白蛇様のお目覚めじゃ
文字数 786文字
ズドーーーン……ズドーーーン……
なんと迷惑な音じゃ。眠っておられぬ……
わっちは山の祠で眠っていたはずじゃが……ここは日本なのかえ
わっちは1983年に男児の泣声で目覚める予定だったのじゃが。
寝過ごしたのかのう。それともこれは夢かのう。
白蛇様。ここは墓場ですよ
誰じゃ、お主
私は千津。千里眼の巫女の使いで貴女に会いにきました。
ここはどこなのじゃ
だから墓場ですよ
わっちは死んだのかえ……
男児が涙ながらに参拝する声で目を覚まし、彼の成長を陰から守護するはずじゃったのに
青年になった彼が、土地神や妖が催す"勝てば婿入り"、"負ければ死"という婿選びの儀＜デス・フェスティバル>に参加することになり、わっちと一緒に戦ううちにひかれあい夫婦END的な未来は何処に行ったのじゃ
未来はどこにも行きません。最初から存在していないのですから
お主の言うことは良くわからぬ。もっとはっきり言わぬか
俺たちはキャラクターとしての生を受けたが、生れ落ちる世界のほうが誕生しなかったということさ！
なら、ここは墓場ではなく子宮ではないのか。
わっちらは産まれるのを待っているのじゃから
いいえ。私たちは生まれることなく死んだのです。
墓場は墓場でも、水子の墓場です
俺たちはもう１０も年以上ここにいるが、ここから出ていった奴は一人もいない
……信じられぬが、状況はわかったのじゃ。
ということは、わっちの婿様もこの世界にいるのかえ？
残念ながらこの世界にいないことは、千里眼の巫女が確認しています
この世界に産み落とされるほどキャラが固まっていなかったんだろうな
わっちは婿様に会えんのかえ……
って、のんびり話している場合ではないすね。
カイト。貴方がここにいるということは、前線がここまで押し上げられたということ？
悪い。数の不利は気合でどうにかなるものじゃないらしいな
（こやつ、カイトというのか）
ズドーーーン……ズドーーーン……
