手順0 運命の出逢いをしましょう

文字数 828文字

「あなたが(なお)くん? 私、つづらっていうの。君、とっても可愛いね、私可愛い子大好き!」
 十歳の頃、両親の再婚でボクに一つ上の姉が出来た。

 色素の薄い肌にふわふわした栗色の長い髪、くりくりとした大きくて丸い目、まるで人形のように可愛らしい彼女は、
「私、ずっと一緒に遊べる兄弟が欲しかったの! これから仲良くしてくれたらすっごく嬉しいなっ!」
 と、ボクの手をとって、弾けるような笑顔でそう言った。

 物心ついた頃からずっと父親と二人で、ある日、急に父から新しいお母さんとお姉さんが出来ると言われたボクは当時、かなり混乱していた。
 でも、彼女の笑顔の前に、ボクの不安や不満は一瞬で吹き飛ぶ。

 それはきっと一目惚れ。

 つづらはいつの間にかボクの事を尚くんから尚ちゃんと呼ぶようになったけれど、よく祖母や近所のおばさんには尚ちゃんと呼ばれていたので特に気にしなかった。

「尚ちゃん、私のこの服とか尚ちゃんにも似合うと思うの」

「わあっ! 思った通りとっても可愛い!」

「この髪かざりもつけて……ふあ~っ、尚ちゃんが可愛くてお姉ちゃん幸せっ!」

 つづらはたまにボクに自分の小さくなった服を着せて着せ替え人形みたいにして遊ぶ事があったけれど、つづらがいつも喜んで褒めてくれるから、ボクも嬉しい。

 その事もあって、ボクは髪をいつもショートカットの女の子くらいの長さよりは切らなかったし、その方がつづらも喜んだ。
 一度、思った以上に短く髪を切られた時、ボクの髪がそこそこに伸びるまでつづらが酷く落ち込んでいたというのもあるけれど。

「尚ちゃんはね、私の宝物なんだよっ」
 なんて、つづらはよく言ってくれて、
「うん、ボクもつづらちゃん大好き!」
 と、ボクも毎日のように言っていた。

 連れ子同士なら結婚できる、というのはつづらに出会う前からドラマか何かで見て知っていたので、おめでたいその頃のボクは両思いだと浮かれていた。
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登場人物紹介

井上 尚(いのうえ なお)


つづらの義弟。

恋愛対象が女の子な義姉を落とす為に女装を始めた。

その甲斐あって姉弟仲は良好だが、つづらから恋愛対象には見られていないのが悩み。

井上 つづら(いのうえ つづら)


尚の義姉。

学年でも1、2を争う美少女で男子からエグいくらいにモテまくっているけど恋愛対象は女の子。

尚を妹と称して溺愛している。

男子からモテすぎて女子から浮いているせいで女の子と仲良くなれないのが悩み。

寺園 杏奈(てらぞの あんな)


つづらのクラスメートで響の幼なじみ。

料理部の部長で、つづらの好みドストライクの美少女。

家が柔道の道場。

響の事が好きで猛アピールしているが、当の響はつづらにお熱なのが悩み。

岡崎 響(おかざき ひびき)


つづらのクラスメートで杏奈の幼なじみ。

柔道部のエースでつづらの事が好き。

最近、尚に懐かれて悪い気はしないが見た目のせいで接し方がわからないのが悩み。

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