『『吾輩は猫である』殺人事件』

文字数 1,133文字

『『吾輩は猫である』殺人事件』/奥泉光

ざっつえんたーていめんと!

いんや~、面白かったです!!

それにすっごい!

ほんとにすっごい小説でした!!


タイトル通り、あの、夏目漱石の『吾輩は猫である』そのままの文体で、そのままの『吾輩』が、『吾輩は猫である。名前はまだない。』と語り始めるはこれまた驚愕のストーリー。


物語の冒頭で、なんと彼(吾輩)は海を越え、当時の国際都市の上海へ渡ってしまっています。

そこで偶然に目にした古新聞には、彼の元飼い主、珍野苦沙弥(ちんの・くしゃみ)先生殺害の悲報が掲載されていたのです。

あの後、いったいなにが日本で起きたのか?

悲しいかな猫である吾輩は自由に海を渡ることもできないのですが、上海で友人(猫)となった国際色豊かな仲間たちとともに、安楽椅子探偵的な遠距離謎解きがはじまります。


夏目漱石版そのままの、古めかしいけれども面白可笑しくリズミカルな硬質の文体がなんとも楽しい。


前半、当時の国際社会を反映させた仲間たち、仏蘭西(フランス)猫の伯爵に、独逸(ドイツ)猫の将軍、地元大陸生まれの(孫文の飼い猫だったらしい)虎君、そして英国代表のホームズにワトソン(どっちも猫)らと、日本代表の名無し君=吾輩の漢字多めのやり取りや推理合戦がこれまた滅茶苦茶おもしろいのですが、物語はそれにとどまらず、どんどんと加速していきます。

吾輩以外の漱石版のキャラクターたちが登場したかと思えば、ホームズからはモリアチー教授にバスカビル家の犬、負けじと(?)漱石の別の小説や詩からもモチーフが流れ込み、猫たちは当時の時事問題や文明論まで口泡をとばしながら激論を戦わせるのです。そう、猫が。


ああ、これって本当に夏目漱石の『吾輩は猫である』そのままの読み心地。

で、で、まだそれだけではなく、さらにさらに加速した物語は、吾輩と仲間たちを巻き込んだ大冒険へと発展、ついには、すべての謎が解き明かされ、そして・・・!!


っと、これ以上書くとネタバレなのでやめておきますが、ほんとーに面白い、読みやすく、そしてテクニカルな小説でした。

著者の奥泉光さんはこの小説を書きたくて小説家になったのだとか。

それだけに力の入った、もう最高の『吾輩は猫である』な本でした。よかったー♪


(おまけのひとこと)

読み終わった直後のコーフンそのままで書いてるのバレバレですねw

私は文庫版相当の電子書籍版で読みましたが、単行本版はもっと古風な旧仮名遣いでしっかりと夏目漱石の雰囲気で書かれているそう。そちらもいつか読んでみたいものです♪


そうそう、それと、以前紹介した『ビビビ・ビ・バップ』、こちらも同じ始まり方だけあって一緒に読むとなかなか味わい深いかもかも?

Original Post:2018/02/21
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登場人物紹介

神楽坂らせん

読書の合間に本を読み、たまにご飯してお茶して、気が付けば寝ている人です。一度おやすみしてしまうと、たいていお昼ぐらいまで起きてきません。

愛読書は『バーナード嬢曰く。』

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