異界迷宮

文字数 2,403文字

「あれ、お空が小さくなってるよ」

 月読波奈が崩落した地面の穴を見上げている。
 確かにだんだん小さくなってるように見えた。

(晴明さま、何が起こってるんでしょうか?)

(まずいな、次元隔離じゃ)

(次元隔離?)

(奴らの常套手段じゃよ。この地下迷宮に取り残された約100名と地上のオタク軍団を分断して孤立させるのが狙いじゃ)

(晴明さま、兵法の基本でもありますね)

 先程のメガネオタクが会話に加わってきた。

(メガネ君は何オタクなの?)

 月読波奈が会話に参加してくる。

(諸葛孔明、三国志ゲーム、戦略オタクとでもしておこうか)

(めんどくさいんで、メガネ君でいい?)

(はい、大丈夫ですよ。メガネというあだ名には慣れてますよ)

(メガネ君はあれなの? 天才軍師とかなの?)

(いいえ、全く平凡なオタクですよ)

(だけど、ここで話に入ってくるということは重要キャラとか、そういうポジションな訳でしょ?)

(確かにラノベとか、小説のストーリー的にはそうなりますね)

(まあ、いいけど、何がいいたいわけ?)

(いや、それはこれからいいますよ)

(つまり、僕がごく平凡なオタクであるというのが逆に強みになるんです)

(文字数稼ぐために、もったいぶった言い方でここから話を徐々に膨らまそうとしてない?)

(いやいや、僕がそんな読者にすぐ見抜かれるような小細工やるわけないじゃないですか。ははは)

(では、単刀直入に言いますと、将棋に例えますが、かなめちんと神沢さん、波奈ちゃんは王と飛車と角で、この戦いは僕たちオタクたちの力で入玉(にゅうぎょく)、つまり、清明さまが予言した最終決戦の場まで、できれば3月10日ぐらいにまでに無事送り届けることが、勝利条件になるわけです)

(将棋に例える必要なくない?)

(―――参った、パスです。それでですね。僕たちオタクは僕も含め、最終的にはおそらく生き残ることができないと思うんです。ですが、戦争が如何に効率的に兵士を殺すか?というゲームだとしたら、オタクの妄想力を最大限に生かす、なるべく長く持たせる必要がでてきます。そこで僕の登場という訳です)

(833文字まで稼げたな。それはともかく、メガネ殿、なかなか見所があるの)

 安倍晴明も少し感心していた。

(それでおぬしの策を聴かせてもらえないかの)

(それ、僕も聴きたいな)

 安東要は存在感をアピールした。

(私も聴きたいな)

 いるのかいないのか分からなくなっていた神沢優もちょっとアピールしてきた。

(では、後楽組は除いてですね、一般オタクは人形装甲をもつリアルロボットに搭乗させて生存率を高めます)

(はい、先生! 後楽組って何ですか?)

 波奈が元気よく手を挙げて質問である。

(後楽組っていうのは『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクと『魔法少女魔女っ()まゆちゃん』オタクで今、最前線でメイドロイドを倒してる強者(つわもの)たちです。彼らが頑張ってくれてるお陰で後ろの部隊が楽になるという意味です)

(はい、先生、『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクって何ですか?)

(『パーフェクトレッドソルジャーキリオ』オタクっていうのは、一億分の一の確率で出現する特殊なDNAをもつ兵士で二刀流の使い手でチートな能力をもつゲームプレーヤーの戦闘スタイルを模倣したオタクたちです。今、映像で送られてきていますので、それを見てもらえればわかります)

 単騎突撃してきたメイドロイドは式鬼≪銀鋼(シロガネ) (ゼロ)≫を駆るおじいちゃん軍団によって解体されていた。

 いつのまにか最前線では100体ものメイドロイドが湧きだしてきていたが、黒マントに赤い肩当てをつけた男たち10人ほどがロングソードの二刀流で撃退していた。

 というようなドローンオタクのローアングル映像が安東要のスマホに送られてきていた。
 波奈と神沢優も覗いていた。

((((なるほど))))

 晴明も含めて四人同時にうなづいている。

(『魔法少女魔女っ()まゆちゃん』オタクは、その後ろでパンチラしながら、色とりどりの衣装(コスプレ)で踊りながら後方支援魔法を使ってる、そこそこ可愛い女の子のオタクたちですね。映像的にはパンツしか映ってないですが、ドローンオタクの習性ですから大目に見てやってください。最近、ヘリコプターなのにドローンヘリコプターと呼ばれている、すっかり肩身が狭くなってしまったヘリコプターオタクの映像に切り替えます)

((((なるほど))))

(彼ら、彼女たちは今のプレイスタイルの方が力を発揮できますし、常に最前線で戦ってくれますので、自由にやらせておきます。たまに、休ませるためにリアルロボットオタクの部隊と入れ替えます)

(メガネ君、凄いじゃん)

 波奈が絶賛する。

(平凡でも使い道あるわね)

 神沢優も彼女的には絶賛に近い。

(メガネ君、やるね)

 要もスマホで「いいねマーク」をSNSに送信した。

(わかった、ここの戦略はメガネ君に任せよう)  

 晴明も納得の説得力であった。
 非常に平凡だが。

 ということで、新キャラメガネ君の戦略も加わり、何とかなりそうな雲行きの一行であった。
 時に3月2日の夕刻頃の話である。
 東日本大震災が起こるという晴明の予言の日まで、残りあと8日ぐらいであった。
 アバウトだが。





(あとがき)


 作者体力不足で2日爆睡しましたが、状況説明だけで終わってしまいました。

 何とか完結までというか、タイムリミットがあるので、必ず終わるお話ですが、ペース的には、意外と10万字ぐらいの作品になりそうな予感がしてきました。

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登場人物紹介

 安東要(あんどうかなめ)


 東日本大震災後、名古屋に新政府を移し復興に務める若き民政党の総理。
 陰陽師、安倍清明の転生術で35歳→24歳に転生し過去に戻り、東日本大震災を防ごうと悪戦苦闘する。

 月読波奈(つくよみはな)

 通称≪ブスメガネ≫。今時、珍しい牛乳瓶の底のような丸いメガネをかけている。
 安東要が通う名門大学のラノベサークルの後輩で大学二年生の20歳である。

 安部清明(あべのせいめい)

 名護屋の清明神社で安東要の前に現れ、東日本大震災を防ぐという願いを叶えると約束する。

 神沢優(かみさわゆう)


 公安警察、秘密結社<天鴉(アマガラス)>のリーダー。

 メガネ君


 巨大小説投稿サイトのバイトリーダーメガネ君。
 秋葉原で安東要たちの戦いに巻き込まれ、行動を共にする。
 ネットゲーム<刀剣ロボットバトルパラダイス>の人型機動兵器<ボトムストライカー>の操縦に長けていたため、オタクたちと大活躍することになる。

 織田信長(おだのぶなが)

 某戦国武将だが、秘密結社<天鴉(アマガラス)>の剣の民でもある。

明智光秀(あけちみつひで)

本能寺変後に死ぬはずが命拾いし、僧となり<天海>と名を改める。

ザクロ

メガネ隊の副隊長で<刀剣ロボットバトルパラダイス>の廃課金プレーヤー。
メガネ君と共に人型機動兵器<ボトムストライカー>を駆って活躍する。

ハネケ

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
金髪碧眼のオランダ人ハーフ。 

夜桜(よざくら)

メガネ隊の新人。<刀剣ロボットバトルパラダイス>のプレーヤー。
黒髪に黒いくさび帷子を愛用。 

カトウ

神沢隊の副隊長で<刀剣ロボットバトルパラダイス>の微課金プレーヤー。
たまに出てくるがさほど活躍しない。

雛御前(ひなごぜん)

安部清明の式神衆筆頭、ミニスカ十二単衣の美少女。

猫鬼(びょうき)

雛御前の使い魔で猫娘姿のコスプレをしている。

犬神(いぬがみ)


雛御前の使い魔で狼男のコスプレをしている。

魔女ベアトリス

見かけとは違う、この世界をも滅ぼすほどの強大な魔力を持つ。
媚術を使って人を虜にし操る。

リカウド・バウワー

魔女ベアトリスの親衛隊である<薔薇十字騎士団>の団長である。
めんどくさい性格でどこかユーモラスな所があるが侮れない力をもつ。

マリア・アドレラ

魔女ベアトリスの親衛隊である<薔薇十字騎士団>の副団長である。
秘剣<十字剣>の使い手。

魔導師アリス・テスラ

時空間魔法を使うチート魔導師。

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