第03章(4)
文字数 1,937文字
「ウィル元帥、それは誠の話ですか」
「ええ、セシル騎士団長。実はですね、ツツジの里とノールオリゾン国が繋がっているのですよ」
「それは由々しきことになりましたね」
密談とも言える密談。
リーフィ村で身を寄せていたセシルの家に、ウィル元帥がやって来たのだ。
「あ、こんにちは。これどうぞ」
そう言い、菓子と茶を持ってきたのはセシルと結婚したばかりのアリスだった。
「貴方は確か、シュヴァルツ王国の歌姫様でしたね。また貴方の歌、聞きたいですね」
「今はもう、隠居の身です。それに今のご時世です。エレン姫様の事を思うと、歌うなんて贅沢ですよ」
「私は歌って欲しいですね。今すぐにでも、エレン姫様の心を歌で癒して欲しいですよ」
「勿体なきお言葉、身に染みます」
そう言った後、アリスはその場から立ち去った。
「で、ウィル元帥、まさか……」
「ええ。ツツジを攻める準備をして欲しいのですよ。詳しいことはこの書類に書いてあります」
「分かりました。準備致しましょう」
ウィルを見送った後、セシルは何か心に支えるものがあった。
もう、戦場には戻らないつもりだったが、やはり血が騒ぐのは騎士としての誇り、シュヴァルツ王国の忠義があるからだろうか。
とにかく、兵を集めなくては。セシルはすぐに行動に移したのだった。
しかし、この内密の会談の内容が、すぐに、ノールオリゾン国に知られる事になった。
アリスはセシルの帰りを待っていた時だった。ドアを叩く音が聞こえる。来客だろうか。
アリスはドアを開け、訪問客を確かめた。
「あ、ユウ様!」
アリスの家を尋ねたのは、天使教の神子――ユウだった。
ユウだと分かると、アリスは何も疑いなく部屋に入れたのだった。
お茶を入れてくると一言残すと、アリスは台所へ向かった。
それはユウの好機だった。ユウは、すぐさま、セシルの書斎へ向かった。
何か、シュヴァルツ王国が動きを見せているかもしれない。それを探りに、ユウはここに来たのだ。
しかし、セシルの書庫は厳重に鍵がかかっていた。
「ユウ様、何をされていらっしゃるんですか?」
アリスは入れてきたお茶を床に零しながらも、ユウの動きを制止した。
「流石に無理はありましたか。これも天使教の神子の勤めですよ」
「どういう、勤めですか。主人の机を漁るなんて。こんなの……、セラビム様が許さないはずです」
そのセラビムが自分に命令し、この家に向かわせた事など、アリスは知らないだろう。
「アリスさん……、貴方は天使教の信者ですよね。俺の信者、ですよね」
「ユウ様。なにが、言いたいの、ですか……って……んんっ……」
アリスの唇をユウが塞いだのだ。
アリスはすぐに払いのけようとしたのだが、ユウという男の力には敵わなかった。
「ユウ様、止めて下さい。止めて下さい。これが、天使教の信仰、なのですか……?」
「ならば、アリスさん。もっと分からせてあげますよ。」
「いや、嫌だ……セシルさん……!」
「貴方は天使教の信者。神子の言う事は絶対ですよ。止めて欲しいのであれば、書庫の鍵のありかを教えて下さいね」
ユウはそう言い、アリスを押し倒す。そして、ユウとアリスはそのまま行為に及んだのだった。
身も心もずたずたにされたアリスは思わず、鍵のありかを吐いてしまったのだった。
それは、セシルがいなかったのが不幸中の幸い、幸い中の不幸だったのだろう。
元シュヴァルツ王国郊外。
ジュリアは今日も情報を集めていた。シュヴァルツ王国が復興する少しでも手立てをしたかった。
情報屋の立場上、それは微力たが、少しでも力になりたい――シュヴァルツ王国の国民として
ジュリアがそう己を奮い立たせた時だった。
「間者、かしら。もしや、貴方は、香月、真理奈?」
「ふふ、流石、情報屋。貴方が色々動いている事は、調査済みですよ」
ツツジの情報網を舐めていた。
ジュリアは唇を噛み、悔しさを露わにする。
「カイ様、この者をツツジの里へ連行します」
「はいよ、真理奈姫」
そう言い、カイはジュリアの手首を縛る。ジュリアは自由が利かなくなってしまった。
「何が目的かしら。私は情報屋のはしぐれよ?」
「とぼけないで下さい。ノールオリゾンに不利になる情報をばらまいているのは、貴方というのは知っていますから」
真理奈はそう言った後、ジュリアを馬車に乗せた。
「真理奈姫、でも、占い師・エルマの予言は当たるんだろ?」
「ええ。当たるらしいのですよ。その事を、彼女はツツジの里で吐いて貰う予定ですよ」
例え、痛め付けても――真理奈の目はこの先の闇を見据えていた。
「ええ、セシル騎士団長。実はですね、ツツジの里とノールオリゾン国が繋がっているのですよ」
「それは由々しきことになりましたね」
密談とも言える密談。
リーフィ村で身を寄せていたセシルの家に、ウィル元帥がやって来たのだ。
「あ、こんにちは。これどうぞ」
そう言い、菓子と茶を持ってきたのはセシルと結婚したばかりのアリスだった。
「貴方は確か、シュヴァルツ王国の歌姫様でしたね。また貴方の歌、聞きたいですね」
「今はもう、隠居の身です。それに今のご時世です。エレン姫様の事を思うと、歌うなんて贅沢ですよ」
「私は歌って欲しいですね。今すぐにでも、エレン姫様の心を歌で癒して欲しいですよ」
「勿体なきお言葉、身に染みます」
そう言った後、アリスはその場から立ち去った。
「で、ウィル元帥、まさか……」
「ええ。ツツジを攻める準備をして欲しいのですよ。詳しいことはこの書類に書いてあります」
「分かりました。準備致しましょう」
ウィルを見送った後、セシルは何か心に支えるものがあった。
もう、戦場には戻らないつもりだったが、やはり血が騒ぐのは騎士としての誇り、シュヴァルツ王国の忠義があるからだろうか。
とにかく、兵を集めなくては。セシルはすぐに行動に移したのだった。
しかし、この内密の会談の内容が、すぐに、ノールオリゾン国に知られる事になった。
アリスはセシルの帰りを待っていた時だった。ドアを叩く音が聞こえる。来客だろうか。
アリスはドアを開け、訪問客を確かめた。
「あ、ユウ様!」
アリスの家を尋ねたのは、天使教の神子――ユウだった。
ユウだと分かると、アリスは何も疑いなく部屋に入れたのだった。
お茶を入れてくると一言残すと、アリスは台所へ向かった。
それはユウの好機だった。ユウは、すぐさま、セシルの書斎へ向かった。
何か、シュヴァルツ王国が動きを見せているかもしれない。それを探りに、ユウはここに来たのだ。
しかし、セシルの書庫は厳重に鍵がかかっていた。
「ユウ様、何をされていらっしゃるんですか?」
アリスは入れてきたお茶を床に零しながらも、ユウの動きを制止した。
「流石に無理はありましたか。これも天使教の神子の勤めですよ」
「どういう、勤めですか。主人の机を漁るなんて。こんなの……、セラビム様が許さないはずです」
そのセラビムが自分に命令し、この家に向かわせた事など、アリスは知らないだろう。
「アリスさん……、貴方は天使教の信者ですよね。俺の信者、ですよね」
「ユウ様。なにが、言いたいの、ですか……って……んんっ……」
アリスの唇をユウが塞いだのだ。
アリスはすぐに払いのけようとしたのだが、ユウという男の力には敵わなかった。
「ユウ様、止めて下さい。止めて下さい。これが、天使教の信仰、なのですか……?」
「ならば、アリスさん。もっと分からせてあげますよ。」
「いや、嫌だ……セシルさん……!」
「貴方は天使教の信者。神子の言う事は絶対ですよ。止めて欲しいのであれば、書庫の鍵のありかを教えて下さいね」
ユウはそう言い、アリスを押し倒す。そして、ユウとアリスはそのまま行為に及んだのだった。
身も心もずたずたにされたアリスは思わず、鍵のありかを吐いてしまったのだった。
それは、セシルがいなかったのが不幸中の幸い、幸い中の不幸だったのだろう。
元シュヴァルツ王国郊外。
ジュリアは今日も情報を集めていた。シュヴァルツ王国が復興する少しでも手立てをしたかった。
情報屋の立場上、それは微力たが、少しでも力になりたい――シュヴァルツ王国の国民として
ジュリアがそう己を奮い立たせた時だった。
「間者、かしら。もしや、貴方は、香月、真理奈?」
「ふふ、流石、情報屋。貴方が色々動いている事は、調査済みですよ」
ツツジの情報網を舐めていた。
ジュリアは唇を噛み、悔しさを露わにする。
「カイ様、この者をツツジの里へ連行します」
「はいよ、真理奈姫」
そう言い、カイはジュリアの手首を縛る。ジュリアは自由が利かなくなってしまった。
「何が目的かしら。私は情報屋のはしぐれよ?」
「とぼけないで下さい。ノールオリゾンに不利になる情報をばらまいているのは、貴方というのは知っていますから」
真理奈はそう言った後、ジュリアを馬車に乗せた。
「真理奈姫、でも、占い師・エルマの予言は当たるんだろ?」
「ええ。当たるらしいのですよ。その事を、彼女はツツジの里で吐いて貰う予定ですよ」
例え、痛め付けても――真理奈の目はこの先の闇を見据えていた。