第4話 吸い殻
文字数 3,022文字
もっとも数の多いポイ捨てゴミが、タバコの吸い殻である。
もちろん、全体量でいうとそうでもないが、拾うためにかがむ回数は、圧倒的に吸い殻が多いのだ。
吸い殻の多くは、人や車に踏まれたり、雨に打たれたりして本体はほぼ消滅し、フィルターのみになっている。
踏まれて崩れ、路面と一体化した吸い殻も多いが、歩道と車道を区切る縁石のあたりに吹き溜まっていたり、雨で排水口の目皿にいくつも溜まっていたりもする。
ポイ捨て犯が歩行者の場合は、踏まれていることが多く、ドライバーの場合は丸のまま転がっていることが多いように思う。
共通している感覚は「こんな小さいモノ、大して問題ではない」と「目の前からなくなったら、もう俺とは無関係」であろうと推測できる。
歩行していてポイ捨てした場合、一刻も早く吸い殻を視界から消したい。ゆえにバカ喫煙者は、敢えて自分の一歩前に投げ捨て、次の一歩で踏む。
するとあら不思議。視界から吸い殻は一瞬で消え失せ、後ろを振り返りさえしなければ、爽快そのもの、という寸法だ。消えるわけがないのに、だ。まさか自分の足裏に、ゴミを異界に転移させる、魔法の力があるとでも信じているのだろうか?
ドライバーの場合はもっと簡単。運転しながら消さずに窓からポイだ。
吸い殻はあっという間に消え失せ、車内は清潔。気分は爽快極まりない。火を消しさえもしていないことは、吸い殻を観察すれば一目瞭然。
乾燥した日などは、落下後、最後まで燃え尽きたと分かる吸い殻にもよく出会う。
そんなヤツに限って、車はピカピカ。車内はおしゃれに飾ってあって、ゴミ一つないのだ。
中には、タバコの吸い殻ごとき、いくら捨てたって大した問題にはならない、と考えているポイ捨て犯もいるかも知れない。だが、吸い殻には、ポイ捨て犯の汚い唾液が確実についている。
新型コロナの例を挙げるまでもなく、わざわざ病原体をばら撒く行為なのは間違いない。
火をつけたままなどは論外で、たまに落ち葉や紙ごみに燃え移ってニュースにもなっているが、もっとも喫煙者が勘違いしているのは『タバコなど自然界で分解されるだろうから、大丈夫』という感覚だ。
たしかに、巻紙や葉は自然界で微生物によって分解する。だが、フィルターは石油製品だ。自然界で分解しきるには、大変な時間を要する。
危険なのは、排水口の目皿に溜まった吸い殻だ。ここしばらく、毎年のように大きな被害を出しているゲリラ豪雨。地下の排水路につながる排水口が、多数の吸い殻のフィルターで詰まり、道に水が溢れている状態を俺も確認したことがある。
もちろん、ビニールや紙、落ち葉でも似た状況は起こりうる。だが、大きなゴミは気づいて拾うのが容易だ。雨の前に対処できる。
これに対して、吸い殻は晴れているときは目立たないが、雨が降ると水の流れに乗って、一気に周囲から集まってくるのだ。
吸い殻ポイ捨て犯は、豪雨で川のようになった道のニュースを、他人事のように見ている場合ではない。あんたのせいだよ、それ。
それと、吸ってもいない、丸のままのタバコにもよく出会う。
これは、例外なく異様に細長いタバコで、銘柄は知らないが、あまり吸っている人を見た記憶はないタバコだ。どうして、この細長いタバコばかり、丸のまま落ちているのかと最初は訝ってもいたが、推測してみると、細長過ぎて箱から一本だけ取り出すのが難しいのではないか。
一緒に二本以上出てきて、それを箱に片付けるのがめんどくてポイと捨てるのか、意図せず落っことしてしまうのかは分からない。だが、気づいているなら拾って吸えばいいだけなのに、そうしていないのは間違いない。落ちている頻度が高すぎ、二本出てきたことに気づかないバカが多数いる事になるから、これはあり得ないのだ。
タバコの箱もよく落ちている。拾う立場から言わせてもらうとこの箱、ビニールで包まれていて、分別がじつに面倒。中だけ何故か銀紙で、これもまあ燃えはするんだろうと燃えるゴミに分類しちゃいるが、不安の残る箱なのだ。
たばこメーカーはこの箱、もっと簡略化してもいいんじゃないかと思うんだが。
この箱、中に吸い殻が詰めてあることもあるし、ガムやレシートなど、他のゴミが詰めてあることもある。お札を入れる習性のある人がいて、間違えて捨ててしまったなどという話も聞くが、そんなラッキーには出会ったことはない。
箱を開ける時に取る、上部のビニールも定番のポイ捨てゴミだ。小さくて透明だから、無頓着に捨てるのだろうが、赤いひも状の部分も含めて、大変よく目立つものだ。
この他、使い捨てライターや、そもそも封を切ってないタバコの箱も拾ったことがある。
どれも喫煙者以外は捨てないゴミだ。
それと、ポイ捨てゴミを拾っていて思うのだが、喫煙者はポイ捨て犯率が高いのではないだろうか。
投げ捨てペットボトルや空き缶に吸い殻が入っていることはもう書いたが、ポイ捨てされたコンビニ袋や生活ゴミの袋を分別すると、高確率で吸い殻が同梱されているのだ。
こうしてみると、喫煙者はおしなべてマナーが悪い。
そうとられても仕方のない証拠が、道にはいくらでも落ちていると思う。自分の出したゴミも片付けられない幼稚な連中、もしくは自分の行為の影響を想像もできない、レベルの低い連中が、喫煙者ではないのか。
携帯灰皿ってやつを常時持ち歩いている人間を、俺は数えるほどしか見たことがないのだが、ある調査によると携帯灰皿を約90%の喫煙者が持ってはいるらしい。
だが、これは言い換えると、そもそも10%は持ってもいないわけだ。タバコを吸うくせに、である。
しかも携帯灰皿保有者の約50%が『時々使っている』と回答。『頻繁に使っている』人間は僅か30%弱である。つまり、残り20%は全く使っていないわけで、ちゃんと携帯灰皿を使っているのは、喫煙者全体の25%程度しかいないわけだ。そりゃ吸い殻も落ちてるわな。
ポイ捨てしているのは一部の人間、だなどというのは逃げに過ぎないという証拠ではないだろうか。
『それは違う』と反論したいなら、行動で示すべきだ、と俺は思う。
『自分は捨てない』のでは不十分だ。『自ら拾え』と言いたい。自身は携帯灰皿を必ず使用し、ポイ捨てするヤツを『喫煙者の恥』として糾弾し、粛清せよ。
道端に、一つの吸い殻も空き箱も落ちてない世の中になったら、喫煙者にもマナーがあると認めてもいい。
そもそも、喫煙していない人にとっては、タバコなどまったくの不要物だということを、忘れてはいけない。
たばこ税の税収について言う喫煙者もいる。二兆円もの税金を払っているのだと。
いや、別に頼んでないので吸うのやめてください。構わないから。
実際のところ、税収の数倍もの、超過医療費、火災の消防費用、清掃費用がかかり、喫煙関連疾患による労働力損失、火災による労働力損失があることは、一般財団法人『医療経済研究機構』が2010年に発表した、平成17年度データに基づく試算で分かっている。
まあ、ポイ捨てが無くならないようなら、タバコは全面禁止でいいんじゃないか。
タバコが廃絶されたとしても、JTは他に色々な事業やってますってCMやってるから、まあ困らないだろう。大企業だし、たくましく生きてくれ。
気になるのは、タバコ農家さんだけだが、これはもう、違う作物を作っていただくしかないなあ。
もちろん、全体量でいうとそうでもないが、拾うためにかがむ回数は、圧倒的に吸い殻が多いのだ。
吸い殻の多くは、人や車に踏まれたり、雨に打たれたりして本体はほぼ消滅し、フィルターのみになっている。
踏まれて崩れ、路面と一体化した吸い殻も多いが、歩道と車道を区切る縁石のあたりに吹き溜まっていたり、雨で排水口の目皿にいくつも溜まっていたりもする。
ポイ捨て犯が歩行者の場合は、踏まれていることが多く、ドライバーの場合は丸のまま転がっていることが多いように思う。
共通している感覚は「こんな小さいモノ、大して問題ではない」と「目の前からなくなったら、もう俺とは無関係」であろうと推測できる。
歩行していてポイ捨てした場合、一刻も早く吸い殻を視界から消したい。ゆえにバカ喫煙者は、敢えて自分の一歩前に投げ捨て、次の一歩で踏む。
するとあら不思議。視界から吸い殻は一瞬で消え失せ、後ろを振り返りさえしなければ、爽快そのもの、という寸法だ。消えるわけがないのに、だ。まさか自分の足裏に、ゴミを異界に転移させる、魔法の力があるとでも信じているのだろうか?
ドライバーの場合はもっと簡単。運転しながら消さずに窓からポイだ。
吸い殻はあっという間に消え失せ、車内は清潔。気分は爽快極まりない。火を消しさえもしていないことは、吸い殻を観察すれば一目瞭然。
乾燥した日などは、落下後、最後まで燃え尽きたと分かる吸い殻にもよく出会う。
そんなヤツに限って、車はピカピカ。車内はおしゃれに飾ってあって、ゴミ一つないのだ。
中には、タバコの吸い殻ごとき、いくら捨てたって大した問題にはならない、と考えているポイ捨て犯もいるかも知れない。だが、吸い殻には、ポイ捨て犯の汚い唾液が確実についている。
新型コロナの例を挙げるまでもなく、わざわざ病原体をばら撒く行為なのは間違いない。
火をつけたままなどは論外で、たまに落ち葉や紙ごみに燃え移ってニュースにもなっているが、もっとも喫煙者が勘違いしているのは『タバコなど自然界で分解されるだろうから、大丈夫』という感覚だ。
たしかに、巻紙や葉は自然界で微生物によって分解する。だが、フィルターは石油製品だ。自然界で分解しきるには、大変な時間を要する。
危険なのは、排水口の目皿に溜まった吸い殻だ。ここしばらく、毎年のように大きな被害を出しているゲリラ豪雨。地下の排水路につながる排水口が、多数の吸い殻のフィルターで詰まり、道に水が溢れている状態を俺も確認したことがある。
もちろん、ビニールや紙、落ち葉でも似た状況は起こりうる。だが、大きなゴミは気づいて拾うのが容易だ。雨の前に対処できる。
これに対して、吸い殻は晴れているときは目立たないが、雨が降ると水の流れに乗って、一気に周囲から集まってくるのだ。
吸い殻ポイ捨て犯は、豪雨で川のようになった道のニュースを、他人事のように見ている場合ではない。あんたのせいだよ、それ。
それと、吸ってもいない、丸のままのタバコにもよく出会う。
これは、例外なく異様に細長いタバコで、銘柄は知らないが、あまり吸っている人を見た記憶はないタバコだ。どうして、この細長いタバコばかり、丸のまま落ちているのかと最初は訝ってもいたが、推測してみると、細長過ぎて箱から一本だけ取り出すのが難しいのではないか。
一緒に二本以上出てきて、それを箱に片付けるのがめんどくてポイと捨てるのか、意図せず落っことしてしまうのかは分からない。だが、気づいているなら拾って吸えばいいだけなのに、そうしていないのは間違いない。落ちている頻度が高すぎ、二本出てきたことに気づかないバカが多数いる事になるから、これはあり得ないのだ。
タバコの箱もよく落ちている。拾う立場から言わせてもらうとこの箱、ビニールで包まれていて、分別がじつに面倒。中だけ何故か銀紙で、これもまあ燃えはするんだろうと燃えるゴミに分類しちゃいるが、不安の残る箱なのだ。
たばこメーカーはこの箱、もっと簡略化してもいいんじゃないかと思うんだが。
この箱、中に吸い殻が詰めてあることもあるし、ガムやレシートなど、他のゴミが詰めてあることもある。お札を入れる習性のある人がいて、間違えて捨ててしまったなどという話も聞くが、そんなラッキーには出会ったことはない。
箱を開ける時に取る、上部のビニールも定番のポイ捨てゴミだ。小さくて透明だから、無頓着に捨てるのだろうが、赤いひも状の部分も含めて、大変よく目立つものだ。
この他、使い捨てライターや、そもそも封を切ってないタバコの箱も拾ったことがある。
どれも喫煙者以外は捨てないゴミだ。
それと、ポイ捨てゴミを拾っていて思うのだが、喫煙者はポイ捨て犯率が高いのではないだろうか。
投げ捨てペットボトルや空き缶に吸い殻が入っていることはもう書いたが、ポイ捨てされたコンビニ袋や生活ゴミの袋を分別すると、高確率で吸い殻が同梱されているのだ。
こうしてみると、喫煙者はおしなべてマナーが悪い。
そうとられても仕方のない証拠が、道にはいくらでも落ちていると思う。自分の出したゴミも片付けられない幼稚な連中、もしくは自分の行為の影響を想像もできない、レベルの低い連中が、喫煙者ではないのか。
携帯灰皿ってやつを常時持ち歩いている人間を、俺は数えるほどしか見たことがないのだが、ある調査によると携帯灰皿を約90%の喫煙者が持ってはいるらしい。
だが、これは言い換えると、そもそも10%は持ってもいないわけだ。タバコを吸うくせに、である。
しかも携帯灰皿保有者の約50%が『時々使っている』と回答。『頻繁に使っている』人間は僅か30%弱である。つまり、残り20%は全く使っていないわけで、ちゃんと携帯灰皿を使っているのは、喫煙者全体の25%程度しかいないわけだ。そりゃ吸い殻も落ちてるわな。
ポイ捨てしているのは一部の人間、だなどというのは逃げに過ぎないという証拠ではないだろうか。
『それは違う』と反論したいなら、行動で示すべきだ、と俺は思う。
『自分は捨てない』のでは不十分だ。『自ら拾え』と言いたい。自身は携帯灰皿を必ず使用し、ポイ捨てするヤツを『喫煙者の恥』として糾弾し、粛清せよ。
道端に、一つの吸い殻も空き箱も落ちてない世の中になったら、喫煙者にもマナーがあると認めてもいい。
そもそも、喫煙していない人にとっては、タバコなどまったくの不要物だということを、忘れてはいけない。
たばこ税の税収について言う喫煙者もいる。二兆円もの税金を払っているのだと。
いや、別に頼んでないので吸うのやめてください。構わないから。
実際のところ、税収の数倍もの、超過医療費、火災の消防費用、清掃費用がかかり、喫煙関連疾患による労働力損失、火災による労働力損失があることは、一般財団法人『医療経済研究機構』が2010年に発表した、平成17年度データに基づく試算で分かっている。
まあ、ポイ捨てが無くならないようなら、タバコは全面禁止でいいんじゃないか。
タバコが廃絶されたとしても、JTは他に色々な事業やってますってCMやってるから、まあ困らないだろう。大企業だし、たくましく生きてくれ。
気になるのは、タバコ農家さんだけだが、これはもう、違う作物を作っていただくしかないなあ。