第3話(3)

エピソード文字数 2,086文字

「ぐがー。すぴー。ぐがぁー」

 公園に着くや否や、フュルはベンチに倒れ込んで爆睡モードに突入。普段は1日8時間寝ると語っていたから、その分を全力でチャージしております。

「にゅむっ。フュルちゃん、気持ち良さそーに眠ってるねー」
「だね。レミアもゆっくり休んでよ」

 爆睡娘の横に座っている俺は、辺りを警戒してポンと彼女の背中を叩く。
 アナタも、かなり眠たそう。さっさと寝なさい。

「あたしは、少しゆーせー君とお話ししてからにするよー。こーやってお隣で座る機会はなかったから、お喋りしたくなっちゃった」

 レミアはそっと身を寄せ、へにゃっと笑う。
 左横にいる人が鼻提灯をプカプカさせていなかったら、さぞやいい画になっていたことだろう。実に残念だ。

「にゅむー。ゆーせー君、お話ししよーっ」
「うんいいよ。話したいテーマとかある?」
「あたし、ゆーせー君のコトをもっと知りたいなー。一杯おしえてーっ」
「俺のこと、ねぇ。特筆する点はないと思ってるんで、知りたい部分をリクエストしてくださいな」

 こういう要望は、初めて。対応に困るのである。

「んー、えとねえとね。お好きな食べ物と、嫌いな食べ物を知りたいなー」
「好き嫌い、か。まず、好きなのは高知名物ボウシパンだね」

 最近は頻繁にメディアで取り上げられるから、皆様もご存知でしょう。帽子の形をしたパン、それが帽子パン。ふんわりとした本体と、独特の食感がある周り(カステラ生地)の組み合わせは最高。わたくしは特に、周りこと『つば』の部分が大好物でございます。

「それで、苦手なのは生魚だね」

 生はどれも、一口も食べれない。修学旅行で刺身の盛り合わせが出た時は、目の前が真っ暗になりましたよ。

「にゅむぅっ!? だったらあの有名(ゆーめー)な、カツオのタタキさんも嫌いなのっ!?
「そうなるね。中は生なんで、あれは食えないよ」
「ふぇー。『遠見』で見た高知(こーち)県の特集(とくしゅー)番組さんで、『高知県人は皆タタキが大好物。魚が苦手な人でもこれは食べられる』って言ってたから、衝撃(しょーげき)だよー」

 ドラマの次は、地域紹介番組て。コイツら、すんごい魔法で妙なモンばっか見てんな。

「レミア、そりゃ誇張だよ。タタキが苦手な友達は、数人いました」
「そーなの!? そしたら、みんな大(おー)酒飲みってゆーのも……」
「そっちは、やや誇張だね。よく飲む人が多くて消費量はかなり多いけど、苦手な方はいるよ」

 現に生粋の高知県人である両親は、お酒を一滴も飲めない。人間は千差万別なんだから、それは至極当然だよね。

「そー、なんだぁ。ならならもしかして、坂本龍馬さんがいたというのも誇張(こちょー)なのかな……?」
「それどんな誇張だよ! 実際にいたからね!?

 ちゃーんと、写真や直筆の書なんかがある。あの御方は間違いなく、実在しておりましたよ。

「そ、そっかぁ。お話を聞ーてたら、どこまでほんとーがわかんなくなっちゃったよ」
「『みんな』がついてる食べ物やものは、好きな人が多い。こんな解釈をしといてくださいな」

 魔王様、混乱させてスミマセン。これは所謂、言葉のアヤなんですよ。

『おい優星、人が多いトコでその発言はするなよ? 営業妨害だぞって、観光協会の人間に恨まれるからな』

 謎の声よ。アンタ、ヘンな部分を怖がるのな。

『だってそうだろ。俺ら――ああいや。もしも俺が関係者だったら、「余計なことを言うんじゃねー」って思うからな』

 確かに、その通りだ。確かにこれは、評判を下げかねない発言だ。
 でもな。俺は、例外がいると訴えたいんだよ……………………!!

『ん?』

 転校先でカツオのタタキを食えないと言ったら『ニセ高知県人だー』と小馬鹿にされ、父さんは職場の飲み会で『下戸だなんて、キミは本当に高知県民なのかい? 経歴詐称してない?』って言われたんだ!
 そりゃあ俺は、生まれ育った高知が大好きだよ? めっちゃ愛してて、高知のニュースが流れるとついついチェックしちゃう。先週、高知市内で毎週日曜に開かれてる『日曜市(にちよういち)』(人の温かさを感じられる良い市で、色んなものがありますよ!)の情報がTVで流れた時は喜んだりもしました! 伝統ある良い文化だからずっと残ってて欲しいけど高齢化とかの問題があって色々大変と聞いて、真剣に悩みました! それに父さんの親友が観光関係の仕事をしてて、そういう意味でも観光客が減ったら困る! けどこういうことを口にしていかないと、例外は白い目で見られ続けるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!

『そ、そうなのか……』

 もう、あんな思いをするのは嫌……。いずれ俺はカツオ、父さんはお酒がトラウマになってしまう……。
 わかって、くれ。わかってくれよぉ、謎の声……!

『あ、あぁ、わかった。わかったからテンションを戻して、レミアとの会話を再開させようぜ』

 ………………………そうだな。うん。そうするよ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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