第43話 ソーマ・ピクトリアン国王がくれた薬草

文字数 988文字

「そうだな。これも(えにし)だ。そなたもここから嫁に出したことにしよう。条件があるが……」
「あの……」
 どうしよう、考えがまとまらない。このままでは、まずい事は分かっているのに。
 そばで控えていた文官の方々が何やら、薬草のようなものを持ってきている。

「そうそう。これを渡そうと思っていたのだ」
 ソーマ・ピクトリアン国王がそう言うと、文官の方々はテーブルの上にその大量の薬草を置いた。
「今回……いや前回もだが、クリストフが使っているのは、『かおり草』という、外の人間には少し依存性の強い幻覚をともなう薬草だ」
「薬草?」
 毒草では無くて?

「私達にはそういう効果は無いし。この国の隠れ蓑の一種で……まぁ、持ち出された時点で他の薬草に切り替えたが。後は、使うと痛みや精神的苦痛を和らげる効果があるので、医療行為として使うのは、外の世界でも合法らしいからな」
 ああ。そういう意味。

「今、持ってこさせたのが解毒になる薬草だ。中毒症状が緩和される。王宮や診療所、かおり草が使用された施設で使うがよい」
「ありがとうございます」
「それと、これはクリストフに使ってくれ。使い方は一緒に付けてあるメモに書いてある。これをそのままアルンティルの国王に渡してくれればいい」
「良いのですか? 外部の人間に……」
「そなたの夫であろう?」
 ソーマ・ピクトリアン国王陛下は、フレデリックを私の夫として認め、信用してくれている。
 良かった。

「クリストフの件が無事に片付いたら、そなたをピクトリアンの王室から輿入れしたことにして、その生涯をピクトリアンの保護下に置こう」
 それはピクトリアンの国民と同じ扱い。いえ、それ以上の?

 ダメだわ。頭が働いてくれない。
 このままでは、ダメだと分かっているのに……。
「それでは、セシリア。そなたと私が会うのはこれで最後になるだろう。私達は、外の世界との交流を好まぬからな」
 意識がふわふわしているわ。
「それでは、そなたの夫、アルンティル国王によろしくな」
 夫だと、認めてくれたんだ……。
「はい。ソーマ・ピクトリアン国王陛下もお元気で……」
 私が最後のアイサルを終える前に、手を目の前でかざされた。

 ソーマ・ピクトリアン国王から、こっそり別の薬草を渡され、私の耳元で何か伝えられたのを最後に意識が途切れた。
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