立ちて蜃気楼 (7区 1km)
文字数 1,698文字
根岸中継所で柚希を送り出してきた朝姫・心枝・咲月と5区の蓮李は、ゴール地点の赤レンガ倉庫へ、電車で向かっていた。
通常、6区までのランナーは、走り終わった後まず走路員にタオルで抱えられ、各大学の仲間の元へ引き渡される。しかし、アンカー7区だけは、最初から仲間達がタオルを持ってゴールで迎え入れることになっている。
根岸中継所からゴール地点へは、根岸駅から京浜東北線で横浜駅に出た後、みなとみらい線に乗り換え日本大通り駅に行き、そこから徒歩で向かう。
日本大通り駅に着き、エスカレーターで地上に上がると、ちょうど7区のコースの目の前に出た。
選手はまだ通過していないようだったが、沿道にはランナー達の姿をひと目見ようと観客がごった返している。今日が選手以外にとっても特別な日なのだと改めて思い知らされた。
一台の運営車が通りかかった。7区の選手があと10分程で通過するとのこと。
既に交通規制が始まっていた。アイリス大のキャンパスにもほど近く、普段車がほとんど途絶えない様子を見ているアイリスの学生にとっては、先ほどの一台を除いてこの通りに全く車がいないというのが、不思議な光景に映った。
信号は止められているが、先頭の選手が通過する前であれば、警備員の先導のもと、渡ってもよいことになっている。
地下を通るみなとみらい線内はポータブルテレビの電波が届かなかったため、朝姫達は6区の状況が途中までしか分かっていなかった。象の鼻パークを通って、一刻も早く赤レンガ倉庫へと向かう。