかとか分析はいらない、解決するにはどうすればいいかを考えればいいって教えてくれたことがある。」

杉三も水穂に加担した。意外に、健康な人というのは、こういう話になると避けてしまう傾向があり、障害のある人は、意外に信心深いことが多いので、すぐに乗ってくることが多いものである。

「だから、文句なんて言わないよ。言っても仕方ないもの。」

「おう、頑張ってや。それにしても、何とかして犯人が捕まってくれるといいのになあ。僕らも、安心して買い物にも行けないよ、これでは。」

「そのためには、目撃証言というものは、必要不可欠ではあるんだけどね。みんな言葉なんてまともに話せる人がいないから、犯人の容姿や体格などの情報が全く得られないというのが困っているようだが、、、。華岡さんが、生存した人で、話せる人に聞いたとしても怖かったとかそういう事しか言わないので、いくら聞いてもだめだと話していたよ。」

確かにそうだろう。それでは、困ると思う。わずかに言葉が話せるひとであっても、蘭たちが普通にしゃべっているようなしゃべり方はできない。犯人が、足が太いとか、太っているとか、そういう具体的な説明がえられないから、いつまでたっても捕まらないのはそのせいでもある。

「青柳教授が、足跡から判断すると、一人は歩ける人がいたのではないかと言っていたけど、その人はどうしている?」

「確かに職員の一人で犯人と大乱闘した人がいたことはいたらしい。それは確かだよ。」

「じゃあ、その人も犠牲になっちゃったの?」

「いや、それはないみたいだよ。僕も詳しくは知らないが、ものすごい大けがをして、病院で手当てを受けているようだけどね。」

「そうか、それならよかったな、一人でも目撃者がいてくれれば、何とかなるかもしれないよね。もう、僕らが安全に生活できるよう、早く事件が解決してくれることを望むよ。僕らが安心して買い物に行けるのはいつかなあ。」

杉三がそういうほど、確かに視線は変わっていた。杉三たちが買い物に出て行くと、冷たい目をしてにらみつける人も結構いる。それはきっと、障碍者として買い物に出ると、嫌な感じという人が増えてしまったのだろうか。それとも、普段からあったのだろうか。それは、はっきりしないのだけれど。

「まあなあ、僕らも生きているのは大変という事だけは事実であることは確かだ。」

蘭は、大きなため息をついた。



一部の生存者は、池本クリニックにも搬送されていた。施設からは遠く離れた場所にある病院であるが、生存者たちがしっかり療養するのは全く違う環境に行ったほうがいいと、懍が主張したためである。そういうわけで、彼らには、一般的な病棟ではなく、政治家なんかが入院するような特別な部屋があてがわれていた。そうなるとまた人種差別につながるのではないかともとれるが、まず事件の恐怖をやわらげることを最優先させることが必要でもあった。

その中に、職員の一人でもあったイーヨーがいた。イーヨーは、入院費を支払うことは難しいのではと思われたが、生存者の家族たちが出してやることになっていた。入院して一週間は動けなかったが、無事に意識も回復し、数日後に歩くことも許可された。寝たままでいるのが嫌いなイーヨーは、しょっちゅう庭を散歩するなどして、気を紛らわしていた。華岡たちが、目撃証言を求めて毎日のように病院を訪れていたが、事件解決のために協力はしなければならないことはわかっていても、本当なら、静かな環境で休ませてもらいたかった。

その日も、華岡たちが、犯人の調査をするために病院にやってきた。なんとしてでも犯人を捕まえたいと焦っているらしく、調査は一時間以上続いた。池本院長がやってきて、少しやすませてやってくれと、華岡たちを制止してくれたが、それがなかったら、一日中質問攻めにされて、疲れ果ててしまうかもしれなかった。

華岡たちがあきらめて帰ってくれたのを見送って、イーヨーは病院のカフェスペースから、病室に戻ろうとエレベーターの方へ歩いて行った。まだ負傷した足は痛かったが、多分、犠牲になった人はもっとすごかっただろうなとか、そんな事を考えていた。

「あの、すみません、お願いがあるんですが。」

不意に、エレベータ―の前で声をかけられた。振り向くと、水穂が倒れた時に無断で道路を横断して理事長に叱責されたあの女性の父親がいた。

「はい、何でしょう。」

「変なことをお聞きしますが、退院したあと、どうなさるおつもりなんでしょうか。」

と、彼女の父親はそんな事を言う。確か父親は、都内の大学で教授をしていることもあるほど、偉い人だと聞いている。そういう人が、自分にそんなことを聞いてくるとは、一瞬耳を疑ってしまう。

「そうですねえ、まあ、とりあえず、傷が治ったら、どこかほかのところで働こうかなあとは考えていますけどね。国に帰っても、このようではいさせてもらえませんよ。何しろ、山ばっかりで、これでは歩くのも難しい場所だと思いますので。日本ではありえないと思うんですけど、道路が舗装されないで土のままであるほうが、圧倒的なところですから。」

イーヨーは、とりあえず歩行不能には至らなかったものの、右足の一部の神経を切られてしまったので、正常に歩くことはできず、びっこを引くことは避けられないと宣言されていた。そんなわけだから、土の道路を歩くなんて、無理な話だった。

「奥さんとはどうするつもりですか?」

「妻とは離縁を申し渡されておりますので、これからも一人で生きていくつもりですよ。」

確かにそれもそうである。聡美が、あの事件の報道後、発狂してしまって精神科に収監されてしまったので、責任をとれと言われて、彼女の両親からそう言い渡されていた。

「そうですか。それならなおさらお願いしたいと言いますと、なんとも都合のいい言い方でもうしわけないのですが、単刀直入に言いましょう。うちの子をもらってはくれませんかね。」

晴天の霹靂としか言いようがないが、とにかくそれくらい衝撃は大きかった。びっくりして何を返したらいいかわからずにいると、

「実はですね、あの施設に娘を入れさせる時に、娘は本当に嫌だったらしくて、絶対に家から出ようとしませんでした。それでも、私たちは必要だったものですから、どうしても連れて行かなければならなかったのです。幸い、理事長さんたちがうまくとりなしてくれましたが、施設内で気に入った男性を見つけると、くっついたまま離れないという問題を度々起こしました。それはね、多分私があの子をああしてしまったので、多分似たような人を求めているんだろうなと思っているのがすぐにわかりましたので、私も本当に申し訳なかったと思っているのです。日ごろからつらい思いをさせている中で、あのような事件も起きてしまったので、娘の願いをかなえてやりたいと思うのですが。どうでしょう。お願いできませんか。」

と、彼女の父親は説明した。確かに水穂の時もそうだったけど、もしかしたらチョコバナナを大食いするのは二の次で、本当は気に入った男性のそばにいたいだけなのかもしれなかった。

「うちの子も、あなたの事を気になっているようですよ。水穂さんには手を出すなと言い聞かせましたけど、あの悪い癖はどうしても治りません。それに、あの子は、すぐに汚い手を出すようなことはしませんし、本当に魅力がある男性でなければ、好意を寄せることはまずしません。そこは見ていてわかります。どうか、もう一度言いますが、うちの子と一緒に生活してもらうわけにいかないでしょうか。本当に、物分かりは悪いかもしれませんが、美しいものを何よりも美しいと思う事だけはできますので。」

再度、彼女の父親は懇願した。そのほうがいいな、とイーヨー自身も考え直した。どっちにしろ、日本にいたいという気持ちもあったし、足が悪くなっては暮らしていけないと確実にわかるところへ戻っても、何もないことは明確だった。

「わかりました。お引き受けしましょう。」

「ありがとうございます。そのうち、本人からもプロポーズを送ってよこすと思います。」

彼女の父親は、うれしそうな顔をした。もしかしたら、彼女本人よりも、うれしいのかもしれなかった。



しばらくして、生存者たちは全員が回復したため退院していった。歳の若い者は家族に引き取ってもらって家族とともに暮らすことになった。彼等は、家族と暮らすことをとてもうれしがって、離れたくないと主張した。これによって、家族たちも施設に頼りすぎてしまっていたと考えなおしてくれたようだ。その証拠に彼らの顔は、施設で暮らしていたよりもずっと生き生きして楽しそうだったからである。家族のない高齢の生存者たちは、懍や夢子が厳格な調査の上に決定した他の施設に移った。なぜか生存した者は、比較的高齢の者が多かったのも特徴かもしれなかった。つまり、長く生きる確率が高いものほど犠牲になったということである。

結局、犯人を捕まえるにはまだまだ時間がかかりそうであるが、法人紫陽花園は解散し、建物は取り壊すことになった。富士市の市長さんが、跡地に石碑を立てようかと提案してくれたらしいが、その前にあった津山事件でもそのような処置はなかったという事から撤回された。

「本当にありがとうございました。何から何まで手伝っていただいて、お礼にこれでも持って行ってください。」

製鉄所の応接室で、懍と夢子が「お別れ」を語っている。夢子は、新しい法人を作るために富士から出て行くことになったのだ。お礼として、茶封筒を差し出したが、

「いいえ、うちは金銭的には全く不自由していませんので必要ありません。こんな大金を差し出すのなら、それは、これからお世話になる人に使ってください。こんな事をするから、障碍者施設は、座敷牢と変わらないと言われるんでしょうに。」

懍は、笑ってそれを受け取らなかった。

「すみません。やっぱり先生には、最初からおしまいまで、頭が上がりませんでした。やっぱり亀の甲より年の甲とはこういう事を言うのですね。」

「まあ、年を言えば八十を超えてますが、まだまだやることはたくさんありますので、そういう言葉を言われてもうれしくはありませんな。」

「ごめんなさい。私も、まだまだだめですね。もっと年上の方の経験を聞くこともしなければいけませんね。」

「なんにもなりませんよ。僕が誰かにお願いするのは、肩たたきくらいなものでしょう。それに、口に出して経験を語るなんて、よほどの事でなければしませんよ。そういう事は、聞きに行くのではなくて、盗むものです。」

「はい、すみません。私も、こんな形で自分の事業を台無しにされるとは思いませんでしたが、必ず、別のやり方で、成功して見せますよ!」

「その時を待っています。遠いところでね。」

「まあ、先生がそんな事を言っていたら、私が報告できる人もいなくなりますわ。」

二人は、そんな事を言って、そっと外を見た。製鉄所から数百メートル離れたところに紫陽花園が立地しているが、まもなくそれも姿を消す。その跡地を買い取る人も誰もおらず、記念碑が立てられるわけでもなく、文字通り、自然に帰るのであるが、時をさかのぼればそういうところであったろうから、いずれは森の一部に戻ってくれるのが一番いいだろうと夢子もそう思った。

「ほら、いつまでもここにいると、新しい家族の結婚式に遅刻しますよ。」

懍に言われて時計を見ると、もう、10時をとっくに過ぎていた。

「あらやだ!ごめんなさい!祝辞を読まなきゃいけないのに、遅刻なんかしたら怒られちゃいますね!」

夢子は急いで立ち上がって応接室を飛び出していった。

杉三と蘭は、華岡に連れられて、取り壊しとなる紫陽花園を訪れていた。中に立ち入ることはできなかったが、庭の中にまだ血痕が若干あったため、改めて凄惨な事件だったことを感じさせた。どっちにしろ、明日から取り壊し作業が開始されるために、重機でつぶされてしまうことは確実だが、杉三は紫陽花園の正門前に線香を置いて花を手向けた。意味がないと笑っていた蘭も、それにつられて花を手向けた。二人は、事件の犠牲者に向けて黙祷をささげた。

「杉ちゃん、早く帰ろうぜ。」

蘭が、そう促しても、杉三は離れようとしなかった。

「僕はこの建物を取り壊すのはどうも嫌な気がするんだが、、、。負の遺産として残しておいてほしかったな。」

「何を言っているの。もう決定したんだから仕方ないだろ。」

「市長さんだって、最後まで反対したようだけど、結局多数決で決定しちゃったんだっけな。なんのための市長さんなんだかな。せっかく若い市長さんが当選してもこれじゃたまらない。」

「関係ないと思うけど。単に住民運動が激しいからじゃないか。障害のある人が傷ついてしまったら困るという気持ちもあるだろうよ。」

「まあな。」

と、杉三はぼそっとつぶやいた。

「残しておくということは、二度と繰り返してはならないと、警告するためでもあるんだぜ。なんでもそうだけど、人間は忘れる動物だからさ!」
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