第16話:大洋の村に高齢者シェアHを1

文字数 1,846文字

 石島さんが、言うには、今まで建てた、山梨、南房総、他の老人シェアハウスと老人用アパート近くに集会所を造った施設が好評であり、この際、同業他社を出し抜いて、この領域でトップになりたいと告げた。

 1970年代、安価な別荘として話題になった大洋村の古家を改装し、多く高齢者シェアハウスを建てたい。そこで早急に図面を書いて建ててしまえと言う雰囲気になっていると話した。それを聞いた山下圭介、加藤圭、北山さゆり、佐島米子たちは、建てても入居者が集まらないと、負の不動産になるからねと冗談半分に笑った。

 すると、いつも温厚な、石島さんが、笑い事じゃないんですよ、どうしたら良いか本当に、困っているんですと言った。山下さんが、しかし、行った事も見た事もないのでわからないよと言い返した。既に一区画は作ったので4人で体験宿泊して意見を聞かせて欲しいと頭を下げた。 

 わかりました、何日、宿泊するんですかと聞くと最低2泊、お願いしたいと言った。アンケート用紙を見ると病院への距離、雰囲気、最寄り駅までの距離と所要時間。スーパー、郵便局、温泉、娯楽施設の数、良い点、問題点。作るとしたらアパート形式か、シェアハウス形式と書いてあった。

 山下が、仲間3人と話して、来週の火曜日ならOKと言う事で、朝8時に迎えに来る事に決まった。当日は、小雨後、曇りだった。高速道路を通り約2時間半でついた。山下が旧大洋の里・別荘地はと言うと、国道51号線から防風林の中に点在してますが、ほとんど廃墟で見に行かない方がいいと言った。

 是非、見たいというので細い道を海辺に向かうと小さな別荘が朽ち果てて荒れ放題で廃墟が多く不気味さを感じた。目の前が、すぐ海という口コミで、実際にそうですが風は強いわ、塩害はひどく、かつて、この地区は建築制限がほとんどなかったので数十万円で掘っ立て小屋を作り、安い別荘作ったんだそうです。

 建築を知っている人なら家を作る地域ではない事は、すぐわかる。値段の安さだけで、完売したそうです。しかし逃げ足も速く、数年後には購入した人の中古別荘販売広告が多数出ていて大きな問題となった。茨城県が販売業者に立ち入り検査に入ったが、元々、県が、この地区に建築制限をほとんどつけなかった。

 そこで、多くの不動産業者が、無価値の土地を安く切り売りして家を建てた。つまり、この問題に対しての責任者がいないのである。単に、不良品を売ったのと同じ事。ただ、海岸近くで風光明媚とうたった別荘と言うだけです。車を降りて歩いてみると数が強くて散歩なんてできる所ではない。

 ただ、防風林の中に別荘が建ってる感じ。この海が、外海で荒れて大きな船も座礁したり転覆したりしたそうです。いくら別荘と言っても防風林の中に家を建てるなんて、信じられない事だ、と石島さんが言った。それで石島さんは気が進まないんですねと、山下は言った。

 石島は、商売とは言え、こんな所に、悪い物件を建てて売るなんて、信じられないとつぶやいた。山下さんが、ところで、私たちが利用するシェアハウスは、どこですかと聞くと、海から少し遠くなるが車で7分の所だと言い、そこへ向かった。

 広い国道51号線の水戸方面に向かって左脇の木で囲まれた、大きな農家を中心に左右に、別棟が1棟ずつ、逆コの字型にならんだ、家が3軒。その家を改修して部屋が12部屋あり土間をフローリングにして集会場みたいにしてある、大型のシェアハウスで15~16人は住めると言った。

 近くの大きな病院は、車で45分の国立霞ヶ浦病院、1時間の東京医大病院か、1時間の成田赤十字病院、1時間半で筑波大学病院と遠く、近くに大きな病院はない。山下は、ずばり、難しいという見立てなんですねと、石島さんに聞いた。石島さんは、力なくこっくりと頷いた。しかし体験宿泊と言う事なってるので霞ヶ浦の景色を見たりしていって下さいと言った。

 山下が、笑いながら石島さん中間管理職の苦しみ良くわかりますよと優しく言うと、わかってくれますかと安堵のため息をついた。山下さんが、石島さんのために協力しますかと言うと加藤圭、北山さゆり、佐島米子たちも、そうしましょうと言い持参してきた昼食を一緒に食べた。

 その後、車一台を残して石島さん達三人は帰った。一番近いスーパー「カスミ」とコメリが2軒で車で10分。 夕方に賄いの清水八重子さんが来てくれた。今晩はカキフライにしたいのです、食べられない人はいますかと聞くと全員が大丈夫ですと言った。
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