第19話
文字数 1,304文字
すると、空気が一瞬にして変化した。ちょっと今までとは雰囲気が違うというか、具体的には言い表せないけれど、何というか静まり返ったような感じ?
「……人払いをする、って簡単に言ってのけましたけれど。どうしてそういうことをする必要があるんですか?」
「何だ、東谷。今回はそんなことも知らないペーペーの人間を連れてきたのか」
声がした。
それは東谷でも、志穂でも、勿論雪乃でもなかった。
長身の男だった。スーツを身に纏ってはいるものの、顔立ちはどこか外国人っぽく、髪の色に至ってはあまり見たことのないような色使いだった。イラストでしかあまり見ないような配色と言っても差し支えないだろう。
「あ、あの……こちらの男性は?」
「取引相手だよ。うちのお得意先だ」
お得意先、ですか。
ああ、そういや異文化商会なんて名前だったっけ……。
「はじめまして。僕の名前はルシファーと言います。……あ、こっちではそういう名前って好まれないんでしたっけ。ええと、確か」
スーツの内ポケットから手帳を取り出しペラペラと捲っていく。
やがてあるページに辿り着くと、そこに書かれているであろう名前を読み上げた。
「ああ、そうですそうです。ですので、ここでは漆坂と呼んでください」
「漆……坂さん?」
「こっちの世界に『帰化』するのは悪い考えではないが……だが、それを上司はどう見ているんだ? 一応、この世界も掌握しようという考えなのだろう?」
掌握って。
何か嫌なワードが聞こえたような気がするのですが。
「いやあ……あんまりそういうワードを出されると、困りますよ。確かにそういうことも考えているといえば考えていますけれど、でも、それはあくまで可能性の問題であって……。でもまあ、なくはないですよ」
「ないのか……適当に言っただけだったんだがな……」
「あ、あの……ご主人様?」
そろそろ本題に入って欲しいものだけれど。
「ん? どうかしたか、馬鹿メイド」
「馬鹿は余計でしょうが……。で、どうしてこういう場所で取引をするんですか? もしかして、怪しい取引を……」
「半分正解だな。我々は悪の組織。悪の組織であるゆえに、開かれた場所での取引を嫌う。分かるか? それをすることの意味は……まるでないのだからな」
「理解出来るようで理解出来ないんですけれど……。要するに、表向きには会うことが出来ないってことですか? ってことは、こちらの方はどういう存在?」
ぱしーん。
ハリセンで頭を叩かれる雪乃。
「……我々は異文化商会だぞ? そのニュアンスからして分かるだろうが……。いやはや、すいませんね、漆坂さん。簡単に自己紹介をしていただいても?」
「結局僕に自己紹介させるんですか。……まあ、良いでしょう。僕の名前はルシファー。魔族です。その感じからしてご理解いただけると思いますが……魔王軍の最高幹部を務めています。要するに、悪の勢力、そのナンバーツーです」
何だか、えらいとんでもない人(で良いのか?)と対面してしまったぞ……?
雪乃はそう思うと、何故か身震いが止まらなかった。
「……人払いをする、って簡単に言ってのけましたけれど。どうしてそういうことをする必要があるんですか?」
「何だ、東谷。今回はそんなことも知らないペーペーの人間を連れてきたのか」
声がした。
それは東谷でも、志穂でも、勿論雪乃でもなかった。
長身の男だった。スーツを身に纏ってはいるものの、顔立ちはどこか外国人っぽく、髪の色に至ってはあまり見たことのないような色使いだった。イラストでしかあまり見ないような配色と言っても差し支えないだろう。
「あ、あの……こちらの男性は?」
「取引相手だよ。うちのお得意先だ」
お得意先、ですか。
ああ、そういや異文化商会なんて名前だったっけ……。
「はじめまして。僕の名前はルシファーと言います。……あ、こっちではそういう名前って好まれないんでしたっけ。ええと、確か」
スーツの内ポケットから手帳を取り出しペラペラと捲っていく。
やがてあるページに辿り着くと、そこに書かれているであろう名前を読み上げた。
「ああ、そうですそうです。ですので、ここでは漆坂と呼んでください」
「漆……坂さん?」
「こっちの世界に『帰化』するのは悪い考えではないが……だが、それを上司はどう見ているんだ? 一応、この世界も掌握しようという考えなのだろう?」
掌握って。
何か嫌なワードが聞こえたような気がするのですが。
「いやあ……あんまりそういうワードを出されると、困りますよ。確かにそういうことも考えているといえば考えていますけれど、でも、それはあくまで可能性の問題であって……。でもまあ、なくはないですよ」
「ないのか……適当に言っただけだったんだがな……」
「あ、あの……ご主人様?」
そろそろ本題に入って欲しいものだけれど。
「ん? どうかしたか、馬鹿メイド」
「馬鹿は余計でしょうが……。で、どうしてこういう場所で取引をするんですか? もしかして、怪しい取引を……」
「半分正解だな。我々は悪の組織。悪の組織であるゆえに、開かれた場所での取引を嫌う。分かるか? それをすることの意味は……まるでないのだからな」
「理解出来るようで理解出来ないんですけれど……。要するに、表向きには会うことが出来ないってことですか? ってことは、こちらの方はどういう存在?」
ぱしーん。
ハリセンで頭を叩かれる雪乃。
「……我々は異文化商会だぞ? そのニュアンスからして分かるだろうが……。いやはや、すいませんね、漆坂さん。簡単に自己紹介をしていただいても?」
「結局僕に自己紹介させるんですか。……まあ、良いでしょう。僕の名前はルシファー。魔族です。その感じからしてご理解いただけると思いますが……魔王軍の最高幹部を務めています。要するに、悪の勢力、そのナンバーツーです」
何だか、えらいとんでもない人(で良いのか?)と対面してしまったぞ……?
雪乃はそう思うと、何故か身震いが止まらなかった。