プロローグ
文字数 489文字
――身体が動かない。金縛り? ううん、目が覚めきっていないだけ。
まだ目覚ましは鳴っていない。でも下になっている左肩が痛い。なんとか寝がえりを、と力が入らない体を動かそうとして必死に格闘しているうちに、私は窓際に人がいるのに気づき、体中総毛立った。
私は
――やっぱりこれって金縛り? いや……そうだ、これは夢だ、夢に違いない。今週ずっと仕事が忙しかったから変な夢を見ているのだ。
そう考えている間も、女性はもの言いたげな眼でじいっと私を見つめている。
目覚ましが鳴った。私は覚醒し、すぐに窓の方を見た。
黒い丸々とした背中が見えた。預かった黒猫のクロだ。
視線を移し、室内全体を見渡し、確認する。寝ている間に家具や部屋の床や壁を傷つけられたらと心配していたのだが、大丈夫だったようだ。よかった。賃貸アパートだから、家具ならまだしも、部屋の壁やドアに爪のとぎ跡などつけられたら困るのだ。
これなら今日、出社しても大丈夫だろう。
(次話に続く)
まだ目覚ましは鳴っていない。でも下になっている左肩が痛い。なんとか寝がえりを、と力が入らない体を動かそうとして必死に格闘しているうちに、私は窓際に人がいるのに気づき、体中総毛立った。
私は
目を閉じているのにも拘わらず
、それを感じる
ことができたのだから! そして、そこにいるのが長い黒髪の女性だということまでわかったのだから。――やっぱりこれって金縛り? いや……そうだ、これは夢だ、夢に違いない。今週ずっと仕事が忙しかったから変な夢を見ているのだ。
そう考えている間も、女性はもの言いたげな眼でじいっと私を見つめている。
目覚ましが鳴った。私は覚醒し、すぐに窓の方を見た。
黒い丸々とした背中が見えた。預かった黒猫のクロだ。
視線を移し、室内全体を見渡し、確認する。寝ている間に家具や部屋の床や壁を傷つけられたらと心配していたのだが、大丈夫だったようだ。よかった。賃貸アパートだから、家具ならまだしも、部屋の壁やドアに爪のとぎ跡などつけられたら困るのだ。
これなら今日、出社しても大丈夫だろう。
(次話に続く)