【episode4–別れの涙】
文字数 391文字
2年間の専門課程は、慣れない電車通学に毎日ヘトヘトだった。
加えて実習や課題の提出に翻弄され、自宅に帰っても弟と話す時間はほとんど取れなくなっていた。
高校までは私を追いかけて同じ学校に通った弟だったが、入学資格に性別の項目がある歯科衛生士科には、さすがに入学できない。
私が国家資格を取得し、社会人として電車通勤を始めた頃、弟は県外の大学に進学し地元を離れて行った。
通勤電車で揺られていると、我が家にいない弟を思い涙が溢れてくる。
座席に座りながら大粒の涙をこぼす私の様子に、乗客の皆さんを度々ざわつかせてしまった。
そんな日々が続いたある日のこと、弟が突然実家に帰ってくることになった。
学科を変え進路変更をするため、自宅から通学することになったのだ。
私は、大好きな弟が戻ってくることが心から嬉しかった。
弟は、一度離れても必ずまた私の元に帰ってくる。その頃の私は、それを信じて疑わなかった。