第1話
文字数 1,011文字
結局さ、紗奈ちゃんて、
律とカナト、どっちが好きなの？
ラビスはいきなり私の部屋に現れ、ぶしつけな質問をよこした。
私、星崎紗奈１７歳。
最近パラレルワールド関係の事件解決に忙しい。
それもこれも今、目の前にいるラビがせっせと事件を持ってくるからである。
まあなんだかんだ、ラビにはいろいろ助けられてることもあるんだけどね……。
クスクス……。
で、どっちなの？
う……。
そんなの……よく分からないよ……。
カナトさんとはあれっきり会ってないし。
りっちゃんは……りっちゃんだもん……
ふーん。
パラレルワールドでは紗奈ちゃんは結構律といい雰囲気だったりするのにね。
もしかして、ここの世界の紗奈ちゃんが、律と恋人同士にならないのは……。
律への恋心に目覚める前に、カナトに会っちゃったから、だったりして
でも、カナトとはさー。
恋人同士は難しいんじゃないかな
んー住む世界が違うっていうか……。
カナトは僕と同じイレギュラーだからね～。
ちょ、それじゃ矛盾してるじゃない。
たった今、同じイレギュラーだって……
僕は世界が歪もうが何が起ころうが
”ことわり”なんて徹底的に無視出来るけど
カナトは世界の歪みを作るようなことはできないんじゃないかなー。
カナトが望む望まないに関わらず。なにせパトローラーだからね。
まあそもそも、紗奈ちゃんとは別に、
好きな人がいるかもしれないしー
気が付いたら、涙がぽろぽろとこぼれおちていた。
ほとんど、想像と自分の理想で固められた、恋に恋したような、
そんな想いかもしれないけれど……。
ふうん……
そこで泣くんだ……
……。
自分の気持ち、よく分からないよ……
うん、
でもね、辛い思い、することになっちゃうかもね
（それでも……会いたい……
会って、もう一度自分の気持ち、確かめたい……）
……ふわっと宙に浮く感覚がしたと思ったら、
急に体は降下した。
思わず目を開けてみると、次の瞬間
私は木の中にガサガサと音を立てて突っ込んだあげく、
地面にドサッっと落ちた。
……そこで、もれなく私の意識は、ぶっつりと途切れてしまうのだった……。
