紙本について

文字数 1,296文字

 ツイッターで商業作家さんの初版印刷部数についての呟きを見掛けまして……ちょっと考えさせられてしまいましたね。
 私自身は数年前に紙の本を買うのをやめ、全て電子書籍で買うようにしています。
 これって紙本好きの方からしたら理解できないことかも知れません。でも、本好きって本屋に行くとテンション上がりますよね。装丁とか粗筋文章を読んだだけでアドレナリンが分泌され大人買いしてしまうことも……結果、読む時間を取れるか分からない本が家の中に無限増殖したことありませんか?
 自慢じゃありませんが、私は片付けが苦手だし下手だし嫌いです。無限増殖する紙ほど片付けに難渋するものはありません。それは本に限らず、仕事の資料や勉強に使ったものなども含め……気が付いたら、いつか使うかも知れないと取っておいた紙類が家の片隅に堆く積もっていく。
 あるとき一念発起して、家の中の紙をこれ以上増やさないと決めました。読み返さなかった資料は破棄し、本も古本屋に売り、お気に入りは電書で購入し直しました。(電書化されていない特にお気に入りの文庫本は残しました。)
 電書の良いところは場所を取らないだけでなく、どこへでも持ち歩ける点です。何が読みたくなるか予想できないので何冊も本を持ち歩く、旅行に本を十冊携行するなんてことをせずに済むわけです。
 てことで、電書ライフに満足して過ごしていたわけですが……。
 最初に書いた商業作家さんのツイの内容は「初版部数が減少して出版業界が衰退する」というのとは少し違って「日本の優れた印刷技術が失われていく」というものでした。
 なんだか、頭を殴られたような衝撃がありましたね。
 小説を書き始めて、WEBでの公開を初めて、今はオンデマンド出版と電子書籍化の準備を進めています。オンデマンド出版は一冊当たりの印刷代が割高なのと仲介する出版社への支払いもあるので、結構いいお値段になってしまいそうです。なので、切りの良い数字にするための端数切り上げはしますが、私自身の利益は殆どない価格設定になると思います。それでも「高いな」と感じます。でも正直、買って貰うことを期待して出すわけではありません。電書化だけでなく、紙本を同時に出すのは偏に自分の作品が「本」の形になったところを見たいから、それを手元に置きたいから、それだけです。
 読むのも書くのも電子化している私ですが、やはり究極的には紙本が好きなんだと痛感しているところです。
 書籍化するに当たり、本のサイズやレイアウトなどを確認するために本屋を訪れたりしました。久しぶりの本屋、ヤバかったです・笑。なにここ遊園地? ここで暮らしたいわって感じで。
 なんか複雑だなあ。電子化を選んだ自分は紙本の衰退に手を貸してるんだろうなという罪悪感。出版社の衰退という論点であれば、電子化を進めて市場を開拓すればいいだけじゃん、と答えれば良いところですが、印刷技術の衰退と言われてしまうと……。しかも、自分の作品は自分のためだけに紙本化しようとしてる訳で、紙本を愛しているんですよねー。言動不一致だよなあ。
 ちょっとモヤモヤする週末でした。

二〇二一年九月四日
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