第6話(10)

エピソード文字数 1,875文字

「にゅむっ、すっごーいっ。ゆーせー君っ、どーやるのー?」
「キミは、魔王。だから、魔王使いが命令をして命中させるんだよ」

 俺が命じれば、彼女は意識を半ば奪われ忠実に従う。よって仮にノーコンでも、わたくしが『当てろ』と言えば当てられるのだ!

「偉そうに命令をするのは心苦しいんだけど、これが一番安全なんだよ。レミア、許してください」
「んーんっ、全然いーよっ。ゆーせー君に使われるのは、うれしーもんっ」

 謝罪をすると、魔王ちゃんは笑顔で首を横に振ってくれた。
 そうっスか。快く即諾して頂けると、幾分気が楽になりますよ。

「レミア、どもです。じゃあ準備はいいかな?」
「にゅむーむっ! どーぞだよーっ」
「よっしゃぁ! じゃあいくぜ!!

 俺は容赦ないぶん投げに備え、レミアにしっかり掴まり声を上げる。
 さあさあさあっ。終わりに致しましょう!

「魔王、黒真レミアに命令するっ。その鎌を全力で――」
「あら?」

 この声の発生源は、シズナ。魔王使いの本領を発揮しようとしていたら、変態魔法使い魔王が首を左に傾けた。

「もぅ、アンタのせいで止まっちゃったじゃないか。どうしたのさ」
「…………あ、いえ、何でもないわ。邪魔をしてごめんなさい」

 彼女は、本気で詫びを入れた。
 この、反応……。なんか気になるな。

「シズナ、どした? なんなの?」
「ううん、大した事ではないわ。邪魔をしてごめんなさいね」

 上手くやれば『怒られ』に持っていけるのに、只々謝る。こりゃ『なんか』を通り越して、滅茶滅茶気になるぞ。

「このままだと、集中できない。包み隠さず教えてよ」
「…………いい、の? 本当に、いいの?」
「うん、いいよ。なんなんですか?」
「………………あのね。私、気付いちゃったのよ」

 彼女はゆっくりと、爆弾を指差す。
 んんん? アレが、なに?

「……………………従兄くん。あそこに、導火線があるでしょ?」
「あるね」

 本体と違って黒のコーティングが施されていない、典型的な色をした平凡な線がある。これが、どした?

「……あれを、ね」
「ほい」


「あれを鎌で斬ったら、簡単に爆発を止められるのよ」


 н*Ш〒ΓΦΘζρЁχφ。
 ホントだ。そこを斬ったら一発じゃん。

「…………『のうのう』、バカだ。導火線をコーティングしてないなんて、超バカだ」

 でも。

「でも。それを上回るヤツがいるよ」

 俺は、自分の胸元に手を当てる。

「…………色紙優星、お前はもっとバカだ。我が頭脳、ちっとも天才じゃない」

 こんな点に、気が付かないなんて。弩級の阿呆じゃないか。

「ぁぁぁ、なんつー無駄骨。あの時間はなんだったんだよ……」
「ゆ、ゆーせー君、落ち込まないでーっ。この世に、ムダなものはないらしーよっ」
「そうぜよ師匠っ。今は役に立たんでも、いつか役立つきねっ」
「私はきっと、従兄くんが解決策を見つけたから気付けたのよっ。余計な事言ってごめんなさいね?」

 英雄達が、とっても気を遣ってくれている。
 改めて、仲間って大切だなぁ、って感じました。人という字の意味が、よーく理解できました。

「……みんな、ありがとうね……。キミらのおかげで立ち直れそう」
「よ、よかったよー。じゃーじゃー、もーやっちゃおー――そだっ。最後はカッコよく、『導火線を斬れ』ってご命令(めーれー)してよーっ」
「そっちは、投げろより締まるにゃぁ! 師匠、クールに終わらせようやっ!」
「私も賛成よっ。クールな従兄くん、見てみたいわ」

 おもわず、ほろり。英雄達の優しさが、骨身に沁みる。

「ゆーせー君ゆーせー君、ささっ。やってやってー」
「…………皆様がそう仰るのなら、ええ。そっちをやらせて頂きますね」

 俺は、涙を拭き拭き。三人にとっても感謝しつつ、再び口を開く。

「黒真レミア、命令だ。その鎌で導火線を切断しろ!」
「……畏まりました、優星様。御命令を実行します」

 顔と声に感情がなくなったレミアが跳び上がり、空中で鎌を投擲する。


 ――よくよく考えてみたら、近づいたら力がなくなって導火線まで飛べなくなる。結局、ここから投げることになるんじゃん。

 ――跳ぶ少女に掻き付く男子。これって超ダサいじゃん。


 そんな思いを抱いている間に導火線は切断され、あっさりと世界の危機は去ったのでありました。






 ま、まあ、現実はこんなもんだよねっ。ビシッと終わるのは、創作物だけさ!
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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