一日目(月) 俺の血液型がAB型だった件

エピソード文字数 2,290文字

「火水木、血液型は?」
「O型……って何で自分を調べる前に人を調べようとしてんのっ!」
「えーっと、O型女子の草・格闘タイプと……飛行が四倍弱点だな」
「そんなの書いてないでしょうがっ! そもそも何でアタシが草と格闘タイプなのよっ?」
「いやだって草生やしてそうだし、体育祭の棒引きで格闘してただろ?」
「そう言われたら…………と、とにかくちゃんと血液型を調べなさいよ!」
「いや俺こういうの信じないからさ。朝にテレビでやってる星座占いで、十二位にはアドバイスを与える癖に十一位には何のアドバイスも無しかよって思ってる人間だし」

 とある番組では最下位だったのに、別番組では第一位とか意味不明すぎる。ラッキーアイテムはシチューですとか元気一杯に言われても、そんなの持ち歩けないし急に用意もできるかっての。

「……ヨネ、A型は?」
「A型の粘土もとい岩・氷タイプは格闘四倍。火水木とは相性が悪いな。ラッキーアイテムは食べ残し…………を俺にくれ」
「だから何でポ○モンなのよっ!」
「放送したら苦情が出そうなラッキーアイテムだね」

 ちなみに口にはしないが、阿久津は悪・毒タイプ。毒を鋼にするか悩んだが、こっちの方が四倍弱点もないし中々に合っていると思う。得意技は多分ふいうちかな。

「ん……? 火水木がO型で冬雪がA型ってなると、全部の血液型が揃ってるんだな」
「あー。確かにネックってB型っぽいわね」
「いや違うから。俺はAB型」
「嘘っ? 似合わなっ!」
「血液型で似合わないって言われてもな……毎日エビでも食えってのかよ? ちなみにAB型の性格は自由奔放・素直になれない・行動派・平和主義者・努力は苦手……だとさ」
「……割と合ってる」
「いやいや、勘違いするな冬雪。これは心理学用語でバーナム効果と言って、誰にでも当てはまる内容が書いてあるだけなんだぜ?」

 本日のお兄ちゃんトリビア。いや、今日の場合はお兄ちゃんとリビアか。
 この手の性格診断で一つだけ言えるのは、AB型は自分の血液型に誇りを持っている奴が多いと思う。だって二面性とか天才肌とか、何か厨二っぽくて恰好いいし。

「じゃあツッキーがB型ってこと? 意外かも」
「どういう訳か、よくA型と間違えられるよ。言われてみれば確かに揃っているけれど、キミもよくボクの血液型を覚えていたね」

 阿久津水無月、六月三日生まれの双子座。血液型はB型だが、バストサイズは多分A。幼馴染かつ片想いの相手となれば、忘れる方がおかしいくらいだ。
 …………そう、決して憧れや贖罪ではない。
 例え好きになった理由が言えずとも、米倉櫻が阿久津水無月に恋心を抱いているのは紛れもない事実。その気持ちだけは昔から今に掛けて、俺の中で唯一変わらない物だから。

「それはお互い様だろ」
「キミの場合は兄妹含めて、色々と覚えやすいから特別さ」
「……色々?」
「気にするな。そういやパーティーの日だけど、何で変更になったんだ?」

 土曜日に火水木から『アンタもスマホ買いなさいよ』という文句と合わせてメールが届いた。SNSができないだけで、そこまでガラケーを虐めないでほしい。
 内容はクリスマス当日ではなく、イブの予定が空いているかの質問。理由は聞かずに大丈夫と返事をしたら、パーティーの日時変更の知らせが届いた訳である。

「あー、アンタには言ってなかったっけ? 音楽部がクリスマスにパーティーするんだって言うのよ。だからユメノンとかオイオイに合わせて、こっちはイブに決行と」
「集まるのはハロウィンの時と同じメンバーか?」
「イエス!」
「その件について、伊東先生はイブで大丈夫なんでしょうか?」
「先生、独り身ですから。どうせその日は当番で学校にいますし、サタンクロースとシングルヘルするくらいなら陶芸部で青春を眺めていたいですねえ。青春ですよ、青春」

 阿久津の心遣いに対して、物凄い遠い目をしながら伊東先生が答える。火水木は気付いてないようだが、多分これさっきの売春発言を滅茶苦茶引きずってるっぽいな。

「そうそう。パーティーは構いませんが、年末は部室の大掃除もお願いします。冬は水が冷たくて陶芸する機会は少ないでしょうし、床から窓まで綺麗にしちゃいましょう」
「えー」
「床を綺麗にって、ろくろ運ぶんですか?」
「勿論です。先輩は一人で運んでいましたので、米倉クンは力の見せ所ですねえ」
「マジですか?」
「……マジ」

 電動ろくろの重さは一つ約四十キロ。一台ならまだしも十二台も一人で運ぶとなると正直キツイので、そこは無駄にハードルを上げないで欲しかった。

「昨年は三十日にやりましたが、日程は皆さんにお任せします」
「……三十日で大丈夫」
「ボクも空いているけれど、二人はどうだい?」
「あ、ゴメン。アタシ三十日はちょっと無理かも」
「どうせコミケだろ」
「悪かったわねっ! 他で空いてる日は――――」

 大掃除の日程を決める傍らで、血液型の本をパラパラ眺めていると相性診断のページを見つける。

 AB型(男)→B型(女)……気まぐれな行動についていけない時も。
 B型(女)→AB型(男)……お互いに歩み寄る必要があるよ。
『遠回しな言い方では伝わらないこともあるので、ハッキリ言葉で伝える強気な恋愛を!』

 はっきり言葉で伝えない恋愛なんてあるのかよと思いつつ、俺は黙って本を閉じた。こんな物を参考にするくらいなら、アキトが以前付き合ってた二次元の彼女を相手にする方がまだ勉強になりそうだ。
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登場人物紹介

米倉櫻《よねくらさくら》


本編主人公。一人暮らしなんてことは全くなく、家族と過ごす高校一年生。

成績も運動能力も至って普通の小心者。中学時代のあだ名は根暗。

幼馴染へ片想い中だった時に謎のコンビニ店員と出会い、少しずつ生活が変わっていく。


「お兄ちゃんは慣れない相手にちょっぴりシャイなだけで、そんなあだ名を付けられた過去は忘れました。そしてお前は今、全国約5000世帯の米倉さんを敵に回しました」

夢野蕾《ゆめのつぼみ》


コンビニで出会った際、120円の値札を付けていた謎の少女。

接客の笑顔が眩しく、透き通るような声が特徴的。


「 ――――ばいばい、米倉君――――」

阿久津水無月《あくつみなづき》


櫻の幼馴染。トレードマークは定価30円の棒付き飴。

成績優秀の文武両道で、遠慮なく物言う性格。アルカスという猫を飼っている。


「勘違いしないで欲しいけれど、近所の幼馴染であって彼氏でも何でもない。彼はボクにとって腐れ縁というか、奴隷というか、ペットというか、遊び道具みたいなものでね」

冬雪音穏《ふゆきねおん》


陶芸部部長。常に眠そうな目をしている無口系少女。

とにかく陶芸が好き。暑さに弱く、色々とガードが緩い。


「……最後にこれ、シッピキを使う」

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